この傷寒論のシリーズは、
当院の修行生によって毎週、水曜日の早朝に開かれる、
自主的な勉強会におけるメモ・備忘録となります。
古典の専門家によるものではなく、
一から学ぶ者の新鮮な目線を共有出来れば幸いに思います。
11/9(水)
太陽病中篇より
(43条)
太陽病,下之微喘者,表未解故也,桂枝加厚朴杏子湯主之。
(43条の続きから)
太陽病すなわち表証がある場合に下法を用いて喘(呼吸困難)がおこるのは
表証が解けていないためである、と述べられている。
桂枝加厚朴杏仁湯は桂枝湯に厚朴と杏仁を加えたものである。
厚朴は降逆に、杏仁は呼吸困難を治す。
この方剤は19条にも出てくるが、
19条と病の出かたは異なるが
身体の状態は同じとみて同治としているのであろう。
また、桂枝加厚朴杏仁湯は胸間停水を主治するとする文献もある。
小青竜湯は心下の水飲がポイントであった。
水飲の停滞する場所の違いで、
これら二つの方剤を使い分けるということだろう。
ところで、小青竜湯にはなぜ杏仁が除かれているのか、
という疑問が以前に出た。
しかし、小青竜湯の条文をよく確認してみると
状況によっては杏仁を配合する場合もあり、
また、麻黄を除いたりするなど薬味の加減がある。
すなわち、肺気の粛降作用を亢進させて
肺胃の水飲を取り除く場合には杏仁を配合するということである。
また、麻黄には宣発作用があり、表寒を取り除くことはすでに学んだ。
杏仁は寒飲の邪実を肺気を用いて胸部から降ろし、
麻黄は表にある寒邪を発散させるという
対比のように考えると、ふたつの特徴をイメージしやすい。
(44条)
太陽病、外証未解、不可下也、下之為逆。欲解外者、宜桂枝湯。
先表後裏の原則を述べた条文であり、43条とも関係する。
表証がある場合には裏熱をとる下法ではなく
表証を先にとるべきで、そうしないと逆証となると書かれている。
ただし、裏証にも程度があり、
裏熱が内陥していくような重篤な場合は
下法を用いるべきであるとする見解もある。
また、裏熱がきつく手足厥冷が存在する場合は
その裏熱を清することで厥冷もとれるとする条文があり
大いに参考になる(350条 白虎湯)。
(45条)
太陽病、先発汗不解、而復下之、脈浮者不愈、浮為在外、而反下之、故令不愈。
今脈浮、故在外、当須解外則愈、宜桂枝湯。
太陽病で発汗法を用いたが病が治りきらず、
次に下法を用いたが
脈が浮で、病が治らない場合について。
この場合、脈は浮のままであり
太陽病が前提となっているため、表証が残存していることをあらわしている。
すなわち治法は発汗法を続けて行うべきである。
太陽病が前提ではない場合、
脈が浮であるとすると、あらゆる文献から
・腑の病
・虚熱
・裏虚
などの可能性がある。
すなわち邪気に応じて正気が体表に集まっていることを示すといえる。
参加者:下野、新川、大原、盧