この傷寒論のシリーズは、
当院の修行生によって毎週、水曜日の早朝に開かれる、
自主的な勉強会におけるメモ・備忘録となります。
古典の専門家によるものではなく、
一から学ぶ者の新鮮な目線を共有出来れば幸いに思います。
12/21(水)
太陽病中篇より
(62条)発汗後、身疼痛、脈沈遅者、
桂枝加芍薬生薑各一両人参三両新加湯主之。
本条から、しばらく発汗後の不調について述べられている。
62条では、表証を治すために発汗させた後に、
体に疼痛が現われ、沈遅の脉を呈している場合についてである。
脉の状態から、沈で裏証、遅でこの場合は血不足を示すとされている。
すなわち、ここでの身疼痛とは、
太陽病の特徴である表邪による気血の停滞によるものではなく、
表の気血の不足によるものである。
裏の血不足が表の症状にあらわれている。
麻黄湯証の疼痛は、項背がこわばったり
関節痛といった、動きが固くなるようなイメージであるが、
この条文の疼痛は筋肉痛のようなものだろう。
ここで用いられる桂枝加芍薬生薑各一両人参三両新加湯は
気血を補い陽気を宣通させるもので、桂枝湯がベースである。
しかし、桂枝湯よりもおよそ2倍の量の水を用いて作られるとあり、
桂枝湯よりも陽分の力が強くなると思われる。
(63条)発汗後、不可更行桂枝湯、汗出而喘、無大熱者、
可与麻黄杏仁甘草石膏湯主之。
本条では、表証を治すべく発汗法を用いたが
汗が出て喘し、大きな熱は無いが
やや熱が出ている状態になった場合である。
大きな熱が無いことから陽明病では無いことが窺える。
また「喘」すなわち呼吸困難があることから
肺気がなんらかの影響で宣発・粛降されず、気逆をおこしていると思われる。
肺に熱邪が襲っていることから
これらの症状が現れているとする見方が有力である。
すなわち麻黄杏仁甘草石膏湯で肺熱を取り除くことによって
喘息や汗が自然と治るという考え方である。
個人的に、本条の症状は
温病の初期や夏カゼに見られる症状でもあるように思う。
温病にかかりやすい体質を考えた場合、
何らかの原因で湿熱がこもっている印象がある。
その場合、この麻黄杏仁甘草石膏湯で
肺熱を取り除くだけで良いのかどうか疑問である。
次回続きを行う。
参加者:下野、新川、大原、盧