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下野です。
今回は「諸病の主薬」の第四回になります。
【原文】
大熱譫語、須用黄連、黄芩、黄柏、梔子、為主。
発狂大便実、須用大黄、芒硝、為主。
発渇、須用石膏、知母、為主。
胸膈膨悶、須用桔梗、枳穀、為主。
心下痞悶、須用枳実、黄連、為主。
<第五に続く>
【解説】
大熱譫語(うわごと)には、
黄連、黄芩、黄柏、梔子を使用すべし。
発狂して便秘するものは、
大黄、芒硝を使用すべし。
口の渇きには、
石膏、知母を使用すべし。
胸膈膨悶には、
桔梗、枳穀を使用すべし。
心下痞悶には、
枳実、黄連を使用すべし。
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◉黄連
キンポウゲ科のオウレン属の根茎。
性味:苦・寒
帰経:心・脾・肝・胆・胃・大腸
効能:
①清熱燥湿
・大腸湿熱の下痢や裏急後重に。
方剤例 → 香連丸・芍薬湯・葛根黄笒黄連湯。
・腸胃湿熱の腹満や嘔吐、悪心、下痢に。
方剤例 → 半夏瀉心湯・枳実消痞丸。
・三焦湿熱の潮熱や胸苦しい、口渇、嘔吐などに。
方剤例 → 杏仁滑石湯。
②清熱瀉火
・熱入心包の高熱や意識障害、譫言、煩燥などに。
方剤例 → 牛黄清心丸・安宮牛黄丸。
・火盛迫血妄行の吐血、鼻血に。
方剤例 → 三黄瀉心湯。
・心火上炎の焦燥、不眠、口内炎に。
方剤例 → 朱砂安神丸。
・陰血不足があるときに。
方剤例 → 黄連阿膠湯。
・胃火の消穀善飢、歯痛に。
方剤例 →清胃散。
・肝火胃犯の胃痛や嘔吐、胃酸過多に。
方剤例 → 左金丸。
・肝火上炎による目の充血や腫れ、痛みに。
方剤例 → 当帰竜薈丸。
・胸中積熱・腸中有寒の腹痛、嘔吐に。
方剤例 → 黄連湯。
③清熱解毒
・熱毒の高熱、煩燥、目の充血、腫れ、咽喉の痛み、皮膚化膿症に。
方剤例 → 黄連解毒湯・普済消毒散。
・火毒による目の充血や腫れ、痛みに。
◉黄芩
シソ科のコガネバナの周皮を除いた根。
内部が充実し、細い円錐形をしたものを条芩、桂芩、尖芩などと称し、
老根で内部が黒く空洞になってものを枯芩、
さらに片条に割れたものを片芩と称する。
性味:苦・寒
帰経:肺・脾 ・大腸・小腸・胆
効能:
①清熱燥湿
・湿温・暑温初期の湿熱阻滞気機の胸が苦しいや、悪心、嘔吐などに。
・湿が熱より重いとき。 → 黄芩滑石湯。
・熱が湿より重いとき。→ 甘露消毒丹。
・湿熱中阻の腹満や嘔吐時に。 → 半夏瀉心湯。
・大腸湿熱の下痢や裏急後重に。 → 黄芩湯・葛根黄芩黄蓮湯。
・湿熱黄疸に。
②清熱瀉火・解毒・凉血
・肺熱の咳嗽や呼吸の促迫、黄痰などに。
方剤例 → 清肺湯。
・上焦火熱の高熱や口渇、喉痛などに。
方剤例 → 凉膈散。
・上焦火盛の喉の腫れや痛み、皮膚化膿症に。
・血熱妄行の鼻血や吐血に。
方剤例 → 黄蓮解毒湯・三黄瀉心湯。
③清熱安胎
・妊娠中の蘊熱による下腹痛に。
方剤例 → 当帰散。
◉黄柏
ミカン科のキハダ。
