下野です。
休憩時にいただきました。
懐かしい味にホッコリし、
午後からの診療も頑張れました!
今回も『諸病の主薬』の記事に参ります。
【原文】
烏鬚黒髪、須用何首烏、為主。
耳鳴、須用当帰、竜會、為主。
鼻中生瘡、須用黄芩、為主。
鼻塞声重、須用防風、荊芥、為主。
鼻淵、須用辛夷仁、為主。
<第二十二に続く>
【解説】
鬚を烏(くろ)く、髪を黒くするには、何首烏を使用すべし。
耳鳴には、当帰、竜會(芦會)を使用すべし。
鼻中に瘡を生じるものには、黄芩を使用すべし。
鼻が塞がり、声が重いものには、防風、荊芥を使用すべし。
鼻淵(副鼻腔炎)には、辛夷仁を使用すべし。
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◉何首烏
タデ科ツルドクダミの塊根。
性味:苦・甘・渋・微温
帰経:肝・腎
効能:
①補肝腎・益精血・生発烏髪
・肝腎精血不足のふらつきや目がかすむ、めまい、耳鳴り、
腰や膝がだるく力が入らない等に。
方剤例 → 七宝美髯丹・烏髪丸・補血生髪湯。
②截瘧
・久瘧に。
方剤例 → 何人飲。
③解毒
・皮膚化膿症に。
方剤例 → 何首烏散。
・頚部のリンパ節種。
・血虚狭風の皮膚の痒みに。
方剤例 → 当帰飲子。
③潤腸通便
・腸燥の便秘に。
◉当帰
セリ科の根をいう。
根頭部を帰頭、主根部を当帰身、支根を当帰尾、
帰身と帰尾を含めて全当帰という。
性味:甘・辛・苦・温
帰経:心・肝・脾
効能:
①補血調経
・血虚による顔色につやがない・頭のふらつき・眩暈・目がかすむ・動悸・月経不順などに。
方剤例 → 四物湯。
・大出血のあと、あるいは気虚をともなうときに。
方剤例 → 当帰補血湯。
・虚寒の腹痛・冷えなどをともなうときもに。
方剤例 → 当帰生姜羊肉湯。
②活血行気・止痛
・気滞血瘀の疼痛・腹腔内腫瘤などに。
方剤例 → 膈下逐瘀湯。
・打撲外傷による腫脹・疼痛に。
方剤例 → 活絡効霊丹。
・痺証のしびれ痛みにも。
・癰疽瘡瘍にも。
③潤腸通便
・腸燥便秘に。
方剤例 → 潤腸丸。
◉芦薈
通称アロエ。
ユリ科アロエの液汁。
性味:苦・寒
帰経:心・肝・胃・大腸
効能:
①瀉熱通便
・熱結便秘に頭のふらつき、目の充血、不眠などに。
方剤例 → 更衣丸。
・習慣性便秘で胃熱を呈すとき。
②凉肝除煩
・肝胆実火の頭痛やめまい、耳鳴り、怒りなどに。
方剤例 → 当帰竜薈丸。
③殺虫療疳
・虫積の腹痛や栄養不良に。
方剤例 → 芦薈丸。
・白癬症やむし歯に。
◉黄芩
シソ科のコガネバナの周皮を除いた根。
内部が充実し、細い円錐形をしたものを条芩、桂芩、尖芩などと称す。
性味:苦・寒
帰経:肺・脾 ・大腸・小腸・胆
効能:
①清熱燥湿
・湿温・暑温初期の湿熱阻滞気機の胸が苦しいや、悪心、嘔吐などに。
・湿が熱より重いとき。 → 黄芩滑石湯。
・熱が湿より重いとき 。→ 甘露消毒丹。
・湿熱中阻の腹満や嘔吐時に。 → 半夏瀉心湯。
・大腸湿熱の下痢や裏急後重に。 → 黄芩湯・葛根黄芩黄蓮湯。
・湿熱黄疸に。
②清熱瀉火・解毒・凉血
・肺熱の咳嗽や呼吸の促迫、黄痰などに。
方剤例 → 清肺湯。
・上焦火熱の高熱や口渇、喉痛などに。
方剤例 → 凉膈散。
・上焦火盛の喉の腫れや痛み、皮膚化膿症に。
・血熱妄行の鼻血や吐血に。
方剤例 → 黄蓮解毒湯・三黄瀉心湯。
③清熱安胎
・妊娠中の蘊熱による下腹痛に。
方剤例 → 当帰散。
◉防風
セリ科のボウフウの根および根茎。
帰経:辛・甘・微温
性味:肝・脾・膀胱
効能:
①散風解表
・風寒表証の発熱・悪寒・頭痛・身体痛などの症候時に用いる。
方剤例 → 川芎茶調散。
②勝湿止痛
・風寒湿痺の関節痛・筋肉のひきつりに用いる。
方剤例 → 防風湯。
③祛風止痛
・破傷風など、外風による痙攣・ひきつりに用いる。
方剤例 → 玉真散。
◉荊芥
シソ科のケイガイの花穂をつけた茎枝、
または花穂。
性味:辛・温
帰経:肺・肝
効能
①祛風解表
・外感風邪による悪寒、発熱、頭痛に。
方剤例 → 荊防敗毒散・荊防湯。
②宣毒透疹
・麻疹で邪が発散されない、初期の皮膚化膿症などに。
方剤例 → 宣毒発表湯・竹葉柳蒡湯。
③散瘀止血
・吐血、鼻血、血便、血尿などに。
方剤例 → 槐花散・生蒲黄湯。
④祛風止痙
・産後の外感邪による項背部の緊張などに。
◉辛夷仁
モクレン科のモクレン等の花蕾。
日本産はコブシやタムシバ。
性味:辛・温
帰経:肺・胃
効能
①祛風解表
・風寒感冒の頭痛や鼻閉、鼻汁に。
・風熱の症状にも。
②宣肺通鼻
・副鼻腔炎の鼻閉、鼻汁に。
方剤例 → 蒼耳散・辛夷散。
<参考文献>
『万病回春解説』 創元社
『万病回春.巻之1-8』 早稲田大学 古典籍総合データベース
『中医臨床のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
『鍼灸医学事典』 医道の日本社
※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
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下野