この傷寒論のシリーズは、
当院の修行生によって毎週、水曜日の早朝に開かれる、
自主的な勉強会におけるメモ・備忘録となります。
古典の専門家によるものではなく、
一から学ぶ者の新鮮な目線を共有出来れば幸いに思います。
9/28(水)
太陽病中篇より
31条 太陽病、項背強几几、無汗、悪風、葛根湯主之。
32条 太陽与陽明合病者、必自下利、葛根湯主之。
33条 太陽与陽明合病、不下利、但嘔者、葛根加半夏湯主之。
(31条)
太陽病で葛根湯証の基本的な症状について述べられたものである。
ここで葛根湯は、表にある寒邪を発散させる効果があり、
太陽病の表実をとるものである。
この条文の中に「悪風」とあり、
悪風とは一般的に衛気の弱りによって起こるもので、
表虚と判断される症状と思われる。
葛根湯は表実に対するものであることから、矛盾があると思いがちである。
しかし、表寒実が衛気を侵襲したことで
衛気の働きが弱ったために悪風があらわれたとも考えられ、
やはり表寒実証について述べられたものである
とするのが妥当だと思う。
臨床的には、問診で、無汗、悪風について問うことは
参考程度にしかならないことが多いので注意すべきである。
(32条)
太陽病にかかり、その後、陽明病にもかかった状態が
太陽と陽明の合病である。
陽明病とは腸胃に内熱がこもり、
口渇、便秘、脈洪大、紅舌、汗をかくといった症状がある。
陽明病は汗をかくことによって内熱を発散させているが、
ここで先に太陽病にかかっていることから、
表が鬱しているために汗をかけず、
汗の代わりに下痢によって津液を排泄することで
内熱を発散させていると考えられる。
津液を排泄するため、太陽病と同様に、脾胃に弱りをみる。
葛根湯には
・太陽表寒を発散させ、汗をかけるようにする
・脾胃の働きと高める
という効果があり、結果として
陽明の邪も発散させることができるのではないだろうか。
(33条)
32条と同様に、太陽と陽明の合病であるが、
下痢ではなく嘔の症状が出た場合についてである。
内熱の発散が下痢ではなく、嘔吐によるもの、
すなわち、病がやや長引くなどして
胃気の衰えや、内熱の停滞が
32条と比較してやや進行しているといえるのではないだろうか。
半夏には止嘔降逆の作用があり、
葛根湯と合わせることで32条の治法に則って
表邪や陽明の邪を発散させることができるのだろう。
参加者:下野、新川、大原、小堀、盧