またはその他の同属植物の
周皮を除いた樹皮。
性味:苦・寒
帰経:腎・胆・膀胱
効能
①清熱燥湿:黄疸、下痢、臭いのある帯下、排尿痛など。
方剤例 → 白頭翁湯・易黄湯・二炒散。
②清熱瀉火:陰虚火旺の遺精、盗汗など。
方剤例 → 知柏地黄丸。
③清熱解毒:皮膚の化膿症、口内炎、火傷など。
方剤例 → 苦参、白鮮皮などと用いる。
◉栀子
栀子、又は山栀子と言う。
アカネ科のクチナシ。
形が球形の物を山栀子、
細長い物を水栀子と言う。
性味:苦・寒
帰経:心・肺・肝・胃・三焦
効能:
①清熱瀉火
・外感熱病で起こる胸中鬱熱で胸が熱苦しい、不眠などを呈する時に。
方剤例 → 栀子豉湯。
・三焦の実火による高熱、意識障害を呈する時に。
方剤例 → 黄連解毒湯。
・肝火による目赤、疼痛、口苦、胸が苦しい等を呈する時に。
方剤例 → 竜胆瀉肝湯。
②清熱利湿
・湿熱の黄疸に。
方剤例 → 栀子柏皮湯。
・膀胱湿熱の排尿痛、排尿困難を呈する時に。
方剤例 → 五淋散。
③清熱涼血
・血熱による各出血に用いる。
方剤例 → 栀子金花丸。
④清熱解毒
・熱毒による皮膚の化膿症に。
方剤例 → 清上防風湯。
◉大黄
タデ科のダイオウ属植物。
又は、それらの種間雑種の根茎。
性味:苦・寒
帰経:脾・胃・大腸・肝・心包
効能:
①瀉熱通腸
・胃腸の実熱積滞の便秘や腹痛、高熱、意識障害などに。
方剤例 → 大承気湯・小承気湯・調胃承気湯。
・大腸湿熱の下痢や腹痛、テネスムスなどに。
方剤例 → 芍薬湯。
・食積の下痢や腹満、腹痛に。
方剤例 → 木香檳榔丸・枳実導滞丸。
・寒積の便秘や腹痛、冷えなどに。
方剤例 → 温脾湯・大黄附子湯。
②清熱瀉火・凉血解毒
・火熱上亢の目の充血、喉の痛みや腫れ、歯痛、鼻血など。
方剤例 → 三黄瀉心湯・凉膈散・当帰竜薈丸。
・虫垂炎に。
方剤例 → 大黄牡丹皮湯・闌尾化瘀湯・闌尾清化湯。
・皮膚化膿症に。
③行瘀破積
・血瘀の無月経や産後瘀阻の腹痛に。
方剤例 → 無積丸・下瘀血湯。
・打撲外傷の腫れや痛みに。
方剤例 → 復元活血湯・治打撲一方・通導散。
④清化湿熱
・湿熱の黄疸に。
方剤例 → 茵蔯蒿湯。
・水熱互結の結胸による心窩部〜下腹の痛み、発熱などに。
方剤例 → 大陥胸湯。
・腹水の腹満や便秘、尿量の減少に。
方剤例 → 已椒藶黄丸。
◉芒硝
天然の含水硫酸ナトリウム。
又は風化消。
性味:鹹・苦・寒
帰経:胃・大腸・三焦
効能:
①瀉熱通便・潤燥軟堅
・胃腸実熱による腹満や腹痛、便秘、高熱、意識障害などに。
方剤例 → 大承気湯・調胃承気湯。
・水熱互結の結胸による心窩部〜下腹の痛み、発熱などに。
方剤例 → 大陥胸湯。
②清熱消腫
・咽喉のびらんや腫れ、口内炎に。
方剤例 → 冰硼散。
・目の充血や腫れ、痛みに。
・皮膚化膿症や痔核の痛みに。
◉石膏
含水硫酸カルシウム鉱石。
性味:辛・甘・大寒
帰経:肺・胃
効能:
①清気分実熱
・外感熱病の気分証で高熱や煩燥、口渇、発汗などに。
方剤例 → 白虎湯。
