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阪急電車「古都」
阪急電車「古都」

下野です。
電球色が独特の車内雰囲気をつくり出し、
写真は本当に一部しか写っていませんが、
京都の洛中・洛東・洛西・嵐山嵯峨野の
各名所がラッピングされおります。
今年の11月下旬まで
阪急京都線系統で運行予定のようです。

では『諸病の主薬』の記事に参ります。


【原文】
癲、属心、須用当帰、為主。
狂、属肝、須用黄連、為主。
癇症、須用南星、半夏、為主。
健忘、須用遠志、石菖蒲、為主。
征忡驚悸、須用茯神、遠志、為主。
虛煩、須用竹筎、為主。

<第二十に続く>


【解説】
癲癇は心に属す。当帰を使用すべし。

狂躁は肝に属す。黄連を使用すべし。

癇症には、南星、半夏を使用すべし。

健忘(物忘れ)には、遠志、石菖蒲を使用すべし。

征忡、驚悸には、茯神、遠志を使用すべし。

心胸煩熱には、竹筎を使用すべし。

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当帰とうき

当帰
当帰

セリ科の根をいう。
根頭部を帰頭、主根部を当帰身、支根を当帰尾、
帰身と帰尾を含めて全当帰という。
性味:甘・辛・苦・温
帰経:心・肝・脾
効能:
①補血調経
・血虚による顔色につやがない・頭のふらつき・眩暈・目がかすむ・動悸・月経不順などに。
方剤例 → 四物湯。
・大出血のあと、あるいは気虚をともなうときに。
方剤例 → 当帰補血湯。
・虚寒の腹痛・冷えなどをともなうときもに。
方剤例 → 当帰生姜羊肉湯。

②活血行気・止痛
・気滞血瘀の疼痛・腹腔内腫瘤などに。
方剤例 → 膈下逐瘀湯。
・打撲外傷による腫脹・疼痛に。
方剤例 → 活絡効霊丹。
・痺証のしびれ痛みにも。
・癰疽瘡瘍にも。

③潤腸通便
・腸燥便秘に。
方剤例 → 潤腸丸。

黄連おうれん

黄連
黄連

キンポウゲ科のオウレン属の根茎。
性味:苦・寒
帰経:心・脾・肝・胆・胃・大腸
効能:
①清熱燥湿
・大腸湿熱の下痢や裏急後重に。
方剤例 → 香連丸・芍薬湯・葛根黄笒黄連湯。
・腸胃湿熱の腹満や嘔吐、悪心、下痢に。
方剤例 → 半夏瀉心湯・枳実消痞丸。
・三焦湿熱の潮熱や胸苦しい、口渇、嘔吐などに。
方剤例 → 杏仁滑石湯。

②清熱瀉火
・熱入心包の高熱や意識障害、譫言、煩燥などに。
方剤例 → 牛黄清心丸・安宮牛黄丸。
・火盛迫血妄行の吐血、鼻血に。
方剤例 → 三黄瀉心湯。
・心火上炎の焦燥、不眠、口内炎に。
方剤例 → 朱砂安神丸。
・陰血不足があるときに。
方剤例 → 黄連阿膠湯。
・胃火の消穀善飢、歯痛に。
方剤例 →清胃散。
・肝火胃犯の胃痛や嘔吐、胃酸過多に。
方剤例 → 左金丸。
・肝火上炎による目の充血や腫れ、痛みに。
方剤例 → 当帰竜薈丸。
・胸中積熱・腸中有寒の腹痛、嘔吐に。
方剤例 → 黄連湯。

③清熱解毒
・熱毒の高熱、煩燥、目の充血、腫れ、咽喉の痛み、皮膚化膿症に。
方剤例 → 黄連解毒湯・普済消毒散。
・火毒による目の充血や腫れ、痛みに。

南星なんしょう

南星『中医臨床のための中薬学』より
南星『中医臨床のための中薬学』より

サトイモ科のテンナンショウ属の植物。
性味:辛・苦・温
帰経:肺・肝・脾
効能
①燥湿化痰
・湿痰による咳嗽・胸が苦しい等に。
方剤例 → 導痰湯・白朮丸
・寒痰の咳嗽・痰等に。
方剤例 → 姜桂丸
・肺熱によるもの。
方剤例 → 小黄丸

