この傷寒論のシリーズは、
当院の修行生によって毎週、水曜日の早朝に開かれる、
自主的な勉強会におけるメモ・備忘録となります。
古典の専門家によるものではなく、
一から学ぶ者の新鮮な目線を共有出来れば幸いに思います。
11/30(水)
太陽病中篇より
(49条)
脈浮数者、法当汗出而愈。
若下之、身重、心悸者、不可発汗、当自汗出乃解。
所以然者、尺中脈微、此裏虚。
須表裏実、津液自和、便自汗出愈。
(50条)
脈浮緊者、法当身疼痛、宜以汗解之。
仮令尺中遅者、不可発汗。
何以知然、以栄気不足、血少故也。
(49条、50条)
太陽病を患った場合、
49条では裏虚がある場合、
50条では血不足がある場合について述べられ、
それぞれ発汗させてはならないと記されている。
49条では、太陽病で、下した場合に、
身重(体がしんどい)や心悸という症状がみられ、
全体では浮数の脈であるが、
尺中の脈が微弱となっている。
浮数の脈は表熱証をあらわすとされているが、
数脈だから必ずしも熱証をあらわすとはいいきれない。
正気が表で外邪(寒熱にかかわらず)と闘争する場合に
数脈を呈したり、
脈が細数であれば、それは正気の虚をあらわすこともあるからである。
尺中の脈が微弱とあるが、
これは裏虚があることを示しており、
発汗させてしまうと津液不足を招いてしまう。
条文では、表裏とも充実して津液が和せば、
自ら汗をかいて癒えるとある。
桂枝湯を用いて癒えなければ、
裏虚を補う効果がより強い小建中湯を用いるとする解説もある。
50条では、尺中の脈が遅の場合は
営気不足、すなわち血不足をあらわすとされている。
さて、尺中の脈が遅とはどのような意味だろうか?
一般的に遅脈とは一息4至未満の遅い脈をいうが、
太陽病を患っているので基本的には脈浮であり、
ここでは一般的な遅脈をいっているとは考えにくい。
これは、尺位の脈が微弱かつ沈んで触れにくく、
寸位や関位に比べて尺中部の脈をとらえるのが
遅く感じるということかも知れない。
尺部とは腹部をいうのではないかという意見もあり、
他にも解釈があるのかも知れない。
参加者:林、下野、新川、大原、盧