こんにちは、為沢です。
先日、友人と国立国際美術館で
開催中の写真展へ行ってきました。
1960年代〜現代の主に
日本やブエノスアイレスでの
何気ない日常を写し出した作品を展示しており
主にモノクロ写真の出展だったのですが、
味わい深いものが沢山あり楽しめました。
森山大道氏のホームページでも
作品を鑑賞できますので
興味のある方は是非御覧下さい。
今回の傷寒論は弁太陽病脈証并治(上)二十九章。
この章では、傷寒を誤って桂枝湯を服して
転移したものについての随証施治の方法を詳しく説明しております。
弁太陽病脈証并治(上)
二十九章
傷寒脉浮、自汗出、小便數、
心煩、微惡寒、腳攣急、反与桂枝欲攻其表、此誤也。
得之便厥、咽中乾、煩燥、吐逆者、作甘草乾薑湯与之、以復其陽。
若厥愈足溫者、更作芍藥甘草湯与之、其腳白誹伸。
若胃氣不和、譫語者、少与調胃承氣湯。
若重發汗、復加焼鍼者、四逆湯主之。方十六。
甘草乾薑湯方
甘草四兩、炙 乾薑二兩
右二味、以水三升、煮取一升五合、去滓、分溫再服。
芍藥甘草湯方
白芍藥 甘草各四両
右二味、以水三升、煮取一升五合、去滓、分溫再服。
調胃承氣湯方
大黄四兩、去皮、清酒洗 甘草二兩、炙 芒消半升
右三味、以水三升、煮取一升、去滓、内芒消、更上火微煮令沸、少少溫服之。
四逆湯方
甘草二兩、炙 乾薑一兩半 附子一枚、生用、去皮、破八片
右三味、以水三升、煮取一升二合、去滓、分溫再服。
強人可大附子一枚、乾薑三兩。
和訓:
傷寒脉浮に、自汗出で、小便数に、
心煩、微かに悪寒し、脚攣急するに、
反って桂枝を与えて其の表を攻めんと欲するは、此れ誤りなり。
之を得れば便ち厥し、咽中乾き、
煩燥、吐逆するものは、甘草乾薑湯を作り之を与え、
以て其の陽を復す。若し厥愈え足溫かなる者は、
更に芍藥甘草湯を作り之を与うれば、其の脚即ち伸ぶ。
若し胃気和せず、譫語する者は、少し調胃承気湯を与う。
若し重ねて発汗し、復た焼鍼を加うる者は、四逆湯之を主る。方十六。
甘草乾薑湯方
甘草四兩、炙る 乾薑二兩
右二味、水三升を以て、煮て一升五合を取り、滓を去り、分かち溫め再服す。
芍藥甘草湯方
白芍藥 甘草各四兩、炙る
右二味、水三升を以て、煮て一升五合を取り、滓を去り、分かち溫め再服す。
調胃承氣湯方
大黄四兩、皮を去る、清酒にて洗う 甘草二兩、炙る 芒消半升
右三味、水三升を以て、煮て一升を取り、滓を去り、芒消を内れ、更に火に上せ微かに煮て沸せしめ、少少之を溫服す。
四逆湯方
甘草二兩、炙る 乾薑一兩半 附子一枚、生で用う、皮を去る、八片に破る
右三味、水三升を以て、煮て一升二合を取り、滓を去り、分かち溫め再服す。
強き人は大附子一枚、乾薑三兩なるべし。
・傷寒脉浮、自汗出、小便數、心煩、
微惡寒、腳攣急、反与桂枝欲攻其表、此誤也。
傷寒であり、脈が浮、自汗の時点では桂枝湯証であるが、
小便が頻回、胸中の煩悶感、軽い悪寒、
脚がひきつるなどの症状がある場合は
桂枝湯証に当たらないため、
これに桂枝湯を与えるとことは誤った治療方法である。
・得之便厥、咽中乾、煩燥、吐逆者、
作甘草乾薑湯与之、以復其陽。
もし、桂枝湯を与えると厥逆となり、咽中が乾き、煩燥、吐逆する者は、
甘草乾薑湯を与え、陽気の回復を図るようにする。
・若厥愈足溫者、更作芍藥甘草湯与之、其腳白誹伸。
甘草乾薑湯により、厥逆の症状が治り、足が温もって、
続けて芍薬甘草を与えれば、脚も自然に伸びてくる。
・若胃気不和、譫語者、少与調胃承氣湯。
もし胃気が不和になり、譫語を発するのであれば、
調胃承気湯をわずかに与える。
・若重発汗、復加焼鍼者、四逆湯主之。
もし、発汗法や焼鍼法を何度も行い、
更に汗をかかせた時は四逆湯を与えれば良い。
方義
甘草乾薑湯
・甘草
甘草の甘平で、脾胃の正薬であり、
甘緩で緩急に働き、補中益気・潤肺祛痰・止咳・
清熱解毒・緩急止痛・調和薬性などの性能を持つ。
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・乾薑
乾薑は生薑を乾燥させたもので、
辛散の性質が弱まって辛熱燥烈の性質が増強されており、
温中散寒の主薬であるとともに、
回陽通脈・燥湿消痰の効能をもち、温肺化飲にも働く。
・甘草乾薑湯について
甘草乾薑湯は、脾の陽気を回復させる基本処方で、
附子を用いず乾薑を用いるのは、
腎陽ではなく脾陽を回復させるためであり、
もし附子を用いて急速に腎陽を補えば陰血を損なう恐れがある。
甘草を乾薑の倍量用いるのは、脾を保護する為である。
芍藥甘草湯
・白芍藥
白芍藥は苦酸・微寒で、
酸で収斂し苦涼で泄熱し、
補血斂陰・柔肝止痛・平肝の効能を持ち、
諸痛に対する良薬である。
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・甘草
甘草の甘平で、脾胃の正薬であり、
