【研修生募集】
鍼灸一本の技術で生きていける
鍼灸師を目指しませんか?
当院では、研修生を受け入れております。
(現在、一名。性別不問)
研修期間は一年で、
適正が認められればその後のステップも存在します。
詳細は、一鍼堂大阪本院へ:☎06-4861-0070
こんにちは、為沢です。
張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。
今回の傷寒論は弁厥陰病脈証并治 三百五十二章。
この章では、前章に続き厥陰病で血虚寒厥になった場合の証治について
詳しく述べております。
・若其人内有久寒者、宜当帰四逆加呉茱萸生薑湯
病人にもともと胃寒があり、
嘔吐、腹痛などの症状がある場合は
肝木の横逆を予防する目的で、当帰四逆湯に呉茱萸と生薑を加え、
暖肝・和胃、降逆・散寒を行えば良い。
当帰四逆加呉茱萸生薑湯
・当帰
基原:セリ科の根。根頭部を帰頭、
主根部を当帰身、支根を当帰尾、
帰身と帰尾を含めて全当帰という。
当帰は甘補·辛散·苦泄·温通し、
辛香善走するので「血中の気薬」ともいわれ,
補血活血·行気止痛の効能をもち,心·肝·脾に入る。
心は血を主り,肝は血を蔵し,脾は統血するので,
血病の要品であり,血虚血滞を問わず主薬として用い,
婦人科の良薬である。
それゆえ、婦女の月経不調·経閉·痛経および
胎前(妊娠中)·産後の諸病に常用する,このほか、
癰疽瘡瘍には消腫止痛・排膿生肌に、
瘀血作痛·跌打損傷には行瘀止痛に,
虚寒腹痛には補血散寒止痛
に,痺痛麻木には活血散寒に,
血虛萎黃には養血補虛に,それぞれ働く。
また,潤腸通便の効能をもつので腸燥便秘にも有効である。
すなわち,血虛血滯による
すべての病証に使用でき,血分有寒に最適である。
・芍薬
基原:
ボタン科のシャクヤクのコルク皮を
除去し
そのままあるいは湯通しして乾燥した根。
芍薬には<神農本草経>では
赤白の区別がされておらず宋の<図経本草>で
はじめて金芍薬(白芍)と木芍薬(赤芍)が分けられた。
白芍は補益に働き赤芍は通瀉に働く。
白芍は苦酸・微寒で、酸で収斂し苦涼で泄熱し、
補血斂陰・柔肝止痛・平肝の効能を持ち
諸痛に対する良薬である。
白芍は血虚の面色無華・頭暈目眩・
月経不調・痛経などには補血調経し、
肝鬱不舒による肝失柔和の胸脇疼痛・四肢拘孿
および肝脾不和による
腹中孿急作痛・瀉痢腹痛には柔肝止痛し、
肝陰不足・肝陽偏亢による頭暈目眩・肢体麻木には斂陰平肝し、
営陰不固の虚汗不止には斂陰止汗する。
利小便・通血痺にも働く。
・甘草
基原:
マメ科のウラルカンゾウ、
またはその他同属植物の根およびストロン。
甘草の甘平で、脾胃の正薬であり、
甘緩で緩急に働き、
補中益気・潤肺祛痰・止咳・
清熱解毒・
緩急止痛・調和薬性などの性能を持つ。
そのため、脾胃虚弱の中気不足に用いられる。
また、薬性を調和し百毒を解すので、
熱薬と用いると熱性を緩め
寒薬と用いると
寒性を緩めるなど薬性を緩和し薬味を矯正することができる。
ここでは甘緩和中と諸薬の調和に働く。
・通草
基原:
ウコギ科のカミヤツデの茎髄。
通草は甘淡で気味ともに薄く、
淡滲清降し引熱下行して小便から排出し、
通行上達して乳汁を行らすので、
清熱利水・通気下乳の効能をもつ。
湿温尿赤・淋証。尿閉・水腫および
乳汁不下に用いる。
・桂枝
基原:クスノキ科のケイの若枝または樹皮。
桂枝は辛甘・温で、主として肺・心・膀胱経に入り、
兼ねて脾・肝・腎の諸経に入り、
辛散温通して気血を振奮し営衛を透達し、
外は表を行って肌腠の風寒を緩散し、