・気分証に血熱をともなったもの。
方剤例 → 清瘟敗毒散・化斑湯。
・気分証の回復期で胸苦しいなどに。
方剤例 → 竹葉石膏湯。
②清肺熱
・肺熱の呼吸促迫や咳嗽、胸苦しいなどに。
方剤例 → 麻杏甘石湯。
③清胃火
・胃火の頭痛や歯痛、歯齦の腫れや痛みに。
方剤例 → 清胃散。
・陰虚の胃火上炎の歯痛や頭痛。
方剤例 → 玉女煎。
④生肌斂瘡
・切り傷や潰瘍、熱傷などに。
◉知母
ユリ科のハナスゲの根茎。
性味:苦・寒
帰経:肺・胃・腎
効能:
①清熱瀉火
・外感熱病の高熱や煩燥、口渇、冷飲を欲すなどに。
方剤例 → 白虎湯。
②清肺潤燥
・肺熱の咳嗽や黄色の痰などに。
・肺陰虚の乾咳、少痰に。
方剤例 → 二母丸。
③滋陰・退虚熱
・外感熱病後期の傷陰微熱に。
方剤例 → 青蒿鼈甲湯。
・陰虚火旺の骨蒸潮熱や夢精、寝汗に。
方剤例 → 知柏地黄丸・大補陰丸。
④生津止渇
・胃熱の口渇、肺腎陰虚の消渇に。
方剤例 → 玉液湯・麦門冬飲子。
⑤その他
・陰虚の排尿困難に。
方剤例 → 通関丸。
・陰虚の腸燥便秘に。
◉桔梗
キキョウ科のキキョウの根。
性味:苦・辛・平
帰経:肺
効能:
①宣肺祛痰
・外邪犯肺の咳嗽や痰に。
・風寒の咳嗽、痰、鼻閉、鼻水に。
・風熱の咳嗽、粘調な痰に。
・肺気不宣の咽喉の腫れや痛み、嗄声に。
方剤例 → 桔梗湯・加味甘桔湯・清咽利膈湯。
②排膿消腫
・肺癰の胸痛や膿血痰に。
方剤例 → 桔梗湯・肺癰排膿湯。
・皮膚化膿症に。
方剤例 → 排膿散及湯・十味敗毒湯。
③その他
・尿閉や排尿困難、腹痛、下痢などに。
◉枳穀
ミカン科のダイダイ、イチャンレモンの成熟果実。
性味・帰経・効能は
枳実と同じあるが、
作用が緩和で理気寛中や
胸腹の気滞による痛みに適す。
日本産では夏代や温州ミカンがこれに当たる。
◉枳実
ミカン科のダイダイ、イチャンレモン、カラタチなどの幼果。
性味:苦・微寒
帰経:脾・胃・大腸
効能:
①破気消積
・調胃湿熱積滞の腹痛や便秘、或いは下痢などに。
方剤例 → 枳実導滞丸。
・熱結の便秘や腹満、腹痛に。
方剤例 → 大承気湯。
・気滞血瘀の腹痛や腹満などに。
方剤例 → 通導散・枳実芍薬散。
②化痰消痞
・胸脇の痰飲で胸が痞えて苦しいや呼吸促迫に。
方剤例 → 導痰湯・滌痰湯。
・痰濁阻滞胸陽の胸痛や胸の痞えなどに。
方剤例 → 枳実薤白桂枝湯。
・寒疑気滞の胃痛や上腹部の痞えに。
方剤例 → 橘皮枳実生姜湯。
・飲食停滞・脾胃不運の上腹部の痞えや腹痛、食欲不振に。
方剤例 → 枳実消痞丸・枳朮丸。
<参考文献>
『万病回春解説』 創元社
『万病回春.巻之1-8』 早稲田大学 古典籍総合データベース
『中医臨床のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
『本草綱目』 国立国会図書館デジタルコレクション
『東方栄養新書』 メディカルユーコン
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下野