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こんにちは、本多です。

前回に続き腹證奇覧に記載されております、
小柴胡湯についてです。

前回までの記事は↓こちら
小柴胡湯之證①
小柴胡湯之證②
小柴胡湯之證③

小柴胡湯之證④
小柴胡湯之證⑤


小柴胡湯は以下の生薬からなります。

柴胡さいこ

柴胡
柴胡

セリ科のミシマサイコ、またはその変種の根。

性味:苦・微辛・微寒
帰経:肝・胆・心包・三焦

主な薬効と応用
①透表泄熱:外感表証の表熱に用いる
方剤例→柴葛解肌湯

②疎肝解鬱:肝鬱気滞の憂鬱・イライラ・胸脇部の張痛・月経不順などの症候時に用いる。
方剤例→四逆散

③昇挙陽気:気虚下陥の慢性下痢・脱肛・子宮下垂などに用いる。
方剤例→補中益気湯

備考:昇発の性質を持つので、虚証の気逆不降や陰虚火旺・肝陽上亢・陰虚傷津などに
用いてはならない。



人参にんじん

人参
人参

ウコギ科のオタネニンジンの根。
性味:甘・微温・微苦
帰経:肺・脾

主な薬効と応用
①補気固脱:大病・久病・大出血・激しい嘔吐などで
元気が虚衰して生じるショック状態時に用いる。
方剤例⇒独参湯

②補脾気:脾気虚による元気がない・疲れやすい・食欲不振、
四肢無力・泥状~水様便などの症候時に用いる。
方剤例⇒四君子湯

③益肺気:肺気虚による呼吸困難・咳嗽・息切れ(動くと増悪する)・自汗などの症候時に用いる。
方剤例⇒人参胡桃湯

④生津止渇:熱盛の気津両傷で高熱・口渇・多汗・元気がない・脈が大で無力などの症候時に用いる。
方剤例⇒白虎加人参湯

⑤安神益智:気血不足による心身不安の不眠・動悸・健忘・不安感などの症候時に用いる。
方剤例⇒帰脾湯

備考:生化の源である脾気と一身の気を主る肺気を充盈することにより一身の気を旺盛にし、
大補元気の効能をもつ。すべての大病・久病・大出血・大吐瀉による元気虚衰の
虚極欲脱・脈微欲脱に対して最も主要な薬物。



黄芩おうごん

黄芩
黄芩

シソ科のコガネバナの周皮を除いた根。

性味:苦・寒
帰経:肺・脾 ・大腸・小腸・胆

主な効能と応用:
①清熱燥湿:湿温・暑温初期の湿熱欝阻気機による、
胸苦しい・腹が張る・悪心・嘔吐・尿が濃いなどの症候に用いる。
方剤例⇒黄芩滑石湯

②清熱瀉火・解毒・凉血:肺熱の咳嗽・呼吸促迫・黄痰などの症候時に用いる。
方剤例⇒清肺湯

③清熱安胎:妊娠中の蘊熱による下腹痛などに用いる。
方剤例⇒当帰散

備考:他薬の配合により様々な効用を示す。
柴胡と往来寒熱を除き、白芍と下痢を抑え、桑白皮と肺火を除き、
白朮と安胎に働き、山梔子と胸膈火熱を除き、荊芥・防風と肌表の熱を清解する。



