この傷寒論のシリーズは、
当院の修行生によって毎週、水曜日の早朝に開かれる、
自主的な勉強会におけるメモ・備忘録となります。
古典の専門家によるものではなく、
一から学ぶ者の新鮮な目線を共有出来れば幸いに思います。
10/26(水)
太陽病中篇より
(39条)
傷寒、脈浮緩、身不疼、但重、乍有軽時、無少陰証者、大青竜湯発之。
冒頭、「傷寒」とあるにも関わらず
脈は「浮緩」となっている。
本来なら傷寒では緊脈を呈するはずであるが、これはなぜか。
おそらく、寒邪が入り込んでしばらく時間が経過し、
寒邪が鬱滞したことで熱化し
邪の様相が変化したことによると思われる。
前条(38条)でも表寒邪が鬱滞したことで
煩燥などの熱の鬱滞の症状があらわていたが、
本条もそれと同様に、寒邪の状態が変化したことがうかがえる。
また、本条は前の条文からの続きであるとする説があるが、
そのように読むと、
本条の「無少陰証者」の少陰病とは
前条の後半「服之則厥逆、筋惕肉瞤、此為逆也」の部分、
つまり、誤治によって津液がめぐらなくなった逆証を
指していると解釈することができる。
すなわち、前条で大青龍湯を用いて
表寒邪と内熱を取り除き、
いまだに本条のような症状(身不疼、但重、乍有軽時)のときは
少陰病でないことを確認して、
ひきつづき大青龍湯を与え鬱滞している邪を発散させよ、
という意味ではないだろうか。
(40条)
傷寒表不解、心下有水気、乾嘔、発熱而咳、
或渇、或利、或噎、或小便不利、少腹満、或喘者、小青竜湯主之。
水気が心下にある場合に、傷寒が解けない場合
「乾嘔、発熱而咳、或渇、或利、或噎、或小便不利、少腹満、或喘」といった
様々な症状があらわれる可能性があることを示している。
これらの症状は、心下の水気が、
気化作用や津液の循行を妨げることによっておこる。
津液が停滞することで
水気という邪を形成してしまったということであるが、
これは、素体としての臓腑の弱りから
津液のめぐりがうまくいっていないことに
よるものと思われる。
そこに寒邪が侵襲したということだろう。
ここで、小青龍湯の組成を確認してみる。
麻黄湯から杏仁を取り去り(麻黄、桂枝、甘草)、
肺・胃の寒飲を取り去る乾姜、細辛、五味子、
降逆の半夏、正気を助ける白芍(甘草・五味も)が配合されている。
さて、肺の宣発を助ける杏仁が除かれているが、
これはなぜだろうか?
(次回に続く)
参加者:下野、新川、大原、盧、