この傷寒論のシリーズは、
当院の修行生によって毎週、水曜日の早朝に開かれる、
自主的な勉強会におけるメモ・備忘録となります。
古典の専門家によるものではなく、
一から学ぶ者の新鮮な目線を共有出来れば幸いに思います。
12/7(水)
太陽病中篇より
(51条)脈浮者、病在表、可発汗、宜麻黄湯。
(52条)脈浮而数者、可発汗、宜麻黄湯。
どちらの条文も、病が表にあるときには
脈は浮脈となり、発汗法を用いるべきであるという内容である。
麻黄湯が「宜し」となっているのは、
必ずしも麻黄湯ではなく、場合によっては桂枝湯などを用いることも
念頭におかなければならないということだろう。
(後に、発汗すべき病証についてまとめられている箇所もあり
その中の条文には桂枝湯を用いることが良いとある。)
(53条)病常自汗出者、此為栄気和、栄気和者、外不諧、
以衛気不共栄気諧和故爾、以栄行脈中、衛行脈外。
復発其汗、栄衛和則愈、宜桂枝湯。
この条文の内容は、
営気が整っていて、かつ自汗がある場合は、
衛気が弱くなっているので
衛気と営気を調和させるように発汗させるべきであると
記されている。
営気は脈中を、衛気は脈外をめぐるという
営衛の関係についても記されている。
(54条)病人蔵無他病、時発熱、自汗出、而不愈者、
此衛気不和也、先其時発汗則愈宜桂枝湯。
臓、すなわち裏に病が無い場合、
ときどき発熱して自汗が出る場合は、
これも前条と同様に
営衛不和が発生していると考える。
しかし、前条とは異なり「発熱」がある。
ある解説によると、
これは衛気が鬱滞して営気を抑圧するために
熱が発生しているということのようである。
すなわち前条では衛弱についてであったが
本条は衛強について記されているといえる。
ちなみに、「発熱」があるため、実際には陽明病のようにもみえる。
また、臓には問題は無い場合と書かれているが、
これを放置していると
三焦の水液に発生している熱邪が裏を脅かし、
少陰の病に発展してしまうという解説もある。
少陰病の条文のはじめに、この内容を追試する記述がある。(301条)
この条文の内容は、
表証かつ裏証(少陰病)がある場合には
表裏どちらも調えるべきであるとするものである。
麻黄細辛附子湯を用いているが、
表裏、さらにはそれらをつなぐ絡脈をも
調えているとする考え方があり興味深い。
(55条)傷寒、脈浮緊、不発汗、因致衄者、麻黄湯主之。
46条、47条でも鼻血についての記述があったが、
本条は、麻黄湯証で鼻血が出る場合にも麻黄湯が主るという内容である。
(56条)傷寒、不大便六七日、頭痛、有熱者、与承気湯、
其小便清者、知不在裏、仍在表也、当須発汗、若頭痛者必衄、宜桂枝湯。
傷寒で便秘がある場合について、
頭痛や発熱がある場合には陽明病であると診て、
承気湯を与えることが普通であると思われる。
しかし、一見陽明病のようでも
小便が清とあり、裏熱は存在していないならば
これは陽明病ではない。
病は表にあり、当然発汗すべきである。
麻黄湯ではなく桂枝湯であるのは、
これも状況によって使い分けよということだろう。
表証で便秘があるのは、正気が不足しているからかも知れない。
その場合、中気を補う桂枝湯の方が
より効果的であるということだろう。
参加者:下野、新川、大原、盧