この傷寒論のシリーズは、
当院の修行生によって毎週、水曜日の早朝に開かれる、
自主的な勉強会におけるメモ・備忘録となります。
古典の専門家によるものではなく、
一から学ぶ者の新鮮な目線を共有出来れば幸いに思います。



5/31(水)
太陽病中篇より



(102条)
傷寒、二三日、心中悸而煩者、小建中湯主之。

傷寒の病にかかってまだそれほど日が経っておらず、
「心中悸」「煩」の症状がある場合は
小建中湯が主るという内容である。
小建中湯は100条にも出てきたが、中焦の働きを上げる作用がある。

傷寒の病にかかってまだ間もない場合は、
麻黄湯を与えることが基本であるが、
なぜ中焦の働きを上げる小建中湯が用いられるのだろうか。

金匱要略の血痹虚労病脈証并治(第六)をみてみると、
虚労すなわち五臓がすべて虚している場合には、
小建中湯が主るとある。
これは、五臓が皆弱っている場合には
まずは脾気を上げ、後天の力を上げていくということのようである。

<参考>
『金匱要略 血痹虚労病脈証并治 第六』より
虚労裏急、悸、衄、腹中痛、梦失精、四肢酸疼、手足煩熱、咽干口燥、小建中湯主之。

さて、傷寒論に話を戻すと、
102条では「心中悸」とある。
これは「心悸」とは異なり、心と胸の間で動悸がするというものである。
また、「煩」とは胸部が苦しい様子である。
もともと中焦に虚がある場合に、
表寒邪を受けると三焦が通利しなくなり、
胸部において滞りが発生するということである。

表邪を受けた場合、
まずは発汗させて解表を行うのが基本であったが、
虚がある場合に発汗させると
より虚が進行し、病が重くなってしまう。
その虚を補うべく小建中湯が用いられるのである。

小建中湯は、方剤学の書籍では
「脾虚肝乗に用いる」とあるが、
これは、脾虚で肝血も少なくなり、
相対的に肝気が昂ぶるといった場合のようである。

また、外患病における治法として「営衛調和」があるが、
小建中湯はこの栄衛調和を兼ねるようである。
霊枢に「営は脾が作り、衛は胃が作る」と記述があり、
中焦において営気、衛気が作られるためである。
(ちなみに、営気が出るところは中焦、
衛気が出るところは下焦、とも記されている。)

(続く)


参加者:下野、新川、大原、盧

 

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