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下野です。
今回は「諸病の主薬」の第八回になります。
【原文】
瀉曲屈之火、用梔子、為主。
瀉無根之火、用玄参、為主。
内傷元気、用黄耆、人参、甘草、為主。
脾胃虚弱、用白朮、山薬、為主。
<第九に続く>
【解説】
三焦、及び火邪の火を屈曲下行させて、
小便より泄させるには、梔子を使用すべし。
虚火を瀉すには、玄参を使用すべし。
内から気を傷には、
黄耆、人参、甘草を使用すべし。
脾胃虚弱には、白朮、山薬を使用すべし。
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◉栀子
栀子、又は山栀子と言う。
アカネ科のクチナシ。
形が球形の物を山栀子、
細長い物を水栀子と言う。
性味:苦・寒
帰経:心・肺・肝・胃・三焦
効能:
①清熱瀉火
・外感熱病で起こる胸中鬱熱で胸が熱苦しい、不眠などを呈する時に。
方剤例 → 栀子豉湯。
・三焦の実火による高熱、意識障害を呈する時に。
方剤例 → 黄連解毒湯。
・肝火による目赤、疼痛、口苦、胸が苦しい等を呈する時に。
方剤例 → 竜胆瀉肝湯。
②清熱利湿
・湿熱の黄疸に。
方剤例 → 栀子柏皮湯。
・膀胱湿熱の排尿痛、排尿困難を呈する時に。
方剤例 → 五淋散。
③清熱涼血
・血熱による各出血に用いる。
方剤例 → 栀子金花丸。
④清熱解毒
・熱毒による皮膚の化膿症に。
方剤例 → 清上防風湯。
◉玄参
ゴマノハグサ属の根部。
性味:苦・鹹・寒
帰経:肺・胃・腎
効能:
①滋陰涼血・除煩
・温熱の邪が営血に入ったことによる、夜間の熱、意識障害、斑疹等。
方剤例 → 清営湯・清宮湯・化斑湯。
②滋陰降火・解毒
・陰虚火旺の咽喉の痛みや腫れ、目の充血、のぼせ、喀血等。
方剤例 → 養陰清肺湯・両地湯。
・熱毒の咽の痛みや腫れに。
方剤例 → 玄参升麻湯・玄参解毒湯。
・血栓閉塞性脈管炎の壊死期に。
方剤例 → 四妙勇安湯。
③清熱軟堅
・頸部リンパ節腫や皮下結節に。
方剤例 → 消瘰丸。
④潤腸通便
・腸燥便秘に。
方剤例 → 増液湯。
◉黄耆
マメ科のキバナオウギ、ナイモウオウギの根。
性味:甘、温
帰経:脾・肺
効能
①補気昇陽
・脾肺気虚で元気がない・易疲労・食欲不振など。
方剤例 → 参耆膏。
②補気摂血
・気不摂血による血便・不正性器出血など。
方剤例 → 帰脾湯。
③補気行滞
・血痺による肢体の痺れ・運動障害・半身不随など。
方剤例 → 黄耆桂枝五物湯。
④固表止汗
・表虚の自汗・盗汗など。
方剤例 → 玉屏風散。
⑤托瘡生肌
・気血不足による皮膚化膿症の化膿が遅い・潰瘍を形成するなど。
方剤例 → 黄耆内托散・帰耆建中湯など。
⑥利水消腫
・気虚の水湿不運による浮腫・尿量減少など。
方剤例 → 防已黄耆湯。
◉人参
ウコギ科のオタネニンジンの根。
性味:甘・微温・微苦
帰経:肺・脾
効能
①補気固脱
・大病・久病・大出血・激しい吐瀉などで
元気が虚衰して生じるショック状態で脈が微を呈するときに。
・亡陽で四肢の冷え・自汗などを呈するときに。
方剤例 → 参附湯。
②補脾気
・脾気虚による元気がない・疲れやすい・食欲不振・四肢無力・泥状〜水様便などの症候に。
・気虚下陥による内臓下垂・子宮下垂・脱肛・慢性の下痢などの症候に。
方剤例 → 補中益気湯。
・気虚下陥
元気がない・疲れやすい・動くと息切れがする・
四肢がだるく無力・立ちくらみ・頭痛・眩暈などに。
・気虚発熱
発熱・体の熱感・自汗・悪風・口渇があり熱い飲食を欲する・息切れ・元気がない。
③益肺気