甘草かんぞう

甘草
甘草

マメ科のウラル甘草の根。

性味:平・甘
帰経:脾・肺・胃

主な薬効と応用
①補中益気:脾胃虚弱で元気がない・
無力感・食欲不振・泥状便などの症候に用いる。
方剤例⇒四君子湯

②潤肺・祛痰止咳:風寒の咳嗽時に用いる。
方剤例⇒三拗湯

③緩急止痛:腹痛・四肢の痙攣時などに用いる。
方剤例⇒芍薬甘草湯

④清熱解毒:咽喉の腫脹や疼痛などに用いる。
方剤例⇒甘草湯

⑤調和薬性:性質の異なる薬物を調和させたり、偏性や毒性を軽減させる。

備考:生用すると涼性で清熱解毒に、密炙すると温性で補中益気に働く。

半夏はんげ

半夏
半夏

サトイモ科のカラスビシャクの塊茎。

性味:辛・温・有毒
帰経:脾・胃

主な薬効と応用:鎮静・鎮咳・去痰
①燥湿化痰:湿痰の咳嗽・多痰・胸苦しさ、或いは痰濁上擾による
眩暈・不眠・悪心などの症候時に用いる。
方剤例⇒二陳湯

②降逆止嘔:胃寒・胃熱・胃虚による嘔吐時に用いる。
方剤例⇒胃寒による嘔吐→小半夏湯
胃熱による嘔吐→黄連橘皮竹筎半夏湯
胃虚による嘔吐→大半夏湯

③消痞散結:痰熱による心窩部の痞えなどに用いる。
方剤例⇒半夏瀉心湯
備考:辛散温燥のため、陰虚の燥咳・傷津の口渇・出血には用いてはならない。



生薑しょうきょう

生薑
生薑

ショウガ科のショウガの根茎。

性味:温・辛
帰経:肺・脾・胃

主な薬効と応用:健胃・発汗・鎮咳
①散寒解表:風寒表証に辛温解表薬の補助として発汗を増強する。
方剤例⇒桂枝湯

②温胃止嘔:胃寒による嘔吐に、単味であるいは半夏などと使用する。
方剤例⇒小半夏湯

③化痰行水:風寒による咳嗽・白色で希薄な痰などの症候時に用いる。
方剤例⇒杏蘇散

備考:傷陰助火するので、陰虚火旺の咳嗽や瘡癰熱毒には禁忌である。



大棗たいそう

大棗
大棗

クロウメモドキ科の棗(なつめ)の果実。

性味:温・甘
帰経:脾

主な薬効と応用:鎮静・抗アレルギー
①補脾和胃:脾胃虚弱の倦怠無力・食欲不振・泥状便などの症状に用いる。
方剤例⇒六君子湯

②養営安神:営血不足による不眠・不安感などに用いる。
方剤例⇒甘麦大棗湯

③緩和薬性:薬力が強力な薬物に配合し、性質を緩和し脾胃の損傷を防止する。
方剤例⇒十棗湯

備考:湿盛の脘腹脹満・食積・虫積・齲歯・痰熱咳嗽などには禁忌となる。


前回の続きで、
小柴胡湯について
傷寒論の条文をみていきます。

144条では
病が少陽に伝わり血室に熱が侵入した場合に
小柴胡湯を用いて治療するとの記載がみられます。
まずは原文からです。

「婦人中風、七八日續得寒熱、
發作有時、經水適斷者
此爲熱入血室、其血必結、
故使如瘧狀、發作有時、小柴胡湯主之。」

「婦人が中風の病に罹り、
七~八日経ち再び悪寒発熱が一定の時間に出現する。
この時に月経が止まるのは、熱邪が血室に入ったからで、
熱邪は血と互いに凝結し合うため瘧状のように、
悪寒発熱が定期的に出現する。」

この場合の腹證では
小柴胡湯の胸脇苦満や心下痞硬と
血室(子宮)が位置する臍下にも
熱邪の反応が現れるようにも思います。

続いて229条では陽明病で少陽病症が出現する
場合についてです。

「陽明病、發潮熱、大便溏、小便自可、
胸脇滿不去者、與小柴胡湯主之。」

「陽明病で潮熱を発し、
大便は溏便、小便は正常で、
胸脇の膨満が除かれない場合は、
小柴胡湯を与えよ。」

邪は胸脇にあり、
腹部にまだ及んでいない状態を表しています。
もし、腹部の膨満感、譫語、大便硬、小便自利などがあらわれた場合は
陽明腑実証となります。

では、①229条の腹證
陽明腑実証の腹證はどのようなものになるでしょうか。

①の場合は少陽と陽明の合病で、
小柴胡湯を用いることから少陽に傾いた状態だと
みることができるのですが、
このあと、
大柴胡湯之證に
徐々に展開していくことを考えた場合、
小柴胡湯の腹證に比べると、
実の反応がきつく出るのではないかと思います。

②では、
邪が陽明位に完全に移行してしまうため、
例えば腹證奇覧の
調胃承気湯之證の腹證であれば
心下から臍上の間まで、
実の反応が広がります。

次回、
小柴胡湯之證⑦に続きます。


参考文献:

『漢方概論』 創元社
『腹證奇覽』 盛文堂
『腹證奇覧 全』 医道の日本社
『傷寒雑病論』
『傷寒論を読もう』 東洋学術出版
『症状による中医診断と治療』 燎原
『中医臨床のための方剤学』
『中医臨床のための中薬学』 神戸中医学研究会

本多

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