この傷寒論のシリーズは、
当院の修行生によって毎週、水曜日の早朝に開かれる、
自主的な勉強会におけるメモ・備忘録となります。
古典の専門家によるものではなく、
一から学ぶ者の新鮮な目線を共有出来れば幸いに思います。



7/12(水)
太陽病中篇より

(107条)
傷寒、八九日、下之、胸満煩驚、小便不利、譫語、
一身尽重、不可転側者、柴胡加龍骨牡蠣湯主之。

前回の続きである。
柴胡加龍骨牡蠣湯は
少陽枢機を疎通させる小柴胡湯が基本方剤であるが、
停滞した水湿を取り除くために、保水作用のある甘草を除く。

さらに、龍骨、牡蠣、鉛丹が加えられ
上気を下ろす作用が加わる。
条文にある症状の中の小便不利は、三焦が通利していないためにおこる。
竜骨は失精を治す効果もあるようであるが、
(参考:金匱要略 血痺虚労病篇)
この小便不利の原因は腎精不足ということでは無いようである。

(108条)
傷寒、腹満、譫語、寸口脈、浮而緊、此肝乗脾也、名曰縦、刺期門。

(109条)
傷寒発熱、嗇嗇悪寒、大渇、欲飲水、其腹必満、自汗出、小便利、其病欲解、此肝乗肺也、名曰横、刺期門。


108条、109条は
今までの条文とは異なり、
・・・というのは肝の病であり、縦(横)と名付ける。
これは期門を刺すべきである
という内容である。

現代の感覚で条文を読むと、
肝が脾の働きを抑制する場合には肝気横逆といい、
108条の「」という表現は抵抗を感じる。
同様に、109条も、肺は上焦にあり、肝は中〜下焦にあることから
その位置関係からすると「」とすべきかと思われるが、
条文では「」とある。

しかし、条文を素直に読むと、
期門に肝の反応が出ているとすると
肝気が上に昂ぶっている状態をいっているのかも知れないことに気付く。
そのために108条では脈が浮で緊なのであろう。
その昂ぶっている肝気と、
108条の脾、109条の肺とのそれぞれの位置関係は
条文の通りであり矛盾が無くなることになる。

条文の表現は、分かりきっているものは省く傾向にあり、
すなわちこれらの条文は
「期門に何らかの反応がある場合」のことを言っているのかも知れない。

条文を読み解釈する際、
条文は現代人が読むように作られていると錯覚しがちであるが
そうではない。
古人がその時代における考えを書き留めたものであり、
現代人が解釈する際には
現代の知識や、その時代以外の知識・解釈は
理解の妨げになる場合があると考えるべきである。


参加者:林、新川、大原、盧

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