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下野です。
本日は『諸病の主薬』の記事に参ります。
【原文】
溺血、須用梔子、木通、為主。
虛汗、須用黄耆、白朮、為主。
眩運、須用川芎、天麻、為主。
麻者、是気虚、須用黄耆、人参、為主。
木者、是湿痰死血、須用蒼朮、半夏、桃仁、為主。
<第十九に続く>
【解説】
血尿には、梔子、木通を使用すべし。
虛汗には、黄耆、白朮を使用すべし。
眩暈(めまい)には、川芎、天麻を使用すべし。
麻(蟻走感)は気虚である。黄耆、人参を使用すべし。
木(感覚麻痺)は湿痰、死血である。蒼朮、半夏、桃仁を使用すべし。
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◉栀子
栀子、又は山栀子と言う。
アカネ科のクチナシ。
形が球形の物を山栀子、
細長い物を水栀子と言う。
性味:苦・寒
帰経:心・肺・肝・胃・三焦
効能:
①清熱瀉火
・外感熱病で起こる胸中鬱熱で胸が熱苦しい、不眠などを呈する時に。
方剤例 → 栀子豉湯。
・三焦の実火による高熱、意識障害を呈する時に。
方剤例 → 黄連解毒湯。
・肝火による目赤、疼痛、口苦、胸が苦しい等を呈する時に。
方剤例 → 竜胆瀉肝湯。
②清熱利湿
・湿熱の黄疸に。
方剤例 → 栀子柏皮湯。
・膀胱湿熱の排尿痛、排尿困難を呈する時に。
方剤例 → 五淋散。
③清熱涼血
・血熱による各出血に用いる。
方剤例 → 栀子金花丸。
④清熱解毒
・熱毒による皮膚の化膿症に。
方剤例 → 清上防風湯。
◉木通
アケビ科のアケビ、
及び同属植物の蔓性茎。
性味:苦・寒
帰経:心・肺・小腸・膀胱
効能
①降火利水
・心火が小腸に移り生じる焦燥や不眠、口内炎、排尿痛、排尿困難に。
方剤例 → 導赤散。
・下腿の浮腫や痛み、尿量の減少に。
方剤例 → 木通散。
②宣通血脈
血瘀の無月経、乳汁分泌不全、湿熱の痺症の関節痛や運動障害に。
◉黄芩
シソ科のコガネバナの周皮を除いた根。
内部が充実し、細い円錐形をしたものを条芩、桂芩、尖芩などと称す。
性味:苦・寒
帰経:肺・脾 ・大腸・小腸・胆
効能:
①清熱燥湿
・湿温・暑温初期の湿熱阻滞気機の胸が苦しいや、悪心、嘔吐などに。
・湿が熱より重いとき。 → 黄芩滑石湯。
・熱が湿より重いとき 。→ 甘露消毒丹。
・湿熱中阻の腹満や嘔吐時に。 → 半夏瀉心湯。
・大腸湿熱の下痢や裏急後重に。 → 黄芩湯・葛根黄芩黄蓮湯。
・湿熱黄疸に。
②清熱瀉火・解毒・凉血
・肺熱の咳嗽や呼吸の促迫、黄痰などに。
方剤例 → 清肺湯。
・上焦火熱の高熱や口渇、喉痛などに。
方剤例 → 凉膈散。
・上焦火盛の喉の腫れや痛み、皮膚化膿症に。
・血熱妄行の鼻血や吐血に。
方剤例 → 黄蓮解毒湯・三黄瀉心湯。
③清熱安胎
・妊娠中の蘊熱による下腹痛に。
方剤例 → 当帰散。
◉白朮
キク科のオオバナオケラの根茎。
性味:甘・苦・温
帰経:脾・胃
効能:
①健脾益気
・脾気虚による食欲不振・泥状便・水様便・腹満・倦怠無力感。
方剤例 → 四君子湯・参苓白朮散。
・虚寒の腹痛や冷えに。
方剤例 → 理中湯・附子理中湯。
・脾虚に積滞があり、腹満や腹痛に。
方剤例 → 香砂枳朮丸。
②燥湿利水
・脾虚で水湿が停滞したための浮腫・尿量減少・泥状便・水様便などに。
方剤例 → 防已黄耆湯・啓脾湯。
・虚寒の冷えや寒がるを伴うときに。
方剤例 → 実脾湯・真武湯。
・水飲の滞りによるふらつきやめまいに。
方剤例 → 苓桂朮甘湯。
・湿困脾陽の腹満や下痢に。
方剤例 → 四苓散・五苓散・胃苓湯。
③固表止汗
・表虚の自汗に。
方剤例 → 玉屏風散。
④安胎
・胎動不安・妊娠中の腹痛・性器出血など。
⑤その他
・風湿痺の関節痛に。
◉川芎
セリ科のマルバトウ属植物の根茎。原名は芎藭。
性味:辛・温
帰経:肝・心包・胆
効能:
①活血行気
・気血瘀滞による月経不順・無月経・月経痛など。
方剤例 → 四物湯。
・肝鬱気滞・血瘀の胸脇痛。
方剤例 → 柴胡疏肝散。
・瘀血痺阻心脈による挟心痛。
方剤例 → 冠心Ⅱ号。
・火毒壅盛の気滞血瘀による皮膚化膿症など。
方剤例 → 透膿散。
・打撲外傷による内出血の腫脹・疼痛。
②祛風止痛
・風寒の頭痛に。
方剤例 → 川芎茶調散。
・風熱の頭痛に。
方剤例 → 川芎散。
・風湿の頭痛に。
方剤例 → 羌活勝湿湯。
・血虚の頭痛に。
方剤例 → 加味四物湯。
・風寒湿痺の関節痛に。
方剤例 → 三痺湯。
