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下野です。
今回は『諸病の主薬』の記事になります。
【原文】
結核、須用夏枯草、為主。
肺癰肺痿、須用薏苡仁、為主。
心胃痛、須用炒栀子、為主。
腹痛、須用芍薬、甘草、為主。
腹冷痛、須用呉茱茰、良姜、為主。
<第二十四に続く>
【解説】
*結核には、夏枯草を使用すべし。
*「結核菌」による感染症ではなく、皮膚の下に塊が生じたたもの。
肺化膿症、肺の慢性症には、薏苡仁を使用すべし。
心胃痛には、炒栀子を使用すべし。
腹痛には、芍薬、甘草を使用すべし。
腹部の冷痛には、呉茱茰、良姜を使用すべし。
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◉夏枯草
シソ科ウツボグサの花穂。
性味:辛・苦・寒
帰経:肝・胆
効能:
①清泄肝火
・肝火上炎の目の充血、腫れや痛み、頭痛や眩暈やイライラに。
・肝血虚による夜間時に増悪する眼痛に。
方剤例 → 夏枯草散。
・陰虚陽亢の眩暈、頭痛に。
②清熱散結
・瘰癧や癭瘤、乳腫、耳下腺腫などに。
方剤例 → 夏枯草膏。
◉薏苡仁
イネ科のハトムギの種皮を除いた成熟種子。
性味:甘・淡・微寒
帰経:脾・胃・肺
効能:
①清利湿熱
・湿熱内蘊による水腫や尿量減少に。
・湿温初期の頭重、悪風や発熱、身体が重い下痢などに。
方剤例 → 三仁湯・藿朴夏苓湯。
②祛湿除痺
・湿熱痺の関節痛、こわばりなどに。
方剤例 → 宣痺湯・加減木防已湯・四妙散。
・湿痺の浮腫、むくみ、痺れ痛に。
方剤例 → 薏苡仁湯。
③排膿消腫
・肺癰に。
方剤例 → 葦茎湯。
・腸癰(虫垂炎)に。
方剤例 → 薏苡附子敗醬散・腸癰湯。
④健脾止瀉
・脾虚湿困の泥状〜水様便に。
方剤例 → 参苓白朮散。
・湿盛の白色帯下に。
⑤その他
・脾陰虚の症状に。
方剤例 → 珠玉二宝粥・参苓白朮散。
◉栀子
栀子、山栀子、炒栀子と言う。
アカネ科のクチナシ。
形が球形の物を山栀子、
細長い物を水栀子と言う。
性味:苦・寒
帰経:心・肺・肝・胃・三焦
効能:
①清熱瀉火
・外感熱病で起こる胸中鬱熱で胸が熱苦しい、不眠などを呈する時に。
方剤例 → 栀子豉湯。
・三焦の実火による高熱、意識障害を呈する時に。
方剤例 → 黄連解毒湯。
・肝火による目赤、疼痛、口苦、胸が苦しい等を呈する時に。
方剤例 → 竜胆瀉肝湯。
②清熱利湿
・湿熱の黄疸に。
方剤例 → 栀子柏皮湯。
・膀胱湿熱の排尿痛、排尿困難を呈する時に。
方剤例 → 五淋散。
③清熱涼血
・血熱による各出血に用いる。
方剤例 → 栀子金花丸。
④清熱解毒
・熱毒による皮膚の化膿症に。
方剤例 → 清上防風湯。
◉白芍
ボタン科のシャクヤクのコルク皮を除去し、
そのままあるいは湯通しして乾燥した根。
性味:苦・酸・微寒
帰経:肝・脾
効能:
①補血斂陰
・血虚による顔色がよくない、ふらつき、眩暈、かすみ目などに。
方剤例 → 四物湯。
・陰虚陽浮による自汗や寝汗に。
・外感風寒・表虚の営衛不和の自汗や悪風に。
方剤例 → 桂枝湯。
