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下野です。
今回は「諸病の主薬」の第六回になります。
【原文】
発黄、須用茵蔯、梔子、為主。
中寒陰証、須用附子、乾姜、為主。
中暑、須用香薷、扁豆、為主。
中湿、須用蒼朮、白朮、為主。
<第七に続く>
【解説】
黄疸には、
茵蔯、梔子を使用すべし。
寒邪による陰証(悪寒や水様下痢など)には、
附子、乾姜を使用すべし。
暑邪の病証(意識障害や発熱、嘔吐など)には、
香薷、扁豆を使用すべし。
湿邪の病証(一身の疼痛や下痢、頭痛など)には、
蒼朮、白朮を使用すべし。
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◉茵陳
キク科カワラヨモギの幼苗。
性味:苦・微寒
帰経:脾・胃・肝・胆
効能:
①清熱除湿・退黄
・湿熱燻蒸の黄疸で尿が濃く少量、腹満、発熱などに。
方剤例 → 茵陳蒿湯・胆道排石湯。
・肝胆の湿熱で易怒、胸脇痛、口が苦いなどに。
方剤例 → 清胆利湿湯・清胆瀉火湯。
・脾胃の湿熱で腹満や泥〜水様便、浮腫などに。
方剤例 → 茵陳五苓散。
・寒湿による黄疸で冷えや、気力が無いなどに。
方剤例 → 茵陳四逆湯。
・暑湿や湿温の初期にも。
方剤例 → 甘露消毒丹・一加減正気散。
・湿熱内蘊の湿疹の痒みや滲出などに。
②その他
・軽い疏肝作用があるため、陰虚で強い疏肝が出来ないときに。
◉栀子
栀子、又は山栀子と言う。
アカネ科のクチナシ。
形が球形の物を山栀子、
細長い物を水栀子と言う。
性味:苦・寒
帰経:心・肺・肝・胃・三焦
効能:
①清熱瀉火
・外感熱病で起こる胸中鬱熱で胸が熱苦しい、不眠などを呈する時に。
方剤例 → 栀子豉湯。
・三焦の実火による高熱、意識障害を呈する時に。
方剤例 → 黄連解毒湯。
・肝火による目赤、疼痛、口苦、胸が苦しい等を呈する時に。
方剤例 → 竜胆瀉肝湯。
②清熱利湿
・湿熱の黄疸に。
方剤例 → 栀子柏皮湯。
・膀胱湿熱の排尿痛、排尿困難を呈する時に。
方剤例 → 五淋散。
③清熱涼血
・血熱による各出血に用いる。
方剤例 → 栀子金花丸。
④清熱解毒
・熱毒による皮膚の化膿症に。
方剤例 → 清上防風湯。
◉附子
キンポウゲ科のハナトリカブトの塊根。
性味:大熱・大辛・有毒
帰経:十二経
効能:
①回陽救逆
・陽気衰微の陰虚内盛、
もしくは大汗、激しい下痢、嘔吐などによる亡陽虚脱で
顔面蒼白や四肢の冷え、脈微弱を呈すときに。
方剤例 → 四逆湯・通脈四逆湯・白通湯。
・陽衰の衛表不固で自汗が止まらない。
方剤例 → 耆附湯。
・大出血による亡陽虚脱に。
方剤例 → 参附湯・参附竜牡湯。
②補陽益火
・腎陽虚の腰や膝が怠く無力で、四肢の冷えや性機能低下や頻尿など。
方剤例 → 右帰飲・右帰丸・八味地黄丸。
・脾腎陽虚の腹が冷え痛む、泥〜水様便などに。
方剤例 → 附子理中湯。
③温陽利水
・腎陽虚の浮腫や腰痛、腰が重怠い、尿少量などに。
方剤例 → 真武湯・牛車腎気丸。
・脾陽虚の浮腫や腹部の膨満感、泥状便などに。
方剤例 → 実脾飲。
④散寒止痛
・風寒湿痺の関節痛、痺れ、冷えなどに。
方剤例 → 甘草附子湯。
・陽虚の風寒表証で、悪寒や発熱があるが脈は沈の時に。
方剤例 → 麻黄附子細辛湯。
