この傷寒論のシリーズは、
当院の修行生によって毎週、水曜日の早朝に開かれる、
自主的な勉強会におけるメモ・備忘録となります。
古典の専門家によるものではなく、
一から学ぶ者の新鮮な目線を共有出来れば幸いに思います。
10/12(水)
太陽病中篇より
<麻黄湯証と葛根湯証の比較>
(前回の続きから)
麻黄湯証と葛根湯証はどちらも表寒実証であり、
治療においても、使用する経穴が同じであるとする書籍もある。
しかし、麻黄湯証は表寒による皮毛・衛気の閉塞が要点であり、
喘(呼吸困難)などの肺気不宣の症状もみられやすい。
葛根湯証では津液の循環がうまくいかない点が要点であるが、
大腸に熱がこもる場合もあるとする見解もあり、
臨床的には太陽から陽明に邪がはみ出してくるような印象もある。
葛根湯証の虚実について論じると、
麻黄湯にくらべて邪実の程度は弱いような印象があり、
桂枝湯が葛根湯の中に含まれていることから
中焦の虚が素体としてあり、そこに衛気が弱り、
風寒邪を受けることで発症するのではないかと考える。
しかし、あらゆる文献を確認していくと
葛根湯は実証とするものしか見当たらず、
素体としての中焦の虚に対する治療というよりも
表の風寒邪を発散させるという考え方が
妥当なのであろう。
すなわち葛根湯は、表の風邪を発散させつつ、
麻黄によって表寒を発散させ、
さらに葛根によって津液をめぐらせ
項背の強ばりを治すということである。
これに対して麻黄湯は
全体として表寒を発散させ、
凝滞していた皮毛や衛気を巡らせることが主要である。
臨床において、表寒実証である場合、
麻黄湯証か葛根湯証かの弁別はどのようにすればよいのか。
上記のような違いを四診において確認することができれば
自ずと分かってくるのではないだろうか。
(36条) 太陽与陽明合病、喘而胸満者、不可下、宜麻黄湯。
この条文は、太陽と陽明の合病、すなわち、
太陽病と陽明病の症状が出ている場合において、
呼吸困難や胸満がある場合には、
下法を用いてはならず麻黄湯が良い、と書かれている。
「喘にして胸滿」とは、邪が上焦にあるためにおこるもので、
邪の主な場所は上焦にあると考える。
ここで下法を用いると邪が中焦へ落ちこんでしまう。
よって、麻黄湯を用いて上焦を発散させるべきである。
そうすれば、表が鬱滞していたために発散できなかった
陽明の内熱の邪も動き出すのではないだろうか。
さて、臨床的に、邪の場所が
太陽が主なのか、陽明が主なのか、
どのように判断すべきだろうか。
陽明が主であるとすると、おそらく内熱の邪が強く、
熱の所見が多くみられるように思われる。
この場合、大承気湯を用いるとするなどの記述が
この後の条文にあり、後に学んでいく。
参加者:下野、新川、大原、盧