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夜の新大阪
夜の新大阪

下野です。
今年も残りわずかですね。
本当に1年アッという間に過ぎてしまいます。

では今回も「諸病の主薬」、第五回になります。


【原文】
懊憹、須用梔子、豆豉、為主。
虚煩、須用竹葉、石膏、為主。
不眠、須用竹茹、枳実、為主。
鼻乾不得眠、須用葛根、芍薬、為主。
発斑、須用玄参、升麻、為主。

<第六に続く>


【解説】
心中懊憹(心中が悶乱している。)には、
梔子、豆豉を使用すべし。

虚火内擾には、
竹葉、石膏を使用すべし。

不眠には、
竹茹、枳実を使用すべし。

鼻が乾いて寝付けない者には、
葛根、芍薬を使用すべし。

発斑には、
玄参、升麻を使用すべし。

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栀子しし

山梔子
山梔子

栀子、又は山栀子と言う。
アカネ科のクチナシ。
形が球形の物を山栀子、
細長い物を水栀子と言う。
性味:苦・寒
帰経:心・肺・肝・胃・三焦
効能:
①清熱瀉火
・外感熱病で起こる胸中鬱熱で胸が熱苦しい、不眠などを呈する時に。
方剤例 → 栀子豉湯。
・三焦の実火による高熱、意識障害を呈する時に。
方剤例 → 黄連解毒湯。
・肝火による目赤、疼痛、口苦、胸が苦しい等を呈する時に。
方剤例 → 竜胆瀉肝湯。

②清熱利湿
・湿熱の黄疸に。
方剤例 → 栀子柏皮湯。
・膀胱湿熱の排尿痛、排尿困難を呈する時に。
方剤例 → 五淋散。

③清熱涼血
・血熱による各出血に用いる。
方剤例 → 栀子金花丸。

④清熱解毒
・熱毒による皮膚の化膿症に。
方剤例 → 清上防風湯。

豆豉とうし

淡豆豉『中医臨床のための中薬学』より
淡豆豉『中医臨床のための中薬学』より

マメ科大豆の成熟種子を蒸してから
発酵加工したもの。
性味:辛・甘・微苦・凉・微温
帰経:肺・胃
効能:
①疏散解表
・外感風寒の発熱や悪寒、無汗などの症状に。
方剤例 → 葱豉湯。
・外感風寒の発熱や微悪風寒、咽痛などに。
方剤例 → 葱豉桔梗湯。

②宣鬱除煩
・熱病後の胸中に熱が残り、
胸が苦しいや気分が悪い、不眠などに。
方剤例 → 梔子豉湯。

竹葉ちくよう

竹葉『中医臨床のための中薬学』より
竹葉『中医臨床のための中薬学』より

イネ科淡竹の葉。
性味:辛・甘・寒
帰経:心・肺
効能:
①散熱・清心除煩
・外感風熱の初期である微悪寒や発熱、咽痛などに。
方剤例 → 銀散。
・熱傷気陰の口渇、咳嗽、熱感などに。
方剤例 → 竹葉石膏湯。
・熱入心包の意識障害や譫言、高熱に。
方剤例 → 清宮湯・清営湯。

石膏せっこう

石膏
石膏

含水硫酸カルシウム鉱石。
性味:辛・甘・大寒
帰経:肺・胃
効能:
①清気分実熱
・外感熱病の気分証で高熱や煩燥、口渇、発汗などに。
方剤例 → 白虎湯。
・気分証に血熱をともなったもの。
方剤例 → 清瘟敗毒散・化斑湯。
・気分証の回復期で胸苦しいなどに。
方剤例 → 竹葉石膏湯。

②清肺熱
・肺熱の呼吸促迫や咳嗽、胸苦しいなどに。
方剤例 → 麻杏甘石湯。

③清胃火
・胃火の頭痛や歯痛、歯齦の腫れや痛みに。
方剤例 → 清胃散。
・陰虚の胃火上炎の歯痛や頭痛。
方剤例 → 玉女煎。

④生肌斂瘡
・切り傷や潰瘍、熱傷などに。

竹茹ちくじょ

竹筎『中医臨床のための中薬学』より
竹筎『中医臨床のための中薬学』より

イネ科淡竹、その他の同属植物の
竹幹の上皮を薄くはぎ去り、
皮下の帯緑白色部を薄く削ったもの。
性味:甘・微寒
帰経:肺・胃・胆
効能:
①清熱滌痰・開欝
・胆虚の熱痰欝結による不眠や不安などに。
方剤例 → 温胆湯。
・痰迷心竅の中風で意識障害や舌の強張り、
言語障害などに。
方剤例 → 滌痰湯。
・肺熱の咳嗽、黄色の痰に。

②清熱止嘔
・胃熱の嘔吐、吃逆に。
方剤例 → 黄連橘皮竹茹半夏湯・竹葉石膏加竹茹芦根湯。
・胃虚狭熱の嘔吐、吃逆に。
方剤例 → 橘皮竹茹湯。

③その他
・妊娠嘔吐や切迫流産に。

枳実きじつ

枳実
枳実

ミカン科のダイダイ、イチャンレモン、カラタチなどの幼果。
性味:苦・微寒
帰経:脾・胃・大腸
効能:
①破気消積
・調胃湿熱積滞の腹痛や便秘、或いは下痢などに。
方剤例 → 枳実導滞丸。
・熱結の便秘や腹満、腹痛に。
方剤例 → 大承気湯。
・気滞血瘀の腹痛や腹満などに。
方剤例 → 通導散・枳実芍薬散。