甘緩で緩急に働き、補中益気・潤肺祛痰・止咳・
清熱解毒・緩急止痛・調和薬性などの性能を持つ。
・芍藥甘草湯について
芍藥甘草湯は柔肝の基本処方である。
柔肝とは、肝の陰血を補充することにより肝気を抑制して柔和にし、
正常に疏泄が行えるようにすることである。
白芍藥は肝血を補い肝陰を収斂し、柔肝・平肝・緩急止痙する。
甘草は益脾生津し、緩急止痛・止痙する。
両薬を配合することにより、滋陰平肝・緩急止痛・止痙の効果が強まり
肝の陰血を滋補して肝気をしずめ、
脾の気陰を補って肝気の侵害を受けないよう防止することができる。
調胃承氣湯
・大黄
大黄は苦寒沈降し気味ともに厚く、
「走きて守らず」で下焦に直達し、
胃腸の積滞を蕩滌するので、
陽明腑実の熱結便秘・壮熱神昏に対する要薬であり
攻積導滞し瀉熱通腸するため、
湿熱の瀉痢・裏急後重や
食積の瀉痢・大便不爽にも有効である。
・
・甘草
甘草の甘平で、脾胃の正薬であり、
甘緩で緩急に働き、補中益気・潤肺祛痰・止咳・
清熱解毒・緩急止痛・調和薬性などの性能を持つ。
・芒消
芒消は鹹苦・寒で、
鹹で軟堅し苦で降下し寒で清熱し、
瀉熱通便・潤燥軟堅の効能をもち、
胃腸三焦の実熱を蕩滌し燥屎を除去する。
・調胃承気湯について
大承気湯(陽明病腑実証に用いる寒下剤)
から行気の枳実・厚朴を除き、
和中調胃の炙甘草を加えたもので、
熱結を攻下する大黄・芒消の峻猛性を甘草で緩和している。
大・小承気湯より瀉下の力が緩やかで、
燥・実が主体の軽症に適する。
四逆湯
・甘草
甘草の甘平で、脾胃の正薬であり、
甘緩で緩急に働き、補中益気・潤肺祛痰・止咳・
清熱解毒・緩急止痛・調和薬性などの性能を持つ。
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・乾薑
乾薑は生薑を乾燥させたもので、
辛散の性質が弱まって辛熱燥烈の性質が増強されており、
温中散寒の主薬であるとともに、
回陽通脈・燥湿消痰の効能をもち、温肺化飲にも働く。
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・附子
附子は辛熱壮烈であり、
「走きて守らず」で十二経を通じ、
下焦の元陽(命火)を峻補して裏の寒湿を除き、
皮毛に外達して表の風寒を散じる。
・四逆湯について
心・腎・脾の陽気が衰微した
陰寒独盛の重症のものに用いる回陽救逆剤である。
大辛大熱の附子は腎陽を温補する第一の要薬であり、
十二経を通行して温陽逐寒し、
生用するとより速やかに内外を通達する。
同じく大辛大熱の乾薑は、中焦脾胃を温補して
裏寒を除き運化を回復させ、附子を助けて陽気を振発させる。
甘温の炙甘草は温中益気に働き、
附子の毒性を弱めるほか、附子・乾薑の辛烈の性質を緩和する。
全体で陰寒を除き陽気を回復し、厥逆を改善する効果が得られる。
提要:
傷寒を誤って桂枝湯を服して転移したものについての随証施治の方法。
訳:
傷寒の病に罹って脉が浮となり、
自汗が出て、小便頻数、イライラ、軽い悪寒があって、
両下肢がひきつれて伸ばしにくいのに、
反って桂枝湯を用いて発汗させるのは、誤治である。
桂枝湯で発汗させると手足は逆冷し、
咽喉の乾燥感、煩燥して不安、嘔吐、ゲップやしゃっくりが現れるが
この場合は甘草乾姜湯を投与し、患者の陽気の回復をはかる。
服薬してからもし逆冷した手足が温かくなるなら、
今度は芍薬甘草湯を投与して、
患者の陰気の回復をはかれば、両下肢は自在に伸びるようになる。
もし胃気の調和が失われて譫語が出現するなら、
少量の調胃承気湯を服用させてよい。
たび重なる発汗や、焼鍼を用いた誤治によって
亡陽に至った場合は、四逆湯で治療する。
処方を記載。第十六法。
甘草乾薑湯方
甘草四兩、炙る 乾薑二兩
右の二味を、三升の水で、一升五合になるまで煮て、滓を除き、二回に分けて温服する。
芍藥甘草湯方
白芍藥 甘草各四兩、炙る
右の二味を、三升の水で、一升五合になるまで煮て、滓を除き、二回に分けて温服する。
調胃承氣湯方
大黄四兩、皮を除く、清酒で洗う 甘草二兩、炙る 芒消半升
右の三味は、三升の水で、一升になるまで煮て、
滓を除き、芒消を入れてから、さらに微火で煎じて煮たたせ、少量をを温服する。
四逆湯方
甘草二兩、炙る 乾薑一兩半 附子一個、生で用いる、皮を除く、八片に割る
右の三味を、三升の水で、一升二合になるまで煮て、
滓を除き、二回に分けて温服する。強壮な人では附子は一個、乾薑は三兩にする。
参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』 績文堂
『薬膳 素材辞典』 源草社
『中医臨床家のための方剤学』
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
為沢