<近日開催予定のイベント>
5月14日:【第三回、学生向け未来の鍼灸師相談会】→ 詳しくはこちら
こんにちは、為沢です。
張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。
今回の傷寒論は弁厥陰病脈証并治 三百七十章。
この章では、厥陰病格陽の証治について詳しく述べております。
・不利、清穀、裏寒外熱、汗出而厥者、通脉四逆湯主之
中焦の陽気が完全に脱し、
食穀を消化できないので精穀下痢をする。
陰寒内盛で陽熱が外に漏れ、陰陽の交流がなされないために
「汗出而厥」が出現している。
この場合は通脈四逆湯で破陰、回陽して陰陽の交流を図り
汗を止めて厥を回復させればよい。
通脉四逆湯
・甘草
基原:マメ科のウラルカンゾウ、
またはその他同属植物の根およびストロン。
甘草の甘平で、脾胃の正薬であり、
甘緩で緩急に働き、補中益気・潤肺祛痰・止咳・
清熱解毒・緩急止痛・調和薬性などの性能を持つ。
そのため、脾胃虚弱の中気不足に用いられる。
また、薬性を調和し百毒を解すので、
熱薬と用いると熱性を緩め
寒薬と用いると
寒性を緩めるなど薬性を緩和し薬味を矯正することができる。
・附子
基原:
キンポウゲ科のカラトリカブト、その他の同属植物の子根。
加工・炮製して利用することが多い。
附子は辛熱壮烈であり、「走きて守らず」で
十二経を通じ、
下焦の元陽(命火)を峻補して裏の寒湿を除き、
皮毛に外達して表の風寒を散じる。
それゆえに亡陽欲脱の身冷肢冷・大汗淋漓・
吐利不止・脈微欲脱てんなどには回陽救逆し、
腎陽不足の陽痿滑精・腰膝冷弱には補火壮陽し、
脾腎陽虚・陰寒内盛の心腹冷痛・吐瀉転筋には温裏散寒し、
陽虚不化水湿の身面浮腫・腰以下種甚には
助陽行水して冷湿を除き、
風寒湿痺の疼痛麻木には祛風散寒止痛し、
陽気不足の外感風寒で
悪寒発熱・脈沈を呈するときは助陽発表する。
このほか、補益薬と用いると
一切の内傷不足・陽気衰弱に使用できる。
・乾薑
基原:ショウガ科のショウガの根茎を乾燥したもの。
古くは皮を去り水でさらした後に晒乾した。
乾姜は生姜を乾燥させてもので
辛散の性質が弱まって
辛熱燥烈の性質が増強され、
無毒であり、温中散寒の主薬であるとともに、
回陽通脈・燥湿消痰の効能をもつ。
陰寒内盛・陽衰欲脱の肢冷脈微、
脾胃虚寒の食少不運・脘腹冷痛・吐瀉冷痢、
肺寒痰飲の喘咳、風寒湿痺の肢節冷痛などに適し、
乾姜は主に脾胃に入り温中寒散する。
提要:
厥陰病格陽の証治について
『現代語訳 宋本傷寒論』訳を使用:
下痢に未消化物を混じ、裏には寒邪があって外には熱証を呈し、
汗が出て手足が厥冷している場合は、通脉四逆湯で治療する。
甘草二両、炙る 附子大きいもの一個、生で用いる。皮を除く、八片に割る 乾薑三両、強壮な人は四両にする。
右の三味を、三升の水で、一升二合になるまで煮て、
滓を除き、二回に分けて温服し、服用後に脈拍が触れるようになれば治癒する。
参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』 績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社
生薬イメージ画像:為沢 画
※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。
為沢