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こんにちは、本多です。
前回に続き
腹證奇覧に記載されております、
大柴胡湯についてです。
前回の記事はこちら↓
大柴胡湯之證①
大柴胡湯
図ノゴトク、胸脇苦満シテ、スコシク抅攣アリ、オヨソ抅攣ハ、
塊物トコトナリ、指頭ニスコシカヽハリコタユルモノナリ。
又腹スコシク實満シテ心下鞕セズ、痞スルバカリナリ。
ヨクヨク診シテ考フベシ。
前ニイフ小柴胡湯ハ、心下痞鞕アリテ實満ナシ。
コレヲモツテ分別スベシ。
オヨソ傷寒論ノ藥方ハ其意精密ナルモノニシテ、
ソノ方ソノ證、自然トソナハリテタガハザルコト、
アザムクベカラズルモノナリ。
ツヽシンデ、方ノ主證ヲアキラカニシ、
君佐ノ意味ヲカンガヘコレヲモチユルトキハ、
一モ病治セザルコトナカルベシ。
コレ天然自然ノ方法。
三代以上ノ術タルコト、ウタガヒナシ。
醫者私智ヲハナレ、イニシヘノ法ヲモチヒ、
ツヽシンデ、其功アルコトヲシルベシ。
大柴胡湯について、
傷寒論の103条には以下の記載がみられます。
「太陽病、過経十余日、反二三下之、後四五日、
柴胡証仍在者、先与小柴胡。
嘔不止、心下急、一伝、嘔止小安。
鬱鬱微煩者、為未解也、与大柴胡湯、下之則愈。」
太陽病にかかり、
表邪が他の経に伝経して十日余り経ち、
誤って攻下法による治療を何度も繰り返したときの経過です。
このときに
往来寒熱・胸脇苦満・食欲不振などの柴胡証があれば小柴胡湯を与え、
もし嘔吐して心下部がきつくひっぱって、
更に軽い抑鬱気分や易怒などがある場合は、
邪が除かれていないので、大柴胡湯を与え攻下させる。
との記載があります。
大柴胡湯は小柴胡湯から人参と甘草を除き
枳実、芍薬、大黄を加えたもので、
少陽病に陽明裏実があわさったものを主治します。
上で記載した条文には大柴胡湯の腹證について、
「心下急」とあり
前回記載した腹證奇覧の、
「心下痞あり硬なし、実満と拘攣あり」
にあたるかと思います。
しかしここでは小柴胡湯の柴胡証に加えて
嘔吐・心下部のひきつりがあるようであれば、
大柴胡湯を与えよとあるので、
小柴胡湯の腹證よりも大柴胡湯の腹證の方がより
邪の反応がきつく出るのではないかと考えられます。
続く
大柴胡湯の組成
柴胡
セリ科のミシマサイコ、またはその変種の根。
性味:苦・微辛・微寒
帰経:肝・胆・心包・三焦
主な薬効と応用
①透表泄熱:外感表証の表熱に用いる
方剤例→柴葛解肌湯
②疎肝解鬱:肝鬱気滞の憂鬱・イライラ・胸脇部の張痛・月経不順などの症候時に用いる。
方剤例→四逆散
③昇挙陽気:気虚下陥の慢性下痢・脱肛・子宮下垂などに用いる。
方剤例→補中益気湯
備考:昇発の性質を持つので、虚証の気逆不降や陰虚火旺・肝陽上亢・陰虚傷津などに
用いてはならない。
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黄芩
シソ科のコガネバナの周皮を除いた根。
内部が充実し、細い円錐形をしたものを条芩、桂芩、尖芩などと称し、
老根で内部が黒く空洞になってものを枯芩、
さらに片条に割れたものを片芩と称する。
性味:苦・寒
帰経:肺・脾 ・大腸・小腸・胆
主な効能と応用:
①清熱燥湿:湿温・暑温初期の湿熱欝阻気機による、
胸苦しい・腹が張る・悪心・嘔吐・尿が濃いなどの症候に用いる。
方剤例⇒黄芩滑石湯
②清熱瀉火・解毒・凉血:肺熱の咳嗽・呼吸促迫・黄痰などの症候時に用いる。
方剤例⇒清肺湯
③清熱安胎:妊娠中の蘊熱による下腹痛などに用いる。
方剤例⇒当帰散
備考:他薬の配合により様々な効用を示す。
柴胡と往来寒熱を除き、白芍と下痢を抑え、桑白皮と肺火を除き、
白朮と安胎に働き、山梔子と胸膈火熱を除き、荊芥・防風と肌表の熱を清解する。
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芍薬
ボタン科のシャクヤクのコルク皮を除去し、
そのままあるいは湯通しして乾燥した根。
性味:苦・酸・微寒
帰経:肝・脾
主な薬効と応用
