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こんにちは、大原です。
前回の続き(霊枢 九鍼十二原(第1))です。
「上守機」(上工、すなわち技術のある医家は「機」を守る)について、
この「機」とは何かをもう少し考えていきましょう。
原文をみていきます。
・・・(前略)・・・
刺之微、在速遅。
麤(そ)守関、上守機。
機之動、不離其空。
(鍼の刺法の微妙なところは、遅速に在り。
下工は「関」を守り、上工は「機」を守る。
機の動きは、其の空(くう)を離さず。)
(↑一部、意訳あり)
上工が守る「機」とは、
「空」と大きく関係するとあります。
では「空」とは何を意味するのでしょうか?
原文の続きをみていきましょう。
空中之機、清静而微。
其来不可逢、其往不可追。
知機之道者、不可掛以髪。
不知機道、叩之不発。
知其往来、要与之期。
・・・(以下続く)
(「空中」の「機」とは、清浄にして微妙なものである。
その来るや逢うべからず、その往くや追うべからず。
「機」を知る道というものは、髪をもって掛くるべからず。
「機」を知らない道は、之を叩くこと発せず。
その往来を知り、要、この期とする。)
・・・続きを読んでみても、
「空」について定義づけされておらず、よく分かりません。
さて、黄帝内経の解説本や翻訳サイトでは、
「空」を「経穴」と訳しているものをみかけます。
これは、上記原文に出てくる
「空」にて「気の往来を伺う」という記述で、
「気の往来は、経脈の反応点である『経穴』でみるから、
きっと『空』は『経穴』のことではないだろうか」
という解釈がなされているためです。
この解釈をもとに考えると、
上工とは、「空」すなわち「経穴」の気の往来、
すなわち虚実をとらえて治療の機を守る
ということになります。
しかし、「空」とは「経穴」であるということは
どこにも記載がありません。
また、九鍼十二原以外に「空」の記述があるかどうか
探してみましたが、見つかりませんでした。
(見つけた方がいらっしゃいましたら、教えてください。)
個人的に、なんとなくですが
「空」とは「経穴」というよりも
もっと深い意味があるのではないかと感じます。
思いついたのが
仏教に出てくる「色即是空、空即是色」という言葉です。
(「しきそくぜくう、くうそくぜしき」と読みます)
意味は、この世の中の物は、色があって目に見えるが、
その実体は目に見えない空虚なもの、すなわち空である、
ということのようです。
仏教の用語が
黄帝内経に取り入れられたのかどうかは分かりませんが、
上工は、機、すなわち治療における機をとらえる際、
空虚な実体のないものをとらえているという解釈も
できるのではないでしょうか。
参考文献:
『黄帝内経 霊枢 上巻』 東洋学術出版社
*画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
ぜひ参考文献を読んでみて下さい。
こんにちは。
いつも皆さんから勉強させて頂いております。
黄帝内経は本当に奥深いですね。
今、丁度張仲景の金匱要略方論を勉強している所なのですが、「上工」についての張仲景の考察が金匱要略方論の初っ端にありますね。
「上工治未病」として、どういう事か説明してくれています。肝の病気を診る時に脾への影響を考え、脾を実する、しかし脾が四季を通じて健康ならば、その必要なし。
そういう事から、病気の動向を熟知し、患者の体質や状況も配慮しながら先回りした対処をするのが上工だ・・・と言うのが私の解釈ですがどうでしょう(汗
とにかくこの書物の一番最初にこの見解を持ってくる事で、このコンセプトを張仲景がどれだけ大事だと思っていたかは判りますね。
Abeさん、コメント頂きありがとうございます。
記事をお読みになられているとのことで嬉しく思います。
自分もまだまだ不勉強で、
上工についての記載が金匱要略方論の最初にもあることを
教えて頂きありがとうございます、
大変勉強になりました。
上工とはどのような者か、
自分もAbeさんと同じ意見で、
今おこっている症状だけにこだわるのではなく、
気候や体質なども考慮して治療を施すようなイメージです。
実はこの次の記事(上工と下工 その3)にて、
その辺りの内容を書かせて頂いておりますので、
またご感想などございましたら
よろしくお願いします。