②化痰消痞
・胸脇の痰飲で胸が痞えて苦しいや呼吸促迫に。
方剤例 → 導痰湯・滌痰湯。
・痰濁阻滞胸陽の胸痛や胸の痞えなどに。
方剤例 → 枳実薤白桂枝湯。
・寒疑気滞の胃痛や上腹部の痞えに。
方剤例 → 橘皮枳実生姜湯。
・飲食停滞・脾胃不運の上腹部の痞えや腹痛、食欲不振に。
方剤例 → 枳実消痞丸・枳朮丸。

◉葛根

葛根
葛根

マメ科のクズの周皮を除いた根。
性味:甘・辛・凉
帰経:脾・胃
効能:
①解肌退熱
・外感表証の発熱や無汗、頭痛、項背部のこわばりに。
悪寒が強い表寒証:麻黄・桂枝と。
発熱や咽痛が強い表熱証:柴胡・黄笒と。
方剤例 → 葛根湯・柴葛解肌湯。

②透疹
・麻疹初期、もしくは透発が不十分なときに。
方剤例 → 升麻葛根湯。

③生津止渇
・熱病の口渇や消渇に。
方剤例 → 麦門冬飲子。

④昇陽止瀉
・脾虚の泥〜水様便に。
方剤例 → 七味白朮散。
・熱痢に。
方剤例 → 葛根黄笒黄連湯。

白芍びゃくしゃく

芍薬
芍薬

ボタン科のシャクヤクのコルク皮を除去し、
そのままあるいは湯通しして乾燥した根。
性味:苦・酸・微寒
帰経:肝・脾
効能:
①補血斂陰
・血虚による顔色がよくない、ふらつき、眩暈、かすみ目などに。
方剤例 → 四物湯。
・陰虚陽浮による自汗や寝汗に。
・外感風寒・表虚の営衛不和の自汗や悪風に。
方剤例 → 桂枝湯。

②柔肝止痛
・肝鬱気滞による胸脇部の張りや痛み、憂鬱感、イライラなどに。
方剤例 → 四逆散・柴胡疏肝散。
・肝脾不和の腹痛や下痢に。
方剤例 → 痛瀉要方・逍遙散・当帰芍薬散。
・血虚肝乗の筋肉の痙攣や痛みに。
方剤例 → 芍薬甘草湯・桂枝加芍薬湯・小建中湯。
・大腸湿熱の下痢や腹痛に。
方剤例 → 芍薬湯・黄笒湯。

③平肝斂陰
・肝陰不足・肝陽上亢の頭痛や眩暈に。
方剤例 → 鎮肝熄風湯・七物降下湯。

④その他
・利水剤として。
方剤例 → 真武湯。
・血痺に。
方剤例 → 黄耆桂枝五物湯。

玄参げんじん

玄参『中医臨床のための中薬学』より
玄参『中医臨床のための中薬学』より

ゴマノハグサ属の根部。
性味:苦・鹹・寒
帰経:肺・胃・腎
効能:
①滋陰涼血・除煩
・温熱の邪が営血に入ったことによる、夜間の熱、意識障害、斑疹等。
方剤例 → 清営湯・清宮湯・化斑湯。

②滋陰降火・解毒
・陰虚火旺の咽喉の痛みや腫れ、目の充血、のぼせ、喀血等。
方剤例 → 養陰清肺湯・両地湯。
・熱毒の咽の痛みや腫れに。
方剤例 → 玄参升麻湯・玄参解毒湯。
・血栓閉塞性脈管炎の壊死期に。
方剤例 → 四妙勇安湯。

③清熱軟堅
・頸部リンパ節腫や皮下結節に。
方剤例 → 消瘰丸。

④潤腸通便
・腸燥便秘に。
方剤例 → 増液湯。

升麻しょうま

升麻『中医臨床のための中薬学』より
升麻『中医臨床のための中薬学』より

キンポウゲ科のサラシナショウマの根茎。
性味:甘・辛・微寒
帰経:脾・胃・肺・大腸
効能:
①発表透疹
・麻疹初期、透発が不十分な時に用いる。
方剤例→升麻葛根湯・宣毒発表湯。

②清熱解毒
・胃火亢盛による歯茎のびらん、口内炎、口臭に。
方剤例→清胃湯。
・熱毒による咽の痛み、発赤に。
方剤例→晋済消毒飲。

③昇拳陽気
・気虚下陥の慢性下痢、脱肛、子宮筋腫に。
方剤例→補中益気湯・昇陥湯。


<参考文献>
『万病回春解説』 創元社
『万病回春.巻之1-8』 早稲田大学 古典籍総合データベース
『中医臨床のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
『本草綱目』 国立国会図書館デジタルコレクション
『東方栄養新書』 メディカルユーコン

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下野

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