①補血斂陰:血虚による顔色につやがない・頭のふらつき・めまい・目がかすむ四肢の痺れ
月経不順などの症候に用いる。
方剤例⇒四物湯
②柔肝止痛:肝鬱気滞による胸脇部の張った痛み・憂鬱感・イライラなどの症候時に用いる。
方剤例⇒四逆散
③平肝斂陰:肝陰不足・肝陽上亢によるめまい・ふらつきなどの症状に用いる。
方剤例⇒鎮肝熄風湯
備考:炒用すると補気健脾、生用すると燥湿利水に働く。
ショウガ科のショウガの根茎。
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半夏
サトイモ科のカラスビシャクの塊茎。
性味:辛・温・有毒
帰経:脾・胃
主な薬効と応用:鎮静・鎮咳・去痰
①燥湿化痰:湿痰の咳嗽・多痰・胸苦しさ、或いは痰濁上擾による
眩暈・不眠・悪心などの症候時に用いる。
方剤例⇒二陳湯
②降逆止嘔:胃寒・胃熱・胃虚による嘔吐時に用いる。
方剤例⇒胃寒による嘔吐→小半夏湯
胃熱による嘔吐→黄連橘皮竹筎半夏湯
胃虚による嘔吐→大半夏湯
③消痞散結:痰熱による心窩部の痞えなどに用いる。
方剤例⇒半夏瀉心湯
備考:辛散温燥のため、陰虚の燥咳・傷津の口渇・出血には用いてはならない。
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生姜
ショウガ科のショウガの根茎。
性味:温・辛
帰経:肺・脾・胃
主な薬効と応用:健胃・発汗・鎮咳
①散寒解表:風寒表証に辛温解表薬の補助として発汗を増強する。
方剤例⇒桂枝湯
②温胃止嘔:胃寒による嘔吐に、単味であるいは半夏などと使用する。
方剤例⇒小半夏湯
③化痰行水:風寒による咳嗽・白色で希薄な痰などの症候時に用いる。
方剤例⇒杏蘇散
備考:傷陰助火するので、陰虚火旺の咳嗽や瘡癰熱毒には禁忌である。
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桔実
ミカン科のダイダイ、イチャンレモン、カラタチなどの幼果。
性味:苦・微寒
帰経:脾・胃・大腸
主な薬効と応用:
①破気消積:腸胃湿熱積滞による腹痛・便秘あるいは下痢・裏急後重などの症候時に用いる。
方剤例→枳実導滞丸
②化痰消痞:胸脇の痰飲で胸が痞えて苦しい・胸が痞えて苦しい・呼吸困難などを呈する時に用いる。
方剤例→導痰湯
備考:破気に働き正気を消耗するので、体壮邪実に用いる。
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大棗
クロウメモドキ科の棗(なつめ)の果実。
性味:温・甘
帰経:脾
主な薬効と応用:鎮静・抗アレルギー
①補脾和胃:脾胃虚弱の倦怠無力・食欲不振・泥状便などの症状に用いる。
方剤例⇒六君子湯
②養営安神:営血不足による不眠・不安感などに用いる。
方剤例⇒甘麦大棗湯
③緩和薬性:薬力が強力な薬物に配合し、性質を緩和し脾胃の損傷を防止する。
方剤例⇒十棗湯
備考:湿盛の脘腹脹満・食積・虫積・齲歯・痰熱咳嗽などには禁忌となる。
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大黄
タデ科のダイオウ属植物の根茎や根。
性味:苦・寒
帰経:脾・胃・大腸・肝・心包
主な薬効と応用:緩下・駆瘀血
①瀉熱通腸:胃腸の実熱による、
便秘・腹痛・高熱・意識障害などに用いる。
方剤例⇒大承気湯
②清熱瀉火:火熱上亢による、
目の充血・咽喉の腫痛・鼻出血など上部の火熱の症候に用いる。
方剤例⇒三黄瀉心湯
③行瘀破積:血瘀による無月経や腹痛時に用いる。
方剤例⇒復元活血湯
④清火湿熱:湿熱の黄疸時に用いる。
方剤例⇒茵蔯蒿湯
備考:生用すると瀉下の働きが強くなり、
酒を吹きかけ火で焙ると上部の火熱を清し活血化瘀の働きが強くなり、
酒とともに蒸すと瀉下の力が緩やかになり、
炒炭すると化瘀止血に働く。
参考文献:
『漢方概論』 創元社
『腹證奇覽』 盛文堂
『腹證奇覧 全』 医道の日本社
『傷寒雑病論』
『傷寒論を読もう』 東洋学術出版
『症状による中医診断と治療』 燎原
『中医臨床のための方剤学』
『中医臨床のための中薬学』 神戸中医学研究会
本多