<近日開催予定のイベント>
8月20日(日):第五回、鍼灸学生の為の勉強会〜【医古文・漢文の読み方No.2】〜
この傷寒論のシリーズは、
当院の修行生によって毎週、水曜日の早朝に開かれる、
自主的な勉強会におけるメモ・備忘録となります。
古典の専門家によるものではなく、
一から学ぶ者の新鮮な目線を共有出来れば幸いに思います。
8/2(水)
太陽病中篇より
太陽病、中風、以火劫発汗、邪風被火熱、血気流溢、失其常度、両陽相薫灼、其身発黄。
陽盛則欲衄、陰虚則小便難。
陰陽倶虚竭、身体則枯燥、但頭汗出、剤頸而還、腹満、微喘、口乾、咽爛、或不大便、久則譫語。
甚者至噦、手足躁擾、捻衣摸牀、小便利者、其人可治。
前条に続いて、火を用いて太陽病を治療した結果、変証に陥った場合についてである。
表邪と火熱とが合わさることで陽が盛んになり、
「発黄」するとある。この「黄」は黄疸のことではないかとする解説が多くあるが、
もっと広い意味に捉えて良いと思われる。
すなわち、舌の黄苔や、目の黄色、さらには小便や痰といった排泄物にも応用できそうである。
陽が盛んになり変証が生じることを述べているが、
変証については次の3パターンであると条文では述べられている。
①「陽盛則欲衄」
②「陰虚則小便難」
③「陰陽倶虚竭、身体則枯燥、但頭汗出、剤頸而還、腹満、微喘、口乾、咽爛、或不大便、久則譫語」
これら三つは、病の進行する順番として捉えても良さそうである。
陽が盛んとなり、さらに陽邪が陰分を損傷して、
結果として陰陽ともに衰えていくということだと思われるからである。
条文の、身体の「枯」とは痩せている様子で陽虚を、
「燥」とは陰血不足を表しているようである。
その陽邪や中焦を塞ぐために気血の上下の流れがうまくいかず、
頭部だけに汗を発するようである。
熱によって陰分が損傷した場合でも
小便が出る場合には、体内に陰分はまだ残っているため、
症状を治すことができるという、
治療によって病が癒える可能性があるのかどうかを示した内容であると同時に、
太陽病であるから発汗をするという安直な考え方を
戒めている内容であるともいえる。
(112条)
傷寒、脈浮、医以火迫劫之、亡陽、必驚狂、起臥不安者、桂枝去芍薬加蜀漆龍骨牡蠣救逆湯主之。
傷寒の病に、前条と同じ様に火を用いて治療を行って亡陽(陽気が無くなる)すれば、
必ず驚狂(驚き狂う)して、寝起きが安定しなくなり、この場合には
桂枝去芍薬加蜀漆龍骨牡蠣救逆湯を用いて
治療をすべきであるという内容である。
「亡陽」とは陽気の損傷の程度が、陽虚よりも甚だしく、
心神が収まらずに動揺している状態が、症状から現れている。
この場合の治療では、陰分を補ったとしても
上浮した心神は収まらないため、
まずは心神を収める方剤を用いるべきである。
また、太陽病に対して誤治をし表邪が胸部に内陥した場合に、
桂枝去芍薬湯を用いたが(21条)、本条でも同じ理由だろう。
その桂枝去芍薬湯に、蜀漆、龍骨、牡蠣といった
心神を収める作用を加えたものが本条の方剤である。
(続く)
参加者:下野、新川、大原、盧