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9月10日(日):【第三回 一般向け東洋医学養生講座】
こんにちは、大原です。
今回は胃快之針(いかいのはり)です。
前回までの記事
鍼道秘訣集を読む その15 → 六.火曳之針
鍼道秘訣集を読む その16 → 七.勝纍之針
鍼道秘訣集を読む その17 → 八.負曳之針
鍼道秘訣集を読む その18 → 九.相曳之針
鍼道秘訣集を読む その19 → 十.止針
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十一.胃快之針
大食傷ノ日針先ヲ上ヘ成深針シテ荒荒ト捏
大法是針ニテ吐レ食胃ノ府クツロギ快ナルガ
故ニ胃快ノ針ト號ス併ラ常ニハ不レ針處ハ
臍上真中通臍上一寸是也又腫氣ノ病
人ニ針ス口傳
それでは原文から、現代の読み方に直してみます。
大食傷(しょくしょう)の日(とき)、
針先を上へ成し、深く針して荒(あら)荒と捏(ひね)る大法。
この針にて食を吐き、胃の府くつろぎ快よくなるが故に胃快の針と号す。
併(しかしなが)ら常には針せざる。
所は臍(さい)の上真中通り、臍(ほぞ)の上一寸是れなり。
又、腫氣(しゅき)の病人に針す。口傳。
語句の意味などを補足しながら訳してみましょう。
<意味>
(飲食が乱れ食べ過ぎた等により)大きく食傷となったとき、
針先を上にして深く針を入れ荒々しく捻る大法である。
この針によって食物を吐き、
胃の腑がくつろいで快くなるので胃快の針と称する。
しかしながら、通常、この針は用いない。
針をする所は臍の上の、身体の中心線上で、臍の上一寸の所である。
また、腫瘍の気のある病人にも用いる針である。
やり方は口伝とする。
食べた物を吐かせることによって
食傷を取り除く針である、と記されていますが、
実際はどうなんでしょうか。
文脈をどのようにとらえるべきか難しいですが、
「通常ではこの針は用いない」ともあり、
さらに文末には「口伝する」とあることから、
食べた物を吐かせるために腹部へ刺激を与えるという
ちょっと力任せのようなやり方ではなく、
何か別の正しいやり方というか
奥義?のようなものが
実はあるのではないかとも思います。
ですが、ここに記されている内容だけでも、
臨床に役立ちそうな大きなヒントが
あるような気がします。
続きます。
〜Back Number〜
鍼道秘訣集を読む その1 → 鍼道秘訣集序
鍼道秘訣集を読む その2 → 一.當流他流之異
鍼道秘訣集を読む その3 → 二.當流臓腑之辯
鍼道秘訣集を読む その4
鍼道秘訣集を読む その5
鍼道秘訣集を読む その6 → 三.心持之大事
鍼道秘訣集を読む その7 → 四.三清浄
鍼道秘訣集を読む その8
鍼道秘訣集を読む その9
鍼道秘訣集を読む その10
鍼道秘訣集を読む その11
鍼道秘訣集を読む その12
鍼道秘訣集を読む その13 → 五.四脉之大事
鍼道秘訣集を読む その14
鍼道秘訣集を読む その15 → 六.火曳之針
鍼道秘訣集を読む その16 → 七.勝纍之針
鍼道秘訣集を読む その17 → 八.負曳之針
鍼道秘訣集を読む その18 → 九.相曳之針
鍼道秘訣集を読む その19 → 十.止針
参考文献:
『鍼道秘訣集』(京都大学附属図書館所蔵)より
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00003559
(掲載画像は該当部分を抜粋)
『弁釈鍼道秘訣集』 緑書房
※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。