②柔肝止痛
・肝鬱気滞による胸脇部の張りや痛み、憂鬱感、イライラなどに。
方剤例 → 四逆散・柴胡疏肝散。
・肝脾不和の腹痛や下痢に。
方剤例 → 痛瀉要方・逍遙散・当帰芍薬散。
・血虚肝乗の筋肉の痙攣や痛みに。
方剤例 → 芍薬甘草湯・桂枝加芍薬湯・小建中湯。
・大腸湿熱の下痢や腹痛に。
方剤例 → 芍薬湯・黄笒湯。
③平肝斂陰
・肝陰不足・肝陽上亢の頭痛や眩暈に。
方剤例 → 鎮肝熄風湯・七物降下湯。
④その他
・利水剤として。
方剤例 → 真武湯。
・血痺に。
方剤例 → 黄耆桂枝五物湯。
◉甘草
マメ科のウラル甘草の根。
性味:平・甘
帰経:十二経
効能
①補中益気
・脾胃虚弱で元気がないや無力感、食欲低下、泥状便などに。
方剤例 → 四君子湯・参苓白朮散・保元湯。
・気陰不足の動悸や汗が止まらない、脈が結代などに。
方剤例 → 生脈散・炙甘草湯・加減復脈湯。
②潤肺・祛痰止咳
・風寒による咳嗽に。
方剤例 → 三拗湯。
・風熱の咳嗽に。
方剤例 → 桑菊散。
・寒痰の咳嗽に。
方剤例 → 苓甘姜味辛夏仁湯・苓甘五味姜辛湯・小青竜湯。
・熱痰の咳嗽に。
方剤例 → 定喘湯・五虎湯。
③緩急止痛
・腹痛や四肢の痙攣痛に。
方剤例 → 芍薬甘草湯・桂枝加芍薬湯・四逆散。
④清熱解毒
・喉の腫れや痛みに。
方剤例 → 甘草湯・桔梗湯・甘草桔梗湯。
・皮膚化膿症に。
方剤例 → 銀花甘草湯。
⑤調和薬性
・方剤に配合して、性質の異なる生薬を調和したり、
薬性の偏りや毒性、薬力を緩和にする。
⑥その他
・熱淋の排尿痛や困難に。
方剤例 → 導赤散。
◉呉茱茰
ミカン科のニセゴシュユ、ホンゴシュユの未成熟な果実。
性味:辛・苦・熱・小毒
帰経:肝・腎・脾・胃
効能:
①暖肝・散寒止痛
・肝胃虚寒による濁陰上逆の頭痛、悪心、嘔吐や、
肝寒犯胃の上腹部痛、悪心、嘔吐などに。
方剤例 → 呉茱茰湯・丁茰理中湯。
・寒滞肝脈の四肢の冷えや両側の疝痛などに。
方剤例 → 導気湯・当帰四逆加呉茱茰生姜湯。
・下焦虚寒の月経痛や月経周期の遅れに。
方剤例 → 温経湯・艾附暖宮丸。
・寒湿脚気上逆の腹満や腹痛、下痢などに。
方剤例 → 呉茰木瓜湯。
②下気止嘔
・胃寒の嘔吐、乾嘔、腹痛、よだれが多いなどに。
方剤例 → 呉茱茰湯。
・肝火犯胃の胸の痛み、呑酸、嘔吐などに。
方剤例 → 左金丸・栀茰丸。
③その他
・脾腎陽虚の下痢(五更瀉)に。
方剤例 → 四神丸。
◉良姜
ショウガ科コウリョウキョウの根茎。
性味:辛・熱
帰経:脾・胃
効能:
①散寒止痛
・寒邪傷胃の腹部の冷え・痛みに。
方剤例 → 良附丸・高良姜湯。
・ヘルニアによる下腹部の突発的な痛み。
②温中止嘔
・胃寒気逆の悪心や嘔吐・曖気に。
<参考文献>
『万病回春解説』 創元社
『万病回春.巻之1-8』 早稲田大学 古典籍総合データベース
『中医臨床のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
『鍼灸医学事典』 医道の日本社
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下野