この傷寒論のシリーズは、
当院の修行生によって毎週、水曜日の早朝に開かれる、
自主的な勉強会におけるメモ・備忘録となります。
古典の専門家によるものではなく、
一から学ぶ者の新鮮な目線を共有出来れば幸いに思います。



6/7(水)
太陽病中篇より


(103条)
太陽病、過経十余日、反二三下之。
後四五日、柴胡証仍在者、先与小柴胡湯。
嘔不止、心下急、鬱鬱微煩者、為未解也、与大柴胡湯、下之則愈。

大柴胡湯方
柴胡半斤 黄芩三両 芍薬二両 半夏半斤 生薑五両 枳実四枚 大棗十二枚
右七味、以水一斗二升、煮取六升、去滓、再煎、温服一升、日三服、
一方用大黄二両、若不加大黄、恐不為大柴胡湯也。

太陽病にかかって経を過ぎること10日余り、
二、三回、下法を用いて、その4、5日後に
柴胡湯証の症状がみられる場合には、まず小柴胡湯を与え、
嘔、心下急、鬱々と微熱・煩悶がある場合には、
小柴胡湯では病が解けていないので
大柴胡湯を与えて下すと癒える、という内容である。

小柴胡湯と大柴胡湯は
どちらも少陽病を治する方剤であるが、
小柴胡湯は和法であり、
大柴胡湯は下法に属するという考え方もある。

大柴胡湯の構成は、
小柴胡湯から人参と甘草を去り、芍薬、桔実、大黄を加え、
生薑の量を倍にしたものとなる。
桔実や大黄は瀉下剤に用いられることから、
少陽病が主であるが
陽明の熱を取り去る意味合いがあるということだろう。

さて、大柴胡湯を構成する大黄について、
傷寒論の条文の本文には大黄が入っておらず、
条文後ろにある加減法の記述に記されているのみである。
『金匱要略』など、その後の中医書で
大柴胡湯の構成の一つに大黄があると記されるようになった。
(『肘後備急方』からのようである)

大黄の配合についての解釈は難しく、
書物によっては「玄妙なり」とし、
理由らしき内容が記されていないものもある。

一つの解釈として、この条文に出ている
心下急」などの症状は、陽明の実熱ではなく(胃中の熱実ではなく)、
三焦の実熱(胃口の熱実)であるとする見方がある。
すなわち、胃中(陽明)に熱がある場合には大黄が用いられ、
胃中ではなく胃口(三焦)に熱がある場合には
大黄は用いないということであろう。

104条
傷寒、十三日不解、胸脇満而嘔、日哺所発潮熱、已而微利。
此本柴胡証、而不得利、今反利者、知医以丸薬下之、非其治也。
潮熱者、実也。先宜小柴胡湯以解外、後以柴胡加芒消湯主之。

傷寒の病にかかりかなり日数が経過した後、
胸脇が満して嘔し、日晡潮熱、下痢がある場合、
本は柴胡証であり、
これを陽明病と誤って下しても下らず、
丸薬をもって無理矢理下しても治らない。
このような場合、まず小柴胡湯を用いて外邪を解し、
後に柴胡加芒硝湯を用いるという内容である。

日晡潮熱の「」とは、
「申」すなわち午後3〜5時の時間帯を表している。
熱の症状が目立つので、
陽明病であると誤まって
下法を施してしまったということである。

このような場合、
柴胡証が本であることを確認して小柴胡湯を用い、
その後、小柴胡湯に芒硝(硫酸ナトリウム、鉱物の一種)が加えられた
小柴胡芒硝湯で緩下をはかると良い。
承気湯類や大柴胡湯は陽明の実熱を下すなどの働きとなり、
作用が強すぎるのだろう。

(続く)


参加者:下野、新川、大原、盧

 

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