<近日開催予定のイベント>
9月10日(日):【第三回 一般向け東洋医学養生講座】
下野です。
今回も「諸病の主薬」の記事になります。
【原文】
悪瘡、須用貝母、為主。
疔瘡、須用白礬、為主。
便毒、須用川山甲、木別子、為主。
魚口瘡、須用牛膝、川山甲、為主。
疳瘡、須用五倍子、為主。
<第三十二に続く>
【解説】
悪瘡(浸出物が止まらず、治りの悪いもの)には貝母を使用すべし。
疔瘡には白礬を使用すべし。
便毒(鼠径リンパ節の炎症による腫脹)には川山甲、木別子を使用すべし。
魚口瘡(便毒が潰れ、くちがあいたもの。)には牛膝、川山甲を使用すべし。
疳瘡(陰部のただれ)には五倍子を使用すべし。
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◉貝母
ユリ科のアミガサユリ属植物各種の鱗茎。
性味:
川貝母→苦・甘・微寒
浙貝母→苦・寒
帰経:心・肺
効能:
①清化熱痰
・外感風邪、痰熱壅肺の咳嗽や咽痛、黄色の粘質痰に。
方剤例 → 貝母丸・二母丸。
②潤肺止咳
・肺熱咳嗽や陰虚の慢性咳嗽に。
方剤例 → 貝母散。
③泄熱散結
・頚部のリンパ節腫や皮下結節に。
方剤例 → 消瘰丸。
・皮膚化膿症の初起に。
方剤例 → 消癰散毒湯。
・痰熱互結や気鬱化熱の胸痛や胸苦しいなどに。
◉白礬
天然の明礬石を精製した結晶。
性味:酸・渋・寒
帰経:肺・脾・大腸・肝・胆
効能:
①解毒医瘡・収湿止痒
・皮膚化膿症に外用。
方剤例 → 二味抜毒散。
・膿性の耳漏に。
方剤例 → 治膿耳方。
・鵞口瘡に外用。
・湿疹や疥癬に外用。
②渋腸止瀉・収斂止血
・慢性の下痢や血便、性器出血に。
方剤例 → 玉関丸。
③袪風痰
・中風痰厥の意識障害や喘鳴、痰などに。
方剤例 → 稀涎千緡湯・稀涎散。
・癲癇に。
方剤例 → 白金丸。
④清熱退黄
・湿熱の黄疸に。
方剤例 → 硝石礬石散。
◉穿(川)山甲
センザンコウ科ミミセンザンコウの鱗甲。
性味:鹹・微寒
帰経:肝・胃
効能:
①通経下乳
・瘀血の無月経や腹腔内腫瘤に。
方剤例 → 穿甲散。
・産後乳脈不通による乳汁鬱滞、分泌不全に。
方剤例 → 涌泉散。
②消腫排膿
・皮膚化膿症の初期に。
方剤例 → 仙方活命飲。
・化膿はしたが、排膿しない際に。
方剤例 → 透膿散。
・頚部のリンパ節腫や皮下結節に。
③通絡散風
・風湿痺の関節痛や強ばりに。
方剤例 → 透経解攣湯。
・風湿痺の関節変形に。
◉木鼈子
ニガウリ属植物の成熟した種子。
性味:苦・微甘・寒・有毒
帰経:肝・脾
効能:
①消腫療瘡
・頚部のリンパ腫に。
・皮膚化膿症の初期や化膿して潰れないときに。
方剤例 → 木鼈子膏。
◉牛膝
ヒユ科イノコズチ属ヒナタイノコズチ、又はトウイノコズチの根。
性味:苦・酸・平
帰経:肝・腎
効能:
①活血祛瘀
・血瘀の月経痛や月経周期の延長、無月経、難産など。
方剤例 → 牛膝散・脱花煎。
・打撲外傷の腫れや痛みに。
②舒筋利痺
・湿熱蘊結の下肢の痛みや痺れ、熱感、腫れに。
方剤例 → 三妙丸・四妙丸・疎経活血湯。
・寒湿痺の関節痛や冷えに。
方剤例 → 大防風湯・三痺湯・独活寄生湯。
③補肝腎・強筋骨
・肝腎不足の膝腰の怠さや痛みに。
方剤例 → 虎潜丸。
④利水通淋
・湿熱下注の排尿痛や排尿困難、血尿等に。
方剤例 → 牛膝湯。
⑤引血下行
・血熱の鼻血や吐血、喀血に。
・陰虚火旺の歯茎の痛みや腫れ、口内炎等に。
方剤例 → 玉女煎。
・肝陽上亢の頭痛や眩暈等に。
方剤例 → 鎮肝熄風湯。
◉五倍子
ウルシ科ヌルデの葉に、
アブラムシなどが寄生し形成される
虫癭を熱湯に浸して乾燥させたもの。
性味:酸・鹹・寒
帰経:肺・大腸・腎
効能:
①斂肺降火
・肺陰虚証の慢性咳嗽に。
②渋腸止瀉
・慢性下痢や脱肛に。
方剤例 → 玉関丸。
③渋精縮尿
・遺精や遺尿に。
方剤例 → 玉鎖丹。
④斂汗生津
・盗汗や消渇に。
⑤固渋止血
・血尿や血便、性器出血に。
方剤例 → 玉関丸。
・帯下にも。
⑥その他
・湿疹や化膿症、脱肛、子宮脱に。
<参考文献>
『万病回春解説』 創元社
『万病回春.巻之1-8』 早稲田大学 古典籍総合データベース
『中医臨床のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
『鍼灸医学事典』 医道の日本社
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下野