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こんにちは、為沢です。
張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。
今回の傷寒論は弁厥陰病脈証并治 三百五十一章。
この章では、厥陰病で血虚寒厥になった場合の証治について詳しく述べております。
・手足厥寒、脈細欲絶者、当帰四逆湯主之
足厥陰肝経は蔵血を主る。
手厥陰心包経は心にかわって血・脈を主る。
血虚で厥陰に寒が滞り、正気を四肢末端に至らせることができないので
手足がかなり冷たくなっている。
原文が「厥寒」と書き、「厥冷」と書いていないのは
寒の方が冷よりも程度が甚だしいからである。
そして足に血虚・寒凝が甚だしいので、
脈も細小で消えそうな脈状を示している。
当帰四逆湯
・当帰
基原:セリ科の根。根頭部を帰頭、
主根部を当帰身、支根を当帰尾、
帰身と帰尾を含めて全当帰という。
当帰は甘補·辛散·苦泄·温通し、
辛香善走するので「血中の気薬」ともいわれ,
補血活血·行気止痛の効能をもち,心·肝·脾に入る。
心は血を主り,肝は血を蔵し,脾は統血するので,
血病の要品であり,血虚血滞を問わず主薬として用い,
婦人科の良薬である。
それゆえ、婦女の月経不調·経閉·痛経および
胎前(妊娠中)·産後の諸病に常用する,このほか、
癰疽瘡瘍には消腫止痛・排膿生肌に、
瘀血作痛·跌打損傷には行瘀止痛に,
虚寒腹痛には補血散寒止痛
に,痺痛麻木には活血散寒に,
血虛萎黃には養血補虛に,それぞれ働く。
また,潤腸通便の効能をもつので腸燥便秘にも有効である。
すなわち,血虛血滯による
すべての病証に使用でき,血分有寒に最適である。
・桂枝
基原:クスノキ科のケイの若枝または樹皮。
桂枝は辛甘・温で、主として肺・心・膀胱経に入り、
兼ねて脾・肝・腎の諸経に入り、
辛散温通して気血を振奮し営衛を透達し、
外は表を行って肌腠の風寒を緩散し、
四肢に横走して経脈の寒滞を温通し、
散寒止痛・活血通経に働くので、
風寒表証、風湿痺痛・中焦虚寒の腹痛・
血寒経閉などに対する常用薬である。
発汗力は緩和であるから、風寒表証では、
有汗・無汗問わず応用でき、
とくに体虚感冒・上肢肩臂疼痛・
体虚新感の風寒痺痛などにもっとも適している。
このほか、水湿は陰邪で陽気を得てはじめて化し、
通陽化気の桂枝は
化湿利水を強めるので、
利水化湿薬に配合して痰飲・畜水などに用いる。
・芍薬
基原:
ボタン科のシャクヤクのコルク皮を
除去し
そのままあるいは湯通しして乾燥した根。
芍薬には<神農本草経>では
赤白の区別がされておらず宋の<図経本草>で
はじめて金芍薬(白芍)と木芍薬(赤芍)が分けられた。
白芍は補益に働き赤芍は通瀉に働く。
白芍は苦酸・微寒で、酸で収斂し苦涼で泄熱し、
補血斂陰・柔肝止痛・平肝の効能を持ち
諸痛に対する良薬である。
白芍は血虚の面色無華・頭暈目眩・
月経不調・痛経などには補血調経し、
肝鬱不舒による肝失柔和の胸脇疼痛・四肢拘孿
および肝脾不和による
腹中孿急作痛・瀉痢腹痛には柔肝止痛し、
肝陰不足・肝陽偏亢による頭暈目眩・肢体麻木には斂陰平肝し、
営陰不固の虚汗不止には斂陰止汗する。
利小便・通血痺にも働く。
・細辛
基原:
ウマノスズクサ科のケイリンサイシン、
またはウスバサイシンの根をつけた全草(中国産)。
日本薬局方では根および根茎を規定している。
細辛は辛温の性烈であり、外は風寒を散じ、
内は寒飲を化し、上は頭風を疏し、
下は腎気に通じ、開竅・止痛にも働く。
外感風寒の頭痛・身痛・鼻塞および
寒飲内停の咳嗽気喘・痰多に対する主薬であり、
とくに外感風寒に寒飲を兼ねる場合に適し、
風寒湿痺の関節拘攣・疼痛にも用いる。
また、辛香走竄で、粉末を吹鼻すると
通竅取嚔の効果が得られるので、
開関醒神の救急に使用される。
・甘草
基原:
マメ科のウラルカンゾウ、
またはその他同属植物の根およびストロン。
甘草の甘平で、脾胃の正薬であり、
甘緩で緩急に働き、
補中益気・潤肺祛痰・止咳・
清熱解毒・
緩急止痛・調和薬性などの性能を持つ。
そのため、脾胃虚弱の中気不足に用いられる。
また、薬性を調和し百毒を解すので、
熱薬と用いると熱性を緩め
寒薬と用いると
寒性を緩めるなど薬性を緩和し薬味を矯正することができる。
ここでは甘緩和中と諸薬の調和に働く。
・通草
基原:
ウコギ科のカミヤツデの茎髄。
通草は甘淡で気味ともに薄く、
淡滲清降し引熱下行して小便から排出し、
通行上達して乳汁を行らすので、
清熱利水・通気下乳の効能をもつ。
湿温尿赤・淋証。尿閉・水腫および乳汁不下に用いる。
・大棗
基原:
クロウメモドキ科のナツメ。またはその品種の果実。
甘温で柔であり、補脾和胃と養営安神に働くので、
脾胃虚弱の食少便溏や営血不足の臓燥など心神不寧に使用する。
また薬性緩和にも働き、峻烈薬と同用して
薬力を緩和にし、脾胃損傷を防止する。
ここでは、脾胃を補うとともに芍薬と協同して
筋肉の緊張を緩和していく。
また、生薑との配合が多く、生薑は大棗によって刺激性が緩和され、
大棗は生薑によって気壅致脹の弊害がなくなり、
食欲を増加し消化を助け、大棗が営血を益して
発汗による
傷労を防止し、営衛を調和することができる。
提要:
厥陰病で血虚寒厥になった場合の証治について。
『現代語訳 宋本傷寒論』訳を使用:
手足が厥冷し、脈は細でほとんど触知不能であれば、
当帰四逆湯で治療する。
当帰三両 桂枝三両、皮を除く 芍薬三両 細辛三両
甘草二両、炙る 通草二両
右の七味を、八升の水で、三升になるまで煮て、滓を除いて、
一升を温服し、日に三回服用する。
参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』 績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社
生薬イメージ画像:為沢 画
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是非参考文献を読んでみて下さい。
為沢