四肢に横走して経脈の寒滞を温通し、
散寒止痛・活血通経に働くので、
風寒表証、風湿痺痛・中焦虚寒の腹痛・
血寒経閉などに対する常用薬である。
発汗力は緩和であるから、風寒表証では、
有汗・無汗問わず応用でき、
とくに体虚感冒・上肢肩臂疼痛・
体虚新感の風寒痺痛などにもっとも適している。
このほか、水湿は陰邪で陽気を得てはじめて化し、
通陽化気の桂枝は
化湿利水を強めるので、
利水化湿薬に配合して痰飲・畜水などに用いる。
・細辛
基原:
ウマノスズクサ科のケイリンサイシン、
またはウスバサイシンの根をつけた全草(中国産)。
日本薬局方では根および根茎を規定している。
細辛は辛温の性烈であり、外は風寒を散じ、
内は寒飲を化し、上は頭風を疏し、
下は腎気に通じ、開竅・止痛にも働く。
外感風寒の頭痛・身痛・鼻塞および
寒飲内停の咳嗽気喘・痰多に対する主薬であり、
とくに外感風寒に寒飲を兼ねる場合に適し、
風寒湿痺の関節拘攣・疼痛にも用いる。
また、辛香走竄で、粉末を吹鼻すると
通竅取嚔の効果が得られるので、
開関醒神の救急に使用される。
・生薑
基原:
ショウガ科のショウガの新鮮な根茎。
日本では、乾燥していない生のものを鮮姜、
乾燥したものを生姜を乾生姜と
いうこともあるので注意が必要である。
生薑は辛・微温で肺に入り
発散風寒・祛痰止咳に、
脾胃に入り
温中祛湿・化飲寛中に働くので
風温感冒の頭痛鼻塞・痰多咳嗽および水湿痞満に用いる。
また、逆気を散じ嘔吐を止めるため、
「姜は嘔家の聖薬たり」といわれ
風寒感冒・水湿停中を問わず
胃寒気逆による悪心嘔吐に非常に有効である。
・呉茱萸
基原:
ミカン科のニセゴシュユ、ホンゴシュユの未成熟な果実。
呉茱萸は辛散苦降・大熱燥烈で、
疎肝下気に長じ、温中して肝胃を和し、
散寒燥湿して脾腎の陽を助ける。
厥陰の寒気上逆を下降し止痛するため厥陰頭痛に適し、
温中降濁して肝胃を調和し止嘔・制酸に働くので
胸腹脹満・嘔吐呑酸に有効であり、
脾腎を助陽し燥湿して逆気を下ろすために
寒湿瀉痢・吐瀉転筋・寒疝脚気・少腹冷痛などにも用いる。
・大棗
基原:
クロウメモドキ科のナツメ。またはその品種の果実。
甘温で柔であり、補脾和胃と養営安神に働くので、
脾胃虚弱の食少便溏や営血不足の臓燥など心神不寧に使用する。
また薬性緩和にも働き、峻烈薬と同用して
薬力を緩和にし、脾胃損傷を防止する。
ここでは、脾胃を補うとともに芍薬と協同して
筋肉の緊張を緩和していく。
また、生薑との配合が多く、生薑は大棗によって刺激性が緩和され、
大棗は生薑によって気壅致脹の弊害がなくなり、
食欲を増加し消化を助け、大棗が営血を益して
発汗による
傷労を防止し、営衛を調和することができる。
提要:
厥陰病で血虚寒厥になった場合の証治について。
『現代語訳 宋本傷寒論』訳を使用:
もし患者に平素から裏寒があれば、
当帰四逆加呉茱萸生薑湯で治療するとよい。
当帰三両 芍薬三両 甘草二両、炙る 通草二両 桂枝三両、皮を除く
細辛三両 生薑半斤、切る 呉茱萸二升大棗二十五個、裂く
右の九味を、六升の清酒を混合したもので、
五升になるまで煮て、滓を除き、五回に分けて温服する。
参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』 績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社
生薬イメージ画像:為沢 画
※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。
為沢