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月と雲
月と雲

下野です。
今回も引き続き「諸病の主薬」になります。


【原文】
消食積、須用麦芽、神麹、為主。
消肉積、須用山査、草果、為主。
消酒積、須用黄連、乾葛、烏梅、為主。
消冷積、須用巴豆、為主。
消熱積、須用大黄、為主。

<第十に続く>


【解説】
食積を消すには、麦芽、神麹を使用すべし。

肉積を消すには、山査、草果を使用すべし。

酒積を消すには、黄連、乾葛(葛根)、烏梅を使用すべし。

冷積を消すには、巴豆を使用すべし。

熱積を消すには、大黄を使用すべし。

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◉麦芽

麦芽『中医臨床のための中薬学』より
麦芽『中医臨床のための中薬学』より

イネ科オオムギの発芽したもみ。
性味:甘・平
帰経:脾・胃
効能:
①健脾開胃・行気消食
・食積の腹満に。
・脾胃の虚弱による食欲不振に。

②舒肝
肝気鬱滞の胸脇の張りや曖気などに。

③回乳
乳汁の鬱滞による乳房の脹痛や
授乳を中止せざるおえない状況に。

神麹しんきく

神麹『中医臨床のための中薬学』より
神麹『中医臨床のための中薬学』より

米や小麦を酵母菌で発酵させたもの。
一般的に麹(こうじ)と呼ばれている。
性味:辛・甘・温
帰経:脾・胃
効能:
①消食和胃
・飲食積滞の腹満や、腐臭を伴う曖気・腹痛・下痢に。
方剤例 →保和丸・麹麦枳朮丸。

②その他
・消化しにくい鉱石類を含んだ丸剤に。
方剤例 → 磁朱丸・万氏牛黄清心丸。

山査さんざ

山査『中医臨床のための中薬学』より
山査『中医臨床のための中薬学』より

バラ科サンザシの成熟した果実。
性味:酸・甘・微温
帰経:脾・胃・肝
効能:
①消食化積
・油ものや肉食による食積の腹痛や下痢に。
又は小児の傷乳下痢に。
方剤例 → 保和丸。

②止痢
・細菌性の下痢に。

③破気化瘀
・産後瘀阻の腹痛や悪露の停滞。
又は血瘀の月経痛に。

④消脹散結
・疝気の下腹痛や陰嚢腫大に。

⑤その他
・麻疹の初期や透発が不十分な時に。

草果そうか

草果『中医臨床のための中薬学』より
草果『中医臨床のための中薬学』より

ショウガ科のビャクヅク属植物の
成熟した果実を乾燥させたもの。
性味:辛・大温
帰経:脾・胃
効能:
①散寒燥湿
・寒湿内積による胸腹部の張った痛みに。
方剤例 → 草果飲。
・湿濁鬱伏の腹痛や嘔吐などに。
方剤例 → 草果平胃散。
・湿滞痰飲による頭痛や悪心に。

②除痰截瘧
・脾胃の痰湿鬱伏による瘧疾で、悪寒・下痢・食欲不振など。
方剤例 → 截瘧七宝飲。
・温疫や瘧疾で、不定期的に悪寒と発熱・頭痛・顔面紅潮・口渇などに。
方剤例 → 常山飲・達原飲・柴胡達原飲・清脾飲。

黄連おうれん

黄連
黄連

キンポウゲ科のオウレン属の根茎。
性味:苦・寒
帰経:心・脾・肝・胆・胃・大腸
効能:
①清熱燥湿
・大腸湿熱の下痢や裏急後重に。
方剤例 → 香連丸・芍薬湯・葛根黄笒黄連湯。
・腸胃湿熱の腹満や嘔吐、悪心、下痢に。
方剤例 → 半夏瀉心湯・枳実消痞丸。
・三焦湿熱の潮熱や胸苦しい、口渇、嘔吐などに。
方剤例 → 杏仁滑石湯。

②清熱瀉火
・熱入心包の高熱や意識障害、譫言、煩燥などに。
方剤例 → 牛黄清心丸・安宮牛黄丸。
・火盛迫血妄行の吐血、鼻血に。
方剤例 → 三黄瀉心湯。
・心火上炎の焦燥、不眠、口内炎に。
方剤例 → 朱砂安神丸。
・陰血不足があるときに。
方剤例 → 黄連阿膠湯。
・胃火の消穀善飢、歯痛に。
方剤例 →清胃散。
・肝火胃犯の胃痛や嘔吐、胃酸過多に。
方剤例 → 左金丸。
・肝火上炎による目の充血や腫れ、痛みに。
方剤例 → 当帰竜薈丸。
・胸中積熱・腸中有寒の腹痛、嘔吐に。
方剤例 → 黄連湯。

