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8月20日(日):第五回、鍼灸学生の為の勉強会〜【医古文・漢文の読み方No.2】〜
下野です。
今回は「諸病の主薬」の記事になります。
【原文】
婦人腹痛、須用呉茱萸、香附、為主。
婦人経閉、須用桃仁、紅花、為主。
婦人血崩、須用炒蒲黄、為主。
婦人帯下、須用炒乾姜、為主。
婦人安胎、条笒、白朮、為主。
<第二十九に続く>
【解説】
婦人の腹痛には呉茱萸、香附を使用すべし。
閉経には桃仁、紅花を使用すべし。
血崩(子宮出血)には炒蒲黄を使用すべし。
帯下には炒乾姜を使用すべし。
胎児を安定させるには条笒、白朮を使用すべし。
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◉呉茱茰
ミカン科のニセゴシュユ、ホンゴシュユの未成熟な果実。
性味:辛・苦・熱・小毒
帰経:肝・腎・脾・胃
効能:
①暖肝・散寒止痛
・肝胃虚寒による濁陰上逆の頭痛、悪心、嘔吐や、
肝寒犯胃の上腹部痛、悪心、嘔吐などに。
方剤例 → 呉茱茰湯・丁茰理中湯。
・寒滞肝脈の四肢の冷えや両側の疝痛などに。
方剤例 → 導気湯・当帰四逆加呉茱茰生姜湯。
・下焦虚寒の月経痛や月経周期の遅れに。
方剤例 → 温経湯・艾附暖宮丸。
・寒湿脚気上逆の腹満や腹痛、下痢などに。
方剤例 → 呉茰木瓜湯。
②下気止嘔
・胃寒の嘔吐、乾嘔、腹痛、よだれが多いなどに。
方剤例 → 呉茱茰湯。
・肝火犯胃の胸の痛み、呑酸、嘔吐などに。
方剤例 → 左金丸・栀茰丸。
③その他
・脾腎陽虚の下痢(五更瀉)に。
方剤例 → 四神丸。
◉香附
カヤツリグサ科のハマスゲの細根などを除いた根茎。
性味:辛・微苦・微甘・平
帰経:肝・三焦
効能:
①理気解鬱:
・肝鬱気滞による胸の脹痛、腹満、憂鬱など。
方剤例→柴胡疎肝散。
・気、血、痰、湿、熱、食鬱による胸苦しい、嘔吐、消化不良などに。
方剤例→越鞠丸。
・寒凝気滞による腹痛やお腹の張りに。
方剤例→良附丸。
②調経止痛:肝鬱気滞による月経の乱れや痛みに。
方剤例→香附芎帰湯・艾附丸。
◉桃仁
バラ科のモモやノモモなどの成熟種子。
性味:苦・甘・平
帰経:心・肝・大腸
効能:
①破瘀行血
・血瘀の無月経や月経痛、腹腔内の腫瘤に。
方剤例 → 桃紅四物湯。
・産後瘀阻の悪露停滞や下腹部痛、下腹の腫瘤等に。
方剤例 → 生化湯。
・蓄血の狂躁状態、下腹部が硬くてはるの症状に。
方剤例 → 抵当湯。
・打撲外傷の内出血や腫れ、痛みに。
方剤例 → 復元活血湯・桃仁湯。
・火毒壅盛の気滞血瘀による肺化膿症や虫垂炎に。
方剤例 → 大黄牡丹皮湯・腸癰湯。
②潤腸通便
・腸燥の便秘に。
方剤例 → 五仁丸・潤腸丸。
③その他
・気逆の咳嗽や胸郭脾痞満に。
方剤例 → 双仁丸。
◉紅花
キク科のベニバナの花。
性味:辛・温
帰経:心・肝
効能:
①活血通経
・血瘀の無月経や月経痛、腹内腫瘤に。
方剤例 → 桃紅四物湯・活血通経湯・紅藍花酒・紅花湯。
・難産や死産の娩出に。
方剤例 → 脱花煎。
②袪瘀止痛
・打撲外傷の内出血の痛みや腫れに。
方剤例 → 八厘散。
・熱毒内盛、気滞血瘀の皮膚化膿症の腫れや痛みに。
・血瘀の狭心痛みに。
方剤例 → 冠心Ⅱ号。
◉蒲黄(炒蒲黄)
ガマ科のヒメガマや
ガマなどの成熟した花粉を乾燥したもの。
