この傷寒論のシリーズは、
当院の修行生によって毎週、水曜日の早朝に開かれる、
自主的な勉強会におけるメモ・備忘録となります。
古典の専門家によるものではなく、
一から学ぶ者の新鮮な目線を共有出来れば幸いに思います。



11/16(水)
太陽病中篇より

板書1

(46条)
太陽病、脈浮緊、無汗、発熱、身疼痛、八九日不解、表証仍在、此当発其汗。
服薬已微除、其人発煩、目瞑、劇者必衄、衄乃解。所以然者、陽気重故也。
麻黄湯主之。

太陽病が長引き表証が癒えない場合、
やはり発汗法を用いるべきであるとする内容である。
方剤はこの場合麻黄湯が主るとされ、表邪を発散させる。

ただ、病が古くなっているため、
表邪が解する際に発汗とは違った所見を呈すことがある。
本条分では鼻血が出るとされ、
これは寒邪が営血分に流れていたのを散じたことで
表に近い鼻から血分の邪がぬけていくものと思われる。
このように、汗ではなく血として抜けていく状態から、
鼻血を紅汗(こうかん)と呼ぶことがあるのだろう。
すなわち、寒邪による凝滞が血分に多くある場合、
発汗法を用いた際に出る鼻血の量も多いのではないだろうか。

寒邪が営血分に流れている場合、
陽気がこもっているために
(はん)や目瞑(もくめい)といった症状があらわれるのだろう。
この陽気のこもりをここでは「陽気重」と表現している。

なお、本条では古くなった表邪が鼻血によって癒えるとあるが、
裏の瘀血が存在しているときに表証を患って、
治療後に吐血して病が緩解した体験がある。
もしかすると、裏にある瘀血と表邪が
結びついたということだったのかも知れない。
すなわち、血分に邪がある場合に、
その血を排泄させることが有効である場合があるということである。
場合によっては刺絡が有効かも知れない。


 


(47条)
太陽病、脈浮緊、発熱、身無汗、自衄者愈。

本条は、表寒を患った場合は
鼻血が出ると癒えるという内容であり、
前条の内容を受けたものである。

(48条)
二陽併病、太陽初得病時、発其汗、汗先出不徹、因転属陽明、続自微汗出、不悪寒。
若太陽証不罷者、不可下、下之為逆、如此可小発汗、設面色縁縁正赤者、陽気怫鬱在表、当解之熏之。
若発汗不徹、不足言、陽気怫鬱不得越、
当汗不汗、其人躁煩、不知痛処、乍在腹中、乍在四肢、按之不可得、其人短気但坐、以汗出不徹故也、更発汗則愈、
何以知汗出不徹、以脈濇故知也。

(ここから先は院長も参加しました)
太陽病と陽明病の併病を患った場合に、
下法を用いると逆証となり、
発汗法を用いるべきであるという内容である。

この二陽の併病の場合、
陽明の熱が表邪によって鬱滞することで
顔色全体が赤くなる。
単なる表熱や陽明病では、顔全体が赤くなることは考えにくい。
熱邪は寒邪と違って表熱が鬱滞するという印象がなく、
そのためか46条でも熱邪は「重なる」という表現であった。
本条で陽気が沸鬱とすると表現されているのは
表邪によって陽気がめぐらず、また、裏熱も関係しているためであり、
その程度も46条に比べて強いのだろう。

この併病に対しては先表攻裏の原則で
表寒邪を発散させる発汗法を用いるとあるが、
もうひとつ「薰蒸法」という方法も記されている。
おそらく鬱滞した陽気をおさめる治法と思われるが
どのようなものなのだろうか?

参加者:林、下野、新川、大原、盧


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