③清熱解毒
・熱毒の高熱、煩燥、目の充血、腫れ、咽喉の痛み、皮膚化膿症に。
方剤例 → 黄連解毒湯・普済消毒散。
・火毒による目の充血や腫れ、痛みに。

◉葛根

葛根
葛根

マメ科のクズの周皮を除いた根。
性味:甘・辛・凉
帰経:脾・胃
効能:
①解肌退熱
・外感表証の発熱や無汗、頭痛、項背部のこわばりに。
悪寒が強い表寒証:麻黄・桂枝と。
発熱や咽痛が強い表熱証:柴胡・黄笒と。
方剤例 → 葛根湯・柴葛解肌湯。

②透疹
・麻疹初期、もしくは透発が不十分なときに。
方剤例 → 升麻葛根湯。

③生津止渇
・熱病の口渇や消渇に。
方剤例 → 麦門冬飲子。

④昇陽止瀉
・脾虚の泥〜水様便に。
方剤例 → 七味白朮散。
・熱痢に。
方剤例 → 葛根黄笒黄連湯。

烏梅うばい

烏梅『中医臨床のための中薬学』より
烏梅『中医臨床のための中薬学』より

バラ科のウメの未成熟果実を
薫製させたもの。
性味:酸・渋・平
帰経:肝・脾・肺・大腸
効能:
①斂肺止咳
・肺虚の慢性咳嗽に。
方剤例 → 一服散。

②渋腸止瀉
・慢性下痢に。
方剤例 → 固腸丸。

③和胃安蛔
・回虫による腹痛や嘔吐に
方剤例 → 烏梅丸。

④固崩止血
・下血や血尿、性器出血に。

⑤生津止渇
・虚熱による消渇に。
方剤例 → 玉泉丸。
・温熱病の後期の腎陰大虚の消渇に。
方剤例 → 連梅湯。

⑥その他
・破傷風初期や肉芽の過剰形成に。

巴豆はず

巴豆『中医臨床のための中薬学』より
巴豆『中医臨床のための中薬学』より

トウダイグサ科ハズの成熟した種子。
性味:辛・熱・大毒
帰経:胃・大腸
効能:
①峻下寒積
・寒滞食積が腸胃を阻結して腹痛や便秘、四肢の冷え、意識障害などに。
方剤例 → 三物備急丸・走馬湯。

②逐水行水
・水腫実証の腹水や腹満、便秘などに。
・肝硬変の腹水に。
方剤例 → 巴漆丸。
・寒実結胸の胸苦しいや痰が詰まる、四肢の冷えなどに。
方剤例 → 白散。

③温通袪積
・小児の痰詰まりや便秘などに。
方剤例 → 万応保赤丹。

④解毒療瘡
・皮膚化膿症に。
方剤例 → 疔癰百効丸。

大黄だいおう

大黄
大黄

タデ科のダイオウ属植物。
又は、それらの種間雑種の根茎。
性味:苦・寒
帰経:脾・胃・大腸・肝・心包
効能:
①瀉熱通腸
・胃腸の実熱積滞の便秘や腹痛、高熱、意識障害などに。
方剤例 → 大承気湯・小承気湯・調胃承気湯。
・大腸湿熱の下痢や腹痛、テネスムスなどに。
方剤例 → 芍薬湯。
・食積の下痢や腹満、腹痛に。
方剤例 → 木香檳榔丸・枳実導滞丸。
・寒積の便秘や腹痛、冷えなどに。
方剤例 → 温脾湯・大黄附子湯。

②清熱瀉火・凉血解毒
・火熱上亢の目の充血、喉の痛みや腫れ、歯痛、鼻血など。
方剤例 → 三黄瀉心湯・凉膈散・当帰竜薈丸。
・虫垂炎に。
方剤例 → 大黄牡丹皮湯・闌尾化瘀湯・闌尾清化湯。
・皮膚化膿症に。

③行瘀破積
・血瘀の無月経や産後瘀阻の腹痛に。
方剤例 → 無積丸・下瘀血湯。
・打撲外傷の腫れや痛みに。
方剤例 → 復元活血湯・治打撲一方・通導散。

④清化湿熱
・湿熱の黄疸に。
方剤例 → 茵蔯蒿湯。
・水熱互結の結胸による心窩部〜下腹の痛み、発熱などに。
方剤例 → 大陥胸湯。
・腹水の腹満や便秘、尿量の減少に。
方剤例 → 已椒藶黄丸。


<参考文献>
『万病回春解説』 創元社
『万病回春.巻之1-8』 早稲田大学 古典籍総合データベース
『中医臨床のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
『本草綱目』 国立国会図書館デジタルコレクション
『東方栄養新書』 メディカルユーコン

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

下野

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