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7月9日(日):第四回、鍼灸学生の為の勉強会〜【医古文・漢文の読み方】〜 7/9 詳しくはこちら
こんにちは、大原です。
雨で身体が重たくなりやすい時期かも知れませんが、
いかがお過ごしでしょうか?
さて、今回も鍼道秘訣集の続きです。
三清浄の記述はまだまだ続きます!
過去の記事のリンク
鍼道秘訣集を読む その1 → 鍼道秘訣集序
鍼道秘訣集を読む その2 → 一.當流他流之異
鍼道秘訣集を読む その3 → 二.當流臓腑之辯
鍼道秘訣集を読む その4
鍼道秘訣集を読む その5
鍼道秘訣集を読む その6 → 三.心持之大事
鍼道秘訣集を読む その7 → 四.三清浄
鍼道秘訣集を読む その8
鍼道秘訣集を読む その9
鍼道秘訣集を読む その10
(前回の続き)
是貪欲瞋恚愚癡ノ三ツノ念アラザル日ハ
心清此故ニ心ヲ清浄ニ持ヲ三ツノ清浄ト
云是心持諸藝ニ用ル事也殊神ヘ参詣ス
ルニモ身ヲ清ルハ次ニテ心ノ清浄ヲ専トス心
清レハ神清キガユヘニ向ノ神モ又清ク納受
アル也往古栂尾ノ明慧上人ト笠置ノ
解脱上人ト此兩ノ名僧ヲハ春日大明
神雙ノ御眼雙ノ御手ノ如ク思召ケルニ明
慧参詣ノ日ハ御簾上リ直ニ明慧ト春日御
物語被レ成解脱参詣シ玉フニハ御簾ヲ隔御
物語被成或日解脱上人参籠有テ春日
ヘ御申有ケルハ神ト奉レ申モ佛ノ垂跡ナリ
佛ハ降雨ノ草木國土ヲ漏ズ濕スガ如ク平
等ニシテ隔更ニ無然ルニ明慧ト我ト別ノ違不
レ可レ有ニ明慧参詣ニハ直二御對面アリ我詣
ヌルニハ御簾ヲ隔御物語シ玉フ事心得難
シト問玉フ明神仰ケルハ我二何ノ隔事ノ可
レ有其方左様ニ念心御簾ノ隔トナル也ト御
返答御座ケルト是解脱房ノ心二慢心ノ我
アルユヘ也
原文をできるだけ現代の読み方にしていきます。
これ、貪欲(どんよく)・瞋恚(しんい)・愚癡(ぐち)の
三つの念(おも)いあらざる日(とき)は、心清し。
これゆえに、心を清浄に持つを三つの清浄(すまし)と云う。
この心持ち、諸芸(しょけい)に用いる事なり。
殊に神へ参詣するにも身を清むるは次にて、心の清浄を専(せん)とす。
心清ければ、神(たましい)清きがゆへに、向いの神も又清く納受あるなり。
往古(いにしえ)栂尾(とかのお)の明慧(みょうえ)上人と
笠置(かさき)の解脱上人と此両(ふたり)の名僧をば、
春日大明神雙(そう)の御眼雙の御手の如く思召けるに、
明慧参詣の日は、御簾(みす)上り、直(じき)に明慧と春日御物語成され、
解脱参詣し玉うには、御簾を隔だて御物語成さる。
ある日、解脱上人参籠(さんろう)有りて、春日へ御申し有りけるは、
神と申し奉るも佛(ほとけ)の垂跡(すいじゃく)なり。
佛は降る雨の草木・國土を漏さず、濕(うる)おすが如く、平等にして隔て更に無し。
然るに、明慧と我と別の違い有るべからざるに、
明慧参詣には直に御対面(たいめん)あり、
我詣ぬるには、御簾を隔て御物語し玉う事、心得え難しと問い玉う。
明神仰けるは、我に何の隔て事の有るべき。
その方、左様に念う心、御簾の隔てとなるなりと御返答御坐けると、
これ解脱房の心に慢心の我あるゆへなり。
意味をみていくと、
重い欲、怒り、愚痴の三つが無いときは心が清く、
このように心を清浄に持つことを三つの清浄(すまし)と云う。
参拝するときにも、身を清めるより心を清めることが第一である。
その後、
仏とは、民衆を救うために現れた神の仮の姿(=垂跡)であり、
降雨が草木や地面をすべて潤すように
分け隔て無く何ごとも平等に扱われる。
明慧上人が参拝するときは神は直に対面して語られ、
解脱上人が参拝するときは神は御簾を隔てるが、
これは解脱上人の心の中に他を隔てるもの、
すなわち心に慢心の我があるためである。
となるでしょう。
参考文献:
『鍼道秘訣集』(京都大学附属図書館所蔵)より
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00003559
(掲載画像は該当部分を抜粋)
『弁釈鍼道秘訣集』 緑書房
※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。