②祛風解痙
・風痰のめまい・半身不随・顔面神経麻痺などに。
方剤例 → 青州白丸子
・破傷風の症状に。
方剤例 → 玉真散・五虎追風湯

③解毒消腫
・皮膚化膿症・リンパ節腫・蛇の咬傷に。

半夏はんげ

半夏
半夏

サトイモ科のカラスビシャクの塊茎。
性味:辛・温・有毒
帰経:脾・胃
効能:
①燥湿化痰
・湿痰の咳嗽や痰が多い、胸苦しいなどに。
又は痰濁のめまいや動悸、不眠症などに。
方剤例 → 二陳湯・半夏白朮天麻湯。
・上記に熱証を伴うもの。
方剤例 → 温胆湯・清気化痰丸。
・風痰による嘔吐、頭痛、めまいなどに。
方剤例 → 玉壺丸・青州白丸子。

②降逆止嘔
・胃寒や痰飲の嘔吐に。
方剤例 → 小半夏湯・小半夏加茯苓湯。
・胃虚の嘔吐に。
方剤例 → 大半夏湯・乾姜人参半夏丸。
・胃熱の嘔吐に。
方剤例 → 黄連橘皮竹筎半夏湯・温胆湯。

③消痞散結
・痰熱の心窩部の痞えに。
方剤例 → 半夏瀉心湯。
・痰熱の小結胸で心窩部に圧痛があるときに。
方剤例 → 小陥胸湯。

④その他
・老人の虚秘に。
方剤例 → 半硫丸。
・生半夏を、皮膚化膿症に用いる。

遠志おんじ

遠志『中医臨床のための中薬学』より
遠志『中医臨床のための中薬学』より

イトヒメハギの根、又は根皮。
性味:苦・辛・温
帰経:心・腎・肺
効能:
①安神益智・去痰開竅
・心神不寧による動悸や不眠に。
方剤例 → 朱砂安神丸・遠志丸・帰脾湯。
・痰阻心迷の健忘や痴呆など。
方剤例 → 不忘散・安神定志丸・定志丸。

②散鬱化痰
寒痰の咳嗽や痰が多くすっきりしない時に。
また湿痰による皮膚化膿症に。

石菖蒲せきしょうぶ

菖蒲『中医臨床のための中薬学』より
菖蒲『中医臨床のための中薬学』より

セキショウの根茎。
性味:辛・苦・温
帰経:心・脾・胃
効能:
①除痰開竅
痰濁蒙閉心竅の意識障害、譫語などに。
方剤例 → 菖陽瀉心湯・菖蒲鬱金湯

②醒神健脳
心神不寧の怖がりや不眠、健忘、痴呆などに。
方剤例 → 安神定志丸・読書丸

③化湿開胃
・湿困脾胃の食欲不振や腹部の張りなどに。
方剤例 → 菖蒲六味飲
・食欲不振や下痢、腹痛などに。
方剤例 → 開噤散

④その他
難聴や耳鳴りに用いる。

茯神ぶくしん

茯苓
茯苓

マツホドの菌核の茯苓で松根を抱く部分。
効能:寧心安神に働き、不眠や驚きやすい、動悸、不安症に用いる。
方剤例 → 遠志丸。

※茯神は茯苓と、
効果や効能は同じだとされてはいますが、
安神作用は茯苓より優れていると
言われています。

竹茹ちくじょ

竹筎『中医臨床のための中薬学』より
竹筎『中医臨床のための中薬学』より

イネ科淡竹、その他の同属植物の
竹幹の上皮を薄くはぎ去り、
皮下の帯緑白色部を薄く削ったもの。
性味:甘・微寒
帰経:肺・胃・胆
効能:
①清熱滌痰・開欝
・胆虚の熱痰欝結による不眠や不安などに。
方剤例 → 温胆湯。
・痰迷心竅の中風で意識障害や舌の強張り、
言語障害などに。
方剤例 → 滌痰湯。
・肺熱の咳嗽、黄色の痰に。

②清熱止嘔
・胃熱の嘔吐、吃逆に。
方剤例 → 黄連橘皮竹茹半夏湯・竹葉石膏加竹茹芦根湯。
・胃虚狭熱の嘔吐、吃逆に。
方剤例 → 橘皮竹茹湯。

③その他
・妊娠嘔吐や切迫流産に。


<参考文献>
『万病回春解説』 創元社
『万病回春.巻之1-8』 早稲田大学 古典籍総合データベース
『中医臨床のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
『鍼灸医学事典』 医道の日本社

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

下野

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