◉乾姜
ショウガ科のショウガの根を乾燥したもの。
性味:大辛・大熱
帰経:心・肺・脾・胃
効能:
①温中散寒
・脾胃虚寒の腹部冷痛、腹鳴、未消化下痢、嘔吐などに。
方剤例 → 理中湯(人参湯)。
②回陽通脈
・陽気衰微、陰寒内盛の亡陽虚脱で、
四肢の冷えや脈が微弱の時に。
方剤例 → 四逆湯・通脈四逆湯。
・脾腎陽虚の未消化下痢、四肢の冷え、脈が微弱で、
虚陽上浮によるのぼせ、煩燥に。
方剤例 → 白通湯。
③温肺化痰・化飲
・肺の寒飲による咳嗽や呼吸困難、希薄な痰、背部冷感などに。
方剤例 → 苓甘五味姜辛湯・苓甘姜味辛夏仁湯・小青竜湯。
◉香薷
シソ科のナギナタコウジュ属の全草や、
ホソバヤマジソ等のイヌコウジュ属植物。
性味:辛・微温
帰経:肺・脾・胃
効能:
①発汗解表・和中化湿
・夏季に納涼や冷食物により寒邪の外感と同時に湿邪が中焦を損傷。
悪寒・発熱・頭重・腹痛・嘔吐などの症状に。
方剤例 → 香薷飲。
②利水消腫
・顔の浮腫・無汗・尿量減少に。
方剤例 → 薷朮丸。
◉扁豆
マメ科のフジマメの成熟した種。
性味:甘・微温
帰経:脾・胃
効能:
①消暑化湿
・暑邪狭湿の嘔吐や腹満、腹痛、下痢に。
方剤例 → 香薷飲。
②健脾化湿
脾虚湿濁の泥状・水様便、食欲不振等に。
方剤例 → 参苓白朮散。
③解毒和中
・酒や魚介類の中毒による嘔吐や下痢に。
◉蒼朮
キク科のホソバオケラ、
もしくはシナオケラの根茎。
性味:辛・苦・温
帰経:脾・胃
効能:
①祛風除湿
・風湿痺、寒湿痺の関節痛や肢体の痛みに。
方剤例 → 二朮湯・桂枝加朮附湯。
・湿熱痺の関節痛や腫れ、熱感に。
方剤例 → 二妙散・三妙丸。
②燥湿健脾
・湿困脾胃の腹満や胸苦しい、悪心嘔吐、下痢などに。
方剤例 → 平胃散・胃苓湯。
③散寒解表
・外感風寒の頭痛や発熱、無汗、悪寒などに。
方剤例 → 神朮散。
④除障明目
・夜盲や角膜混濁、白内障などに。
方剤例 → 蒼朮丸。
◉白朮
キク科のオオバナオケラの根茎。
性味:甘・苦・温
帰経:脾・胃
効能:
①健脾益気
・脾気虚による食欲不振・泥状便・水様便・腹満・倦怠無力感。
方剤例 → 四君子湯・参苓白朮散。
・虚寒の腹痛や冷えに。
方剤例 → 理中湯・附子理中湯。
・脾虚に積滞があり、腹満や腹痛に。
方剤例 → 香砂枳朮丸。
②燥湿利水
・脾虚で水湿が停滞したための浮腫・尿量減少・泥状便・水様便などに。
方剤例 → 防已黄耆湯・啓脾湯。
・虚寒の冷えや寒がるを伴うときに。
方剤例 → 実脾湯・真武湯。
・水飲の滞りによるふらつきやめまいに。
方剤例 → 苓桂朮甘湯。
・湿困脾陽の腹満や下痢に。
方剤例 → 四苓散・五苓散・胃苓湯。
③固表止汗
・表虚の自汗に。
方剤例 → 玉屏風散。
④安胎
・胎動不安・妊娠中の腹痛・性器出血など。
⑤その他
・風湿痺の関節痛に。
<参考文献>
『万病回春解説』 創元社
『万病回春.巻之1-8』 早稲田大学 古典籍総合データベース
『中医臨床のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
『本草綱目』 国立国会図書館デジタルコレクション
『東方栄養新書』 メディカルユーコン
※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。
下野