この傷寒論のシリーズは、
当院の修行生によって毎週、水曜日の早朝に開かれる、
自主的な勉強会におけるメモ・備忘録となります。
古典の専門家によるものではなく、
一から学ぶ者の新鮮な目線を共有出来れば幸いに思います。



10/5(水)
太陽病中篇より

34条  太陽病、桂枝証、医反下之、利遂不止。脈促者、表未解也。喘而汗出者、葛根黄芩黄連湯主之。
35条  太陽病、頭痛、発熱、身疼、腰痛、骨節疼痛、悪風、無汗而喘者、麻黄湯主之。

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33条の内容について、
桂枝湯の証に対して下法を用いて腸胃を損傷した場合、
自汗によって漏れ出ていた津液は下痢となる。
すなわち表証を解決することができれば下痢は止まる。

ここで「脈促の場合には表証が未だ解せず」とあるが、
どういうことだろうか。
21条にも「脈促」という記述があったが、
このときの病位は、表邪が裏へ陥りそうになっていた。
そのため、収斂作用のある芍薬を使わない桂枝去芍薬湯を用いた。

本条の場合も、誤って下法を用いたことで、
表邪が裏に向かっていることが窺える。
その内陥しそうな邪に正気が対抗しようとしている点が
21条と共通し、この点が脈促の意味するところではないだろうか。
ただ、21条の場合よりも本条の方が症状もやや重く、
同じ促脈でも、本条では滑などのやや裏証の病脈が
加わる可能性もあると思われる。

葛根は脾胃へ作用し、
津液の巡りを正常にする働きがあるようである。
下痢や自汗による津液の損傷を回復させることができる。

34条からは麻黄湯の証である。
はじめの34条では
麻黄湯証の基本的な症状(麻黄八証)について述べられている。

症状には、関節痛など痛みについてが多いが、
これは寒邪が表を塞ぐことで気が滞り血が巡らず、
気血の不通から痛みがおこるとされている。
また、肺は皮毛を主るが、
表寒邪によって腠理が閉じられることで肺気不宣が起こり、
結果的に呼吸困難(喘)がおこる。
臨床的には、症状として、
息が上がる、鼻閉、小便不利などがみられる場合が多い印象がある。

さて、葛根湯と麻黄湯について、
どちらも表寒実証に用いられるとされているが、
その違いは何だろうか。

症状からまとめると、
葛根湯は、項背の強張りなどがある場合や
下痢などの津液の異常を正常にする働きがあり、
麻黄湯は、呼吸困難といった肺気不宣に対する。
二つの方剤の違いについて、さらに次回続きを行う。

参加者:下野、新川、大原、盧


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