<近日開催予定のイベント>
8月20日(日):第五回、鍼灸学生の為の勉強会〜【医古文・漢文の読み方No.2】〜



こんにちは、大原です。
鍼道秘訣集の原文を探っていて、
「こんなことが書かれていたのか」と感嘆することがあります。
鍼道秘訣集といえば
腹診や打診が有名ですが、
それだけでなく
その時代の雰囲気を味わえることも
古典を読む醍醐味ですね。

ちなみに鍼道秘訣集が書かれたのは
江戸時代の1685年といわれています。

いきなり趣味の話に移りますが、
江戸時代から将棋は、囲碁とともに幕府の公認となり、
名人戦が年に一度行われるようになりました。

当時の名人は、江戸幕府に詰将棋(つめしょうぎ)を
作って献上していたようです。
献上する程のものなので、立派な詰将棋だったのでしょう。
現在に伝わっている当時の有名な詰将棋があり、
「将棋図巧」「将棋無双(象戯作物)」と称されています。

各100題ずつ、合計200題で、非常に難しいものは、
総手数がなんと600手を超える手数らしいです!
これらを全部解けたらプロになれると言う
棋士の先生がいらっしゃいますが、
そうだろうなぁと納得します。
(参考リンク:ウィキペディア「将棋図巧」

江戸時代の棋士の棋力は
現代の棋士の方と比べてどれぐらい違いがあったのか
想像するしか無いですが、
その時代の詰将棋の内容から、
現代でもひけをとらない棋力があったと推察できるでしょう。
現在、最先端のコンピュータが指した手を研究する棋士が
高い勝率を誇るなど活躍している風潮がありますが、
将棋の歴史に目を向けることで、
人が積み重ねてきた将棋の価値を
再考することも大事だと思います。

さて、前置きが長くなりましたが、
今回は相曳之針(あいびきのはり)です。

〜Back Number〜
鍼道秘訣集を読む その1 →  鍼道秘訣集序
鍼道秘訣集を読む その2 → 一.當流他流之異
鍼道秘訣集を読む その3 → 二.當流臓腑之辯
鍼道秘訣集を読む その4
鍼道秘訣集を読む その5
鍼道秘訣集を読む その6 → 三.心持之大事
鍼道秘訣集を読む その7 → 四.三清浄
鍼道秘訣集を読む その8
鍼道秘訣集を読む その9
鍼道秘訣集を読む その10
鍼道秘訣集を読む その11
鍼道秘訣集を読む その12
鍼道秘訣集を読む その13 → 五.四脉之大事
鍼道秘訣集を読む その14
鍼道秘訣集を読む その15 → 六.火曳之針
鍼道秘訣集を読む その16 → 七.勝纍之針
鍼道秘訣集を読む その17 → 八.負曳之針


九.相曳之アヒヒキノ
是モ處サタマラ ヤワラカナナル針虚勞ノ証老人養生針ニ
用ル邪氣ノヒクト針ヲヒクト相ヒキニ引針也
シントモ  シイフ 


<読み>
これも處定まらず、和(やわら)かなる針。
虚勞の証、老人養生針に用いる。
邪氣の曳くと、針を曳くと、相曳きに引く針なり。
補針とも言うべし。


語句の意味などを補足しながら
訳してみます。

この相曳之針も邪気の場所が定まらない場合に用い、
柔らかな針である。
虚労(全ての臓が虚して疲労の極まった状態)の証や、
老人の養生の針に用いる。
邪気をおびき出すのと、針を引くのとを同時に行う、
すなわち患者の腹部に沿うような、
腹部の力の無さに適う程度の加減で行う針である。
「補針」すなわち補法の針と言うことができる。


さて、ここまで4種類の針の方法が出てきました。
いったんまとめてみましょう。

●火曳之針(ひびきのはり)
→上実して下虚する場合などに用いる。
臍下三寸に針をして気を引き下げる。
鍼道秘訣集を読む その15

●勝纍之針(かちびきのはり)
→きつい実証の場合や、傷寒の大熱、傷食に用いる。
所定まらない邪を打ち払い、瀉針という。
虚労の人と老人以外に、大方用いる。
鍼道秘訣集を読む その16

●負曳之針(まけびきのはり)
→邪気が奥に隠れてしまっていたり、病証がよく分からない時に用いる。
隠れている、所定まらない邪を浮かび上がらせる。
鍼道秘訣集を読む その17

●相曳之針(あいびきのはり)
→虚症のときに用いる。補針ともいう。
弱っている腹部に対して行うため、強くし過ぎない。

続きます。


参考文献:
『鍼道秘訣集』(京都大学附属図書館所蔵)より
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00003559
(掲載画像は該当部分を抜粋)
『弁釈鍼道秘訣集』 緑書房

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

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