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こんにちは、大原です。
今回は、最近耳にした
「逍遙散」について調べていきたいと思います。
皆さん「加味逍遙散」という漢方薬を
薬局や薬店などで
耳にしたことがあるのではないでしょうか?
結構有名だと思います。
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逍遙散
和解剤の調和肝脾剤に分類される。
組成:柴胡・当帰・白芍・白朮・茯苓 各9g、炙甘草4.5g、煨姜3g、薄荷1g
水煎服。上記の割合で丸薬にし、1日2〜3回、6〜9gずつ服用してもよい。
(この丸薬にしたものを逍遙丸というようです)
効能:疎肝解鬱・健脾和営
主治:肝鬱血虚・脾失健運
肝気鬱血・血虚・脾失健運が混在し、因果関係をもった病態である。
方意:疎肝解鬱・養血柔肝によって肝鬱血虚を改善すると同時に、
脾を健運する必要がある。
本方は四逆散を加減した疎肝養血・理脾の代表的組成になっている。
疎肝解鬱の柴胡が主薬で、鬱滞した肝気を疏通し条達させ、
少量の薄荷が疏散条達の効能を強める。
養血活血の当帰と、養血斂陰の白芍は、
肝の陰血を補充して柔肝し疏泄を調整する。
健脾の白朮・茯苓・炙甘草は脾運を高めて気血生化の源を益し、
苦温の煨姜が脾気を鼓舞する。
全体で肝の陰血を補い肝気を調節し、
気血を調整し肝脾を併治する全面的な用薬になっている。
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さて、組成の中で「煨姜」とあります。
これは、生姜を紙に包んで熱灰中で蒸し焼きにしたものだそうです。
「生姜と比べて辛散の力は劣るが温中止嘔の効能が強く、
胃寒の嘔吐・腹痛・下痢に用いる」とあります。
ちなみに、「煨姜」のように、
生姜はその用い方によって名称が変わるようで、
日本では
乾燥していない生のものを鮮姜、
乾燥したものを生姜あるいは乾生姜(乾姜)とされ、
その他に
焙姜(黒姜ともいい、乾燥したショウガを焙じて炭化させたもの)
といったものがあるそうです。
この逍遙散で、
生姜は脾胃の働きを高める目的がありますので、
その力をより強くするために
生姜を蒸し焼きにする「煨姜」が用いられるのでしょう。
次の ポイントとして、
「逍遙散は四逆散という方剤の加減法である」とありました。
この四逆散について、ざっとみてみましょう。
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四逆散
逍遙散と同じく、和解剤の調和肝脾剤に分類される。
組成:炙甘草・枳実・柴胡・白芍 各6g 水煎服。
主治:
(1)少陰病四逆
(2)肝脾不和
鬱阻された陽気を疏達通暢する。
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逍遙散と四逆散の組成を比較すると、
四逆散から枳実を除き、
当帰、白朮、茯苓 、煨姜、薄荷を加えると逍遙散になります。
四逆散と逍遙散とでは、
柴胡・白芍・炙甘草の三つが共通しています。
方意を確認すると、
主治の(1)少陰四逆、(2)肝脾不和それぞれについて、
以下のように働くようです。
柴胡: (1)気機通暢、(2)疎肝解鬱 →肝気条達
白芍: (1)和営・柔肝、(2)補血柔肝 →肝気条達
炙甘草:(1)和中緩急、(2)諸薬の調和
枳実: (1)行気破滞、(2)脾気の停滞を疏通するとともに柴胡の疏泄を補助
また、芍薬と甘草が入っているため、
芍薬甘草湯としての意味もありますね。
芍薬甘草湯は、「柔肝の基本方剤」とされています。
この「柔肝」とは、
肝の陰血を補充することにより肝気を抑制して柔和にし、
正常に疏泄が行えるようにすることです。
いろいろ見てきましたが、
柔肝の基本方剤である芍薬甘草湯から、
四逆散〜逍遙散への流れが
少し分かったように思います。
さて、この流れが分かってくると、
逍遙散は和解剤に分類されていますが、
補益剤に分類しても良いのでは?
という疑問を個人的には抱きました。
おそらく、方剤の分類は
その用い方によって変わってくるのでしょう。
その用い方の中で、最も代表的なものを
分類として定めているのだと思います。
なので、例えば肝血虚が主である肝鬱を
逍遙散で治す場合もあると思いますが、
その場合、逍遙散は和解剤というよりも
補血剤または補気剤として働くので
補益剤に分類されても良いのかも知れないな、
などと、想像を膨らませました。
参考文献:
『中医臨床のための方剤学』
『中医臨床のための中薬学』 東洋学術出版社
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是非参考文献を読んでみて下さい。