この傷寒論のシリーズは、
当院の修行生によって毎週、水曜日の早朝に開かれる、
自主的な勉強会におけるメモ・備忘録となります。
古典の専門家によるものではなく、
一から学ぶ者の新鮮な目線を共有出来れば幸いに思います。


太陽病上篇より

8/24(水)

 

27条
太陽病、発熱悪寒、熱多寒少、脈微弱者、此無陽也、不可発汗、宜桂枝二越婢一湯。


条文に「熱が多く寒が少ない」とあるが、
これはどのような状況をあらわしているのだろうか?
また、太陽病特有の脈浮ではなく「脈微弱」とあり、
これは「陽気の衰弱を表す」とあるが、
具体的にここでの陽気とは何だろうか?

条文の最後にある「桂枝二越婢一湯」とは、
これまで学んできた桂枝湯2に、
越婢湯という方剤1が混合されたものである。
越婢湯とは清熱作用があるとされている。

この桂枝二越婢一湯の働きから考えると、
「熱が多く寒が少ない」とは、
陽気の不足によって表邪がやや裏に入り混み、
内熱としてこもった状態をいうのではないだろうか。
すなわちここでの陽気とは、
表邪と相対する衛気を指すのではないだろうか。

ここで衛気の弱りはどのようにしておこるのかを考えると、
もともと、ある程度の正気の弱りがあった可能性がある。
桂枝湯や越婢湯は、表邪や内熱を取り除くという効能に注目しがちであるが、
これら二つの方剤に含まれる薬味の中には営陰を補う効能もあり、
正気を充実させる働きもある。

また、この27条は、解釈の仕方によって、
「宜桂枝二越婢一湯」の部分が途中に入るとする考え方もある。
(以下のようになる)
太陽病、発熱悪寒、熱多寒少、宜桂枝二越婢一湯、脈微弱者、此無陽也、不可発汗。

しかし、上述のとおり、
正気を充実させる働きがこの方剤にあることから、
条文の並べ方は、はじめの通り
太陽病、発熱悪寒、熱多寒少、脈微弱者、此無陽也、不可発汗、宜桂枝二越婢一湯。
として、問題ないのではないだろうか。

最後に、「内熱」とは具体的に何だろうか?
表から裏に入り混んだとすると、陽明に伝経した可能性も考えられる。
しかし、陽明病特有の脈洪大とはなっていないことから、
表から最も侵襲されやすい上焦の裏に熱が留まった状態を
表しているのではないだろうか。
他の篇を学んでいく内に明らかになると思う。

まとめると、
宜桂枝二越婢一湯は、やや裏に入った熱を取り除きつつ
表邪を駆逐し、かつ正気を助ける働きがあるといえる。

 

参加者:下野、新川、本多、大原、小堀


返事を書く

Please enter your comment!
Please enter your name here