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9月10日(日):【第三回 一般向け東洋医学養生講座】
こんにちは、大原です。
今回は止針(とどまるはり)です。
前回までの記事
鍼道秘訣集を読む その15 六.火曳之針
鍼道秘訣集を読む その16 七.勝纍之針
鍼道秘訣集を読む その17 八.負曳之針
鍼道秘訣集を読む その18 九.相曳之針
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十.止針
立處ハ兩腎也其内多クハ右ノ命門龍雷ノ相
火ニテ常常亢リ易上リ安シ腎水ヲ漏タル
日ハ必ス右腎命門ノ相火動ズル物也天是
火ニアラザレハ不レ能二物生一人非二是火一不レ能レ生二
一身一云シ火ハ是也邪氣ニモ五邪アリトハイ
エドモ眼トスル處ハ命門ノ相火也是相火ノ亢
リ上ルニ針シテ止上サザル様ニスルヲ止ル針ト
號ス諸病ニ宗ト用ル止様口傳也工夫以テ
針シ可レ覺
それでは原文から、現代の読み方に直してみます。
<読み>
立て所は両腎なり。
その内多くは右の命門、龍雷(りゅうらい)の相火にて、
常常(つねづね)亢(たかぶ)り易く上り安し。
腎水を漏らしたる日(とき)は、必ず右腎・命門の相火動ずる物なり。
天、これの火にあらざれば、物を生ずることあたわず。
人、これの火あらざれば、一身を生ずることあたわずと云いし火はこれなり。
邪氣にも五邪ありとはいえども、眼(まなこ)とする所は命門の相火なり。
この相火の亢(たかぶ)り上るに針して止どめ、
上さざる様にするを止まる針と号す。
諸病に宗(むね)と用いる止どめ様、口伝なり。
工夫以て針し覚ゆべし。
語句の意味などを補足しながら訳してみましょう。
<意味>
針を立てる所どこかというと、両方の腎を意識するのである。
そのうち多くは右の命門、龍雷の相火であり、
よく高ぶりやすく上がりやすいものである。
腎水を漏らしたときは、
必ず右の腎・命門の相火が変動するものである。
天は「この火」でなければ物を生じることができず、
人は「この火」でなければ一身を生じることができない
(生命力を保つことができない)と言われている「火」が
命門の相火である。
邪気にも五邪があるというが、
見るべきところは名門の相火である。
この名門の相火の高ぶる場合、針をして留め、
上がらないようする針を止(とどまる)針と称す。
諸病に用いて相火を止める方法は口伝する。
工夫して針をし覚えよ。
命門の火とは、諸説ありますが
ここでは人体の生命力の根源をいい、
直接には右の腎と大きく関わり、
さらにその変動は腎水の漏れによるところが大きく、
両腎を意識して治めることが必要と書かれています。
この止(とどめる)針は、
命門の火の高ぶりを抑えるという目的であり、
その手法は火曳之針や相曳之針になるのかも知れません。
〜Back Number〜
鍼道秘訣集を読む その1 → 鍼道秘訣集序
鍼道秘訣集を読む その2 → 一.當流他流之異
鍼道秘訣集を読む その3 → 二.當流臓腑之辯
鍼道秘訣集を読む その4
鍼道秘訣集を読む その5
鍼道秘訣集を読む その6 → 三.心持之大事
鍼道秘訣集を読む その7 → 四.三清浄
鍼道秘訣集を読む その8
鍼道秘訣集を読む その9
鍼道秘訣集を読む その10
鍼道秘訣集を読む その11
鍼道秘訣集を読む その12
鍼道秘訣集を読む その13 → 五.四脉之大事
鍼道秘訣集を読む その14
鍼道秘訣集を読む その15 → 六.火曳之針
鍼道秘訣集を読む その16 → 七.勝纍之針
鍼道秘訣集を読む その17 → 八.負曳之針
鍼道秘訣集を読む その18 → 九.相曳之針
参考文献:
『鍼道秘訣集』(京都大学附属図書館所蔵)より
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00003559
(掲載画像は該当部分を抜粋)
『弁釈鍼道秘訣集』 緑書房
※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。