この傷寒論のシリーズは、
当院の修行生によって毎週、水曜日の早朝に開かれる、
自主的な勉強会におけるメモ・備忘録となります。
古典の専門家によるものではなく、
一から学ぶ者の新鮮な目線を共有出来れば幸いに思います。
太陽病上篇より
8/3(水)
条文の意味としては、
桂枝湯を服用後、大汗・脈洪大が現れた場合には
さらに桂枝湯を与えよということである。
一見、大汗・脈洪大という状態だけをみると
陽明病の記述のようにもみえる。
しかし、次の26条で
「大煩渇不解」(口渇あり)の場合に
陽明病であるとする旨の記述があり、
本条ではその「口渇」の記述がないことから
陽明病ではなく太陽病である場合を
いっていると思われる。
そのため桂枝湯を与えて営衛を調和させる
とあるのだろう。
ここで桂枝湯の働きについておさらいする。
まず、桂枝湯証とは、
表邪によって営衛不和がおこることで
自汗の症状があるものである。
これに対し、桂枝湯を用い、
微汗(すこし汗をかく)して表邪(風邪)を祛邪させると
営衛が調和して汗が止まる。
25条では桂枝湯を用いた後に「大汗」「脈洪大」とあり、
桂枝湯証といっても、外邪の侵入の度合いが強かったり、
営衛の虚損が大きかったりと、やや重いものではないだろうか。
ゆえに、桂枝湯を再び与えるとしていると思われる。
次に、「瘧」のような症状が
1日のうちに再び発する場合、
汗が出て必ず解するとある。
この場合には麻黄湯と桂枝湯を
混合した方剤である桂枝二麻黄一湯を用いるとされている。
「瘧のような症状」については23条にも出てきている。
23条では「1日に2、3度発す」とあり、
本条の「1日のうちに再発する」よりも
症状が強く出ているとも読める。
そのため、23条の方剤は、
本条よりも祛邪の性質を高めるべく
麻黄湯の配合を多くした桂枝麻黄各半湯が
用いられているのではないだろうか。
<25条 原文>
服桂枝湯、大汗出、脈洪大者、与桂枝湯、如前法。
若形似瘧、一日再発者、汗出必解、宜桂枝二麻黄一湯。
参加者:下野、新川、本多、大原、小堀