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こんにちは北野です。
前回の続きで肝胆弁証について
書いていきたいと思います。
《3》肝陽上亢証
陰血が虚損したために陽を滋養できなくなったものと、
気鬱が火に変化して心肝の火が強くなり、それが陰血を消耗したために
陰が陽を潤せず、肝陽を制御できなくなったものとがある。
【臨床所見】
眩暈、耳鳴り、頭部や目の脹痛、面紅、
目赤、イライラ、易怒、不眠、多夢、腰や膝のだるさ、
頭が重く足がふらつく、舌質紅、脈弦有力あるいは脈弦細数
【証候分析】
①眩暈、耳鳴り、頭部や目の脹痛、面紅、目赤:
肝腎の陰が不足し、肝陽が亢盛となり、
上衝するとおこる。
②イライラ、易怒:
肝の条達、柔順の性質が失調しておこる。
③不眠、多夢:
陰虚のため、心神不安となっておこる。
④腰や膝のだるさ:
腰は腎の府であり、膝は筋の府である。
肝腎陰虚となって筋脈が栄養されないと、
腰や膝がだるくなり無力となる。
⑤頭部が重く足がふらつく:
肝陽が上部で亢進し、陰液が下部で虚し、
上盛下虚となっておこる。
⑥舌質紅、脈弦有力あるいは脈弦細数
肝腎陰虚、肝陽亢進の象。
【治 療】
治 法:滋陰平肝潜陽
治療穴:足厥陰経、足少陰経を主に取る。
手 法:針にて補瀉兼施を行う。足少陰経穴を補し、
足厥陰経穴を瀉す。灸法は用いない。
《4》肝血虚証
肝は蔵血の臓であるが、肝血不足になる原因は、
生化機能の不足および失血過多と、長期に及ぶ疾病のための
消耗という2種類がある。
【臨床所見】
眩暈、耳鳴り、顔色は白っぽく艶がない、爪甲の色も悪く、脆くなる、
多夢、視力減退、あるいは夜盲症。四肢のしびれ。関節拘急不利、
手足のふるえ、肌肉がピクピク痙攣する。
婦人では月経量の減少、経色淡、あるいは閉経となる。
舌質淡、舌苔白、脈弦細。
【証候分析】
①眩暈、耳鳴り、顔色は白っぽく艶がない:
肝血不足のため、頭顔面部が十分に滋養されないためにおこる。
②爪甲の色も悪く、脆くなる:
肝は筋を主り、爪は筋の余である。肝血不足になり、
爪の栄養が悪くなるためにおこる。
③多夢:
血虚のため心神に影響しておこる。
④視力減退、夜盲症:
肝は目に開竅している。肝血が不足して目を滋養できないと、
目の障害が現れる。
⑤四肢のしびれ。関節拘急不利、手足のふるえ、肌肉が痙攣:
肝血が筋脈を滋養できないと、これらの症状が現れる。
⑥月経量の減少、経色淡、閉経:
肝血が不足し、血が衝、任脈に充足しないためにおこる。
⑦舌質淡、舌苔白、脈細:
血虚の象。
【治 療】
治 法:補益肝血
治療穴:足厥陰経、任脈経穴を主に取る。
手 法:針にて補法を施す。灸法は用いない。
《5》肝陰虚証
肝本体は陰であり、その機能は陽である。
肝血が充満し陰が陽を栄養していれば、
陰は安定し陽は緻密である。
ところがもともと陰虚の体質のために陽を潤すことができないと、
相火が荒れ狂って肝陰が被害を受けるので、
肝陰は欠損し、陽亢という病理が出現する。
【臨床所見】
頭暈、耳鳴り、両目が乾く、顔面がほてる、
脇肋部の灼熱痛、五心煩熱、潮熱盗汗、
口咽乾燥、手足のふるえ、舌質紅少津、脈弦細数。
【証候分析】
①頭暈、耳鳴り、両目の乾き:
肝陰不足のため頭部や目に滋養できないためにおこる。
②顔面部のほてり:
虚火上炎の現れである。
③脇肋部のほてり:
肝絡に虚火が作用しておこる。
④五心煩熱、午後の潮熱、盗汗:
虚熱の症候
⑤口咽部の乾き:
陰虚内熱による。
⑥手足のふるえ:
肝陰虚となり、筋脈を滋養できないとおこる。
⑦舌質紅少津:
陰虚内熱の象である。
⑧脈弦細数:
肝陰虚で虚熱があることを現している。
【治 療】
治 法:滋補肝陰
治療穴:足厥陰経、任脈経穴、本臓の兪募穴、足少陽穴を主に取る。
手 法:針にて補法を施す。灸法は用いない。
以上肝陽上亢証、肝血虚証、肝陰虚証について
書かせて頂きました。
北野
参考文献:
『針灸学基礎編』東洋学術出版社
『中医病因病機学』東洋学術出版社
『中医診断学ノート』東洋学術出版社