◉天麻
ラン科オニノヤガラの根茎の外皮を去り、
湯通しして乾燥させたもの。
性味:微辛・甘・平
帰経:肝
効能:
①平肝熄風・定驚
・肝陽上亢の眩暈や頭痛、ふらつきに。
方剤例 → 天麻鈎藤飲。
・痰濁上擾の眩暈、悪心や嘔吐に。
方剤例 → 半夏白朮天麻湯。
・熱性の痙攣に。
方剤例 → 天麻丸。
②通絡止痛
・風寒湿痺の関節痛や痺れに。
方剤例 → 増損四斤丸・秦艽天麻湯。
・肝腎両虚の手足の無力感や痺れ、麻痺に。
方剤例 → 天麻丸。
◉人参
ウコギ科のオタネニンジンの根。
性味:甘・微温・微苦
帰経:肺・脾
効能
①補気固脱
・大病・久病・大出血・激しい吐瀉などで
元気が虚衰して生じるショック状態で脈が微を呈するときに。
・亡陽で四肢の冷え・自汗などを呈するときに。
方剤例 → 参附湯。
②補脾気
・脾気虚による元気がない・疲れやすい・食欲不振・四肢無力・泥状〜水様便などの症候に。
・気虚下陥による内臓下垂・子宮下垂・脱肛・慢性の下痢などの症候に。
方剤例 → 補中益気湯。
・気虚下陥
元気がない・疲れやすい・動くと息切れがする・
四肢がだるく無力・立ちくらみ・頭痛・眩暈などに。
・気虚発熱
発熱・体の熱感・自汗・悪風・口渇があり熱い飲食を欲する・息切れ・元気がない。
③益肺気
肺気虚による呼吸困難・咳嗽・息切れ(動くと憎悪する)・自汗などの症候に。
方剤例 → 人参蛤蚧散。
④生津止渇
・熱性の気津両傷で高熱・口渇・多汗・元気がない・脈が大で無力などに。
・気津両傷による元気がない・息切れ・口渇・皮膚の乾燥・脈が細で無力などに。
方剤例 → 加減復脈湯。
・消渇証の口渇・多尿に。
⑤安神益智
・気血不足による心神不安の不眠・動悸・健忘・不安感などに。
⑥その他
血虚に対し補血薬と用いて益気生血し、
陽虚に対し補陽薬と使用して益気壮陽し、
補血・壮陽の効果を強める。
正虚の表証や裏実正虚に、
解表薬や攻裏薬とともに少量を使用する。
◉蒼朮
キク科のホソバオケラ、
もしくはシナオケラの根茎。
性味:辛・苦・温
帰経:脾・胃
効能:
①祛風除湿
・風湿痺、寒湿痺の関節痛や肢体の痛みに。
方剤例 → 二朮湯・桂枝加朮附湯。
・湿熱痺の関節痛や腫れ、熱感に。
方剤例 → 二妙散・三妙丸。
②燥湿健脾
・湿困脾胃の腹満や胸苦しい、悪心嘔吐、下痢などに。
方剤例 → 平胃散・胃苓湯。
③散寒解表
・外感風寒の頭痛や発熱、無汗、悪寒などに。
方剤例 → 神朮散。
④除障明目
・夜盲や角膜混濁、白内障などに。
方剤例 → 蒼朮丸。
◉半夏
サトイモ科のカラスビシャクの塊茎。
性味:辛・温・有毒
帰経:脾・胃
効能:
①燥湿化痰
・湿痰の咳嗽や痰が多い、胸苦しいなどに。
又は痰濁のめまいや動悸、不眠症などに。
方剤例 → 二陳湯・半夏白朮天麻湯。
・上記に熱証を伴うもの。
方剤例 → 温胆湯・清気化痰丸。
・風痰による嘔吐、頭痛、めまいなどに。
方剤例 → 玉壺丸・青州白丸子。
②降逆止嘔
・胃寒や痰飲の嘔吐に。
方剤例 → 小半夏湯・小半夏加茯苓湯。
・胃虚の嘔吐に。
方剤例 → 大半夏湯・乾姜人参半夏丸。
・胃熱の嘔吐に。
方剤例 → 黄連橘皮竹筎半夏湯・温胆湯。
③消痞散結
・痰熱の心窩部の痞えに。
方剤例 → 半夏瀉心湯。
・痰熱の小結胸で心窩部に圧痛があるときに。
方剤例 → 小陥胸湯。
④その他
・老人の虚秘に。
方剤例 → 半硫丸。
・生半夏を、皮膚化膿症に用いる。
◉桃仁
バラ科のモモやノモモなどの成熟種子。
性味:苦・甘・平
帰経:心・肝・大腸
効能:
①破瘀行血
・血瘀の無月経や月経痛、腹腔内の腫瘤に。
方剤例 → 桃紅四物湯。
・産後瘀阻の悪露停滞や下腹部痛、下腹の腫瘤等に。
方剤例 → 生化湯。
・蓄血の狂躁状態、下腹部が硬くてはるの症状に。
方剤例 → 抵当湯。
・打撲外傷の内出血や腫れ、痛みに。
方剤例 → 復元活血湯・桃仁湯。
・火毒壅盛の気滞血瘀による肺化膿症や虫垂炎に。
方剤例 → 大黄牡丹皮湯・腸癰湯。
②潤腸通便
・腸燥の便秘に。
方剤例 → 五仁丸・潤腸丸。
③その他
・気逆の咳嗽や胸郭脾痞満に。
方剤例 → 双仁丸。
<参考文献>
『万病回春解説』 創元社
『万病回春.巻之1-8』 早稲田大学 古典籍総合データベース
『中医臨床のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
『鍼灸医学事典』 医道の日本社
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下野