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この傷寒論のシリーズは、
当院の修行生によって毎週、水曜日の早朝に開かれる、
自主的な勉強会におけるメモ・備忘録となります。
古典の専門家によるものではなく、
一から学ぶ者の新鮮な目線を共有出来れば幸いに思います。
3/29(水)
太陽病中篇より
83条 咽喉乾燥者、不可発汗。
84条 淋家、不可発汗、発汗必便血。
85条 瘡家、雖身疼痛、不可発汗、汗出則痙。
86条 衄家、不可発汗、汗出必額上陥、脈急緊、直視、不能眴、不得眠。
87条 亡血家、不可発汗、発汗、則寒慄而振。
88条 汗家、重発汗、必恍惚心乱、小便已陰疼、与禹余糧丸。
これらの条文は、発汗法を用いてはならない具体例を述べている。
順番にみていくと、
咽喉が乾燥している場合、
尿意が頻繁にあり排尿痛や残尿感がある場合(下焦に熱)、
長く皮膚病がある場合(褥瘡など滲出液や膿血を分泌している場合)、
日頃から鼻血を出している人、
失血している人、
汗をかきやすい人(衛気不固→陽気が脱しやすい)は、
発汗させると陰血不足、あるいは陽気不足になってしまう。
86条の「額上陥」とは、
額というよりも頭維穴あたりがくぼんだように見えるということである。
多気多血の足陽明胃経の経穴であり、失血と関連深いのだろう。
87条の「禹余糧丸(うよりょうがん)」は
太陽病下篇にも出てくるようである。
下焦に病位がある場合、
下痢を止める効果があるようである。
89条
病人有寒、復発汗、胃中冷、必吐●。(●:虫へんに尤)
病人に「寒」がある場合に発汗させると
脾胃が冷え、必ず蛔虫を吐くという内容である。
文脈からすると、ここでの「寒」は裏虚の寒だろう。
胃中が冷えている場合には理中丸を用い、
さらに、駆虫剤に分類されている烏梅丸で
脾胃を温めるという方法が、
脈経や医宗金鑑に記されているようである。
90条
本発汗、而復下之、此為逆也、若先発汗、治不為逆、
本先下之、而反汗之為逆、若先下之、治不為逆。
本条文は、表証には発汗法を、下すべき裏証には瀉下法を用いよという、
病位ごとの治療原則について述べられている。
前条までは、発汗してはならない場合について記されていたが、
本条では「発汗すべき場合は発汗法」ということを再度述べて
治療原則を強調していると思われる。
(続く)
参加者:下野、新川、大原、盧