性味:甘・平
帰経:肝・心包
効能:
①止血
・鼻出血や歯、吐血、喀血、血尿など各種出血に用いる。
・外傷性の出血にも用いる。
②活血散瘀
・血瘀の月経痛や無月経、腹痛、産後瘀阻に。
方剤例 → 失笑散。
・打撲外傷の痛みや腫れに。
・重舌、口内炎、舌の出血に。
③その他
・血淋の排尿時痛や血尿に。
方剤例 → 蒲黄散
◉乾姜
ショウガ科のショウガの根を乾燥したもの。
性味:大辛・大熱
帰経:心・肺・脾・胃
効能:
①温中散寒
・脾胃虚寒の腹部冷痛、腹鳴、未消化下痢、嘔吐などに。
方剤例 → 理中湯(人参湯)。
②回陽通脈
・陽気衰微、陰寒内盛の亡陽虚脱で、
四肢の冷えや脈が微弱の時に。
方剤例 → 四逆湯・通脈四逆湯。
・脾腎陽虚の未消化下痢、四肢の冷え、脈が微弱で、
虚陽上浮によるのぼせ、煩燥に。
方剤例 → 白通湯。
③温肺化痰・化飲
・肺の寒飲による咳嗽や呼吸困難、希薄な痰、背部冷感などに。
方剤例 → 苓甘五味姜辛湯・苓甘姜味辛夏仁湯・小青竜湯。
◉黄芩
シソ科のコガネバナの周皮を除いた根。
内部が充実し、細い円錐形をしたものを条芩、桂芩、尖芩などと称す。
かつては枯笒と条笒に分け、
前者は軽く肺火を清し、条笒は重くて大腸の火を清す。
現在は区別せず使用している。
性味:苦・寒
帰経:肺・脾 ・大腸・小腸・胆
効能:
①清熱燥湿
・湿温・暑温初期の湿熱阻滞気機の胸が苦しいや、悪心、嘔吐などに。
・湿が熱より重いとき。 → 黄芩滑石湯。
・熱が湿より重いとき 。→ 甘露消毒丹。
・湿熱中阻の腹満や嘔吐時に。 → 半夏瀉心湯。
・大腸湿熱の下痢や裏急後重に。 → 黄芩湯・葛根黄芩黄蓮湯。
・湿熱黄疸に。
②清熱瀉火・解毒・凉血
・肺熱の咳嗽や呼吸の促迫、黄痰などに。
方剤例 → 清肺湯。
・上焦火熱の高熱や口渇、喉痛などに。
方剤例 → 凉膈散。
・上焦火盛の喉の腫れや痛み、皮膚化膿症に。
・血熱妄行の鼻血や吐血に。
方剤例 → 黄蓮解毒湯・三黄瀉心湯。
③清熱安胎
・妊娠中の蘊熱による下腹痛に。
方剤例 → 当帰散。
◉白朮
キク科のオオバナオケラの根茎。
性味:甘・苦・温
帰経:脾・胃
効能:
①健脾益気
・脾気虚による食欲不振・泥状便・水様便・腹満・倦怠無力感。
方剤例 → 四君子湯・参苓白朮散。
・虚寒の腹痛や冷えに。
方剤例 → 理中湯・附子理中湯。
・脾虚に積滞があり、腹満や腹痛に。
方剤例 → 香砂枳朮丸。
②燥湿利水
・脾虚で水湿が停滞したための浮腫・尿量減少・泥状便・水様便などに。
方剤例 → 防已黄耆湯・啓脾湯。
・虚寒の冷えや寒がるを伴うときに。
方剤例 → 実脾湯・真武湯。
・水飲の滞りによるふらつきやめまいに。
方剤例 → 苓桂朮甘湯。
・湿困脾陽の腹満や下痢に。
方剤例 → 四苓散・五苓散・胃苓湯。
③固表止汗
・表虚の自汗に。
方剤例 → 玉屏風散。
④安胎
・胎動不安・妊娠中の腹痛・性器出血など。
⑤その他
・風湿痺の関節痛に。
<参考文献>
『万病回春解説』 創元社
『万病回春.巻之1-8』 早稲田大学 古典籍総合データベース
『中医臨床のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
『鍼灸医学事典』 医道の日本社
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下野