こんにちは、大原です。
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鍼道秘訣集を読む その4
鍼道秘訣集を読む その5
鍼道秘訣集を読む その6
四.三清浄
此三ノ清浄心法ノ沙汰也
維心ノ字ノ形也
三ノ輪ハ清浄ソ唐衣クルト念ナ取ト念ワシ
三ツノ輪ト云ハ 貪欲 瞋恚 愚癡 ノ三毒心ノ
清月ヲ暗ス悪雲ナリ歌ニ
貪欲心 貪欲ノ深流レニ沈リテ浮瀬モ
無身ソイカカセン
瞋恚心 燃出ル 瞋恚ノ炎ニ身ヲ焼テ己ト乗火ノ車哉
愚癡心
愚癡無智ノ理非ヲモ分ス僻ツツ僻ハ一僻ムナリケリ
(以下、続く)
この「三清浄」の段落は長いので、
いったんここで切ります。
原文に句読点などを入れ、
適当と思われるところで改行するなどし、
現代的な読み方にしてみたいと思います。
第4章 三(みっつ)の清浄(すまし)
此、三の清浄心の法の沙汰なり。
三つの輪は、
清(きよ)く、浄(きよ)きぞ唐衣くると念(おも)うな、取と念(おも)わじ。
三つの輪と云うは、
貪欲(どんよく、むさぼる)、瞋恚(しんい、いかる)、愚癡(ぐち、おろか)の三毒、
心の清き月を暗(くもらす)す悪雲なり。
歌に、
貪欲心(むさぼりおもうこころ)
「貪欲の 深(ふか)き流れに沈まりて 浮ぶ瀬も無き 身ぞいかがせん」
瞋恚心(いかるこころ)
「燃え出る 瞋恚(しんい)の炎に 身を焼きて 己と乗れる 火の車かな」
愚癡心(おろかなるこころ)
「愚癡(ぐち)無智(むち)の 理非(りひ)をも分けず 僻(ひがみ)つつ 僻(ひが)むは一(おなじ) 僻むなりけり」
この段落はこの後も長く続きますので
意味を考えるのが少々早いかも知れませんが、
ここまでの内容を解釈すると
心の形(図)の近くにある三つの輪は、それぞれ
貪欲(むさぼる)、瞋恚(いかる)、愚癡(おろか)の三毒、
すなわち、
清心の月を暗くしてしまう悪雲の心を表している。
貪欲(むさぼる)心によって、深い流れに沈んでしまい、浮かぶこともできなくなる。
瞋恚(いかる)心によって、己の身が焼かれ、まるで火の車のようだ。
愚癡心(おろかなる)心によってひがむのは、道理や理屈を知らず、
素直にあるがままをみることができないためである。
となるでしょうか。
歌の解釈は、やはりできるだけ原文から
意味を汲み取るのが良いかと思います。
続きます。
参考文献:
『鍼道秘訣集』(京都大学附属図書館所蔵)より
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00003559
(掲載画像は該当部分を抜粋)
『弁釈鍼道秘訣集』 緑書房
※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。