肺気虚による呼吸困難・咳嗽・息切れ(動くと憎悪する)・自汗などの症候に。
方剤例 → 人参蛤蚧散。
④生津止渇
・熱性の気津両傷で高熱・口渇・多汗・元気がない・脈が大で無力などに。
・気津両傷による元気がない・息切れ・口渇・皮膚の乾燥・脈が細で無力などに。
方剤例 → 加減復脈湯。
・消渇証の口渇・多尿に。
⑤安神益智
・気血不足による心神不安の不眠・動悸・健忘・不安感などに。
⑥その他
血虚に対し補血薬と用いて益気生血し、
陽虚に対し補陽薬と使用して益気壮陽し、
補血・壮陽の効果を強める。
正虚の表証や裏実正虚に、
解表薬や攻裏薬とともに少量を使用する。
◉甘草
マメ科のウラル甘草の根。
性味:平・甘
帰経:十二経
効能
①補中益気
・脾胃虚弱で元気がないや無力感、食欲低下、泥状便などに。
方剤例 → 四君子湯・参苓白朮散・保元湯。
・気陰不足の動悸や汗が止まらない、脈が結代などに。
方剤例 → 生脈散・炙甘草湯・加減復脈湯。
②潤肺・祛痰止咳
・風寒による咳嗽に。
方剤例 → 三拗湯。
・風熱の咳嗽に。
方剤例 → 桑菊散。
・寒痰の咳嗽に。
方剤例 → 苓甘姜味辛夏仁湯・苓甘五味姜辛湯・小青竜湯。
・熱痰の咳嗽に。
方剤例 → 定喘湯・五虎湯。
③緩急止痛
・腹痛や四肢の痙攣痛に。
方剤例 → 芍薬甘草湯・桂枝加芍薬湯・四逆散。
④清熱解毒
・喉の腫れや痛みに。
方剤例 → 甘草湯・桔梗湯・甘草桔梗湯。
・皮膚化膿症に。
方剤例 → 銀花甘草湯。
⑤調和薬性
・方剤に配合して、性質の異なる生薬を調和したり、
薬性の偏りや毒性、薬力を緩和にする。
⑥その他
・熱淋の排尿痛や困難に。
方剤例 → 導赤散。
◉白朮
キク科のオオバナオケラの根茎。
性味:甘・苦・温
帰経:脾・胃
効能:
①健脾益気
・脾気虚による食欲不振・泥状便・水様便・腹満・倦怠無力感。
方剤例 → 四君子湯・参苓白朮散。
・虚寒の腹痛や冷えに。
方剤例 → 理中湯・附子理中湯。
・脾虚に積滞があり、腹満や腹痛に。
方剤例 → 香砂枳朮丸。
②燥湿利水
・脾虚で水湿が停滞したための浮腫・尿量減少・泥状便・水様便などに。
方剤例 → 防已黄耆湯・啓脾湯。
・虚寒の冷えや寒がるを伴うときに。
方剤例 → 実脾湯・真武湯。
・水飲の滞りによるふらつきやめまいに。
方剤例 → 苓桂朮甘湯。
・湿困脾陽の腹満や下痢に。
方剤例 → 四苓散・五苓散・胃苓湯。
③固表止汗
・表虚の自汗に。
方剤例 → 玉屏風散。
④安胎
・胎動不安・妊娠中の腹痛・性器出血など。
⑤その他
・風湿痺の関節痛に。
◉山薬 (薯蕷)
ヤマノイモ科ナガイモの外皮を去った根茎。
性味:甘・平
帰経:脾・肺・腎
効能:
①補脾止瀉
・脾虚の食欲不振や元気がない、泥状便、水様便等に。
方剤例 → 参苓白朮散・啓脾湯。
②養陰扶脾
・脾陰虚の食欲不振や食後の脹腹、口の乾き等に。
方剤例 → 一味薯蕷飲・珠玉二宝粥・慎柔養真湯・玉液湯・資生湯。
③養肺益陰・止咳
・肺虚の慢性咳嗽や呼吸困難に。
④補腎固精・縮尿・止帯
・腎虚の遺精に。
方剤例 → 六味地黄丸・八味地黄丸・知柏地黄丸・左帰飲・右帰飲。
・腎虚の頻尿に。
方剤例 → 縮泉丸。
・腎虚の白色帯下に。
方剤例 → 秘元煎。
<参考文献>
『万病回春解説』 創元社
『万病回春.巻之1-8』 早稲田大学 古典籍総合データベース
『中医臨床のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
『本草綱目』 国立国会図書館デジタルコレクション
『東方栄養新書』 メディカルユーコン
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下野