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腎・膀胱病弁証
腎は元陰と元陽を蔵している。元陰と元陽は、
人体の生育、発育の根源であり、臓腑機能活動の根源とされている。
そのため腎が損傷されると、諸臓はその影響を受けやすい。
また腎の病証には、虚証が多い。
腎陽虚、腎陰虚、腎精不足、腎気不固、腎不納気などである。
一方、膀胱の病変では、湿熱証が多くみられる。
腎病の常見症状:
腰や膝のだるさ、疼痛、耳鳴り、難聴、白髪、脱毛、陽萎、
遺精、男性不妊症、月経量減少、閉経、浮腫、二便異常など。
膀胱の常見症状:
頻尿、尿急、尿痛、尿閉、遺尿、小便失禁など
≪１≫腎陽虚証
腎陽は陽気の根本であるので、もし先天的に腎陽が不足していたり、
不節制や寒涼剤の飲みすぎにより腎陽を消耗すれば、腎陽虚衰になり、
命火が衰えて、以下のような病変が発生する。
【臨床所見】
腰や膝のだるさ、疼痛、畏寒、四肢が冷える、
特に下肢が冷える、精神不振、顔色がすぐれない、
陽萎、不妊、浮腫、特に下肢に多い、舌質淡胖、舌苔白、脈沈弱。
【証候分析】
①腰や膝のだるさ、疼痛:
陽虚のため、腰および骨格を温煦できないとおこる。
②畏寒、四肢が冷え:
陽虚のため、肌膚を温煦できないとおこる。
③精神不振、無力:
陽気不足のためにおこる。
④顔色がすぐれない:
陽虚のため、気血を推動する力が衰えておこる。
⑤陽萎、不妊:
腎陽不足、命門火衰により生殖機能が減退するためにおこる。
⑥浮腫:
腎陽が不足して水液代謝が失調し、膀胱の気化機能に障害が生じると、
水液が内停するためにおこる。
⑦舌質淡胖、舌苔白、脈沈弱:
腎陽虚の象。
【治 療】
治 法:温補腎陽
治療穴:足少陰経、督脈経穴を主に取る。
手 法:針にて補法を施す。灸法あるいは灸頭針も可。
≪２≫腎陰虚証
腎精はしっかりと貯蔵していなければならず、泄らしてはならない。
にもかかわらず不節制な性生活を送って陰精を損傷したり、
熱が陰分に入って真陰が破壊されたり、他臓の損傷が腎に波及したりすれば、
最終的に陰精が破壊されて腎陰虚という病理が発生する。
【臨床所見】
腰や膝のだるさ、疼痛、眩暈、耳鳴り、不眠、多夢。
男性では遺精、女性では経少、閉経あるいは崩漏がみられる。
消痩、頭髪が枯燥し、艶がなくなる、潮熱、盗汗、五心煩熱、
咽乾、顴部が紅潮する。舌質紅、少津、脈細数。
【証候分析】
①腰や膝のだるさ、疼痛:
腎陰不足のため、骨髄が弱くなっておこる。
②眩暈、耳鳴り:
腎陰不足のため、髄海が滋養されないとおこる。
③不眠、多夢:
心腎の水火は相互に助け合っている。
そのため、腎水が虚すと火水のバランスが失調し、
心火が亢進して心神に影響すると、これらの症状がおこる。
④遺精:
腎陰虚のため、相火が妄動しておこる。
⑤経少、閉経:
陰液が不足し、経血の来源が不足するためにおこる。
⑥崩漏:
陰虚陽亢のため虚熱が生じ、虚熱が血に影響しておこる。
⑦頭髪が枯燥し、艶がなくなる:
腎陰不足のため、毛髪が滋養されないことによっておこる。
⑧消痩、潮熱、盗汗、五心煩熱、咽乾、顴紅:
陰虚内熱の症候。
⑨舌質紅、少津、脈細数:
陰虚内熱の象である。
【治療】
治法:滋補腎陰
治療穴:足少陰経、任脈経穴を主に取る。
手法:針にて補法を施す。灸法は用いない。
以上、腎陽虚証、腎陰虚証について
書かせて頂きました。
北野
参考文献:
『針灸学基礎編』東洋学術出版社
『中医病因病機学』東洋学術出版社
『中医診断学ノート』東洋学術出版社
