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張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。
今回の傷寒論は弁少陰病脈証并治 三百二十四章。
この章では、胸中に邪実がある場合と、
膈上に寒飲がある場合の証治について詳しく述べております。
三百二十四章
少陰病、飮食入口則吐、
心中溫溫欲吐、復不能吐。
始得之、手足寒、脉弦遲者、
此胸中實、不可下也、當吐之。
若膈上有寒飮、乾嘔者、不可吐也、
當溫之、宜四逆湯。二十三。
和訓:
少陰病、飲食口に入れば則ち吐し、
心中温温として吐せんと欲し、復た吐すること能わず。
始め之を得、手足寒え、脉弦遅なるものは、
此れ胸中実し、下すべからざるなり。
当に之を吐すべし。若し膈上に寒飲あり、
乾嘔するものは、吐すべからざるなり。
当に之を温むべし。四逆湯に宜し。二十三。
・少陰病、飮食入口則吐、心中溫溫欲吐、復不能吐
少陰病で飲食が口に入ると、すぐに吐いてしまう。
心中がムカムカして吐きたいが吐けない。
この”吐きたいが吐けない”症状は
痰の実邪が胸郭に膠着して胸陽を阻塞し、
気機不暢となったことにより生じたものである。
・始得之、手足寒、脉弦遲者、此胸中實、不可下也、當吐之
痰が胸陽を阻塞しているから、初期は手足寒となる。
気血運行が阻害されるので脈弦遅をみる。
胸中に痰実があるので飲食物が口に入るとすぐに吐く。
実邪が上方にあり、上越しているときには、
無理に攻下させて下から除こうとしてはいけない。
このとき、邪実を傷つけないように除く目的で
催吐法を行って除いていく。
・若膈上有寒飮、乾嘔者、不可吐也、當溫之、宜四逆湯
「欲吐、復不能吐」と二百八十二章にある少陰陽虚の「欲吐不吐」
(こちらを参照→【古医書】傷寒論: 弁少陰病脈証并治 二百八十一章・二百八十二章)
これらを区別する必要がある。
欲吐不吐
寒邪が上犯して胃に入り、
水飲と合わさって停滞したのであり、
程度は軽く、たびたび乾嘔が出現する。
これは少陰陽虚が甚だしく、
邪と争う抵抗力がないことにより生じたのであるから、
四逆湯で回陽・温中を行い、寒邪と水飲を共に除いていく。
これに邪実を治療する催吐法を妄りに用いれば
必ず陽が渇絶する変証が生じるので催吐法を用いてはいけない。
提要:
胸中に邪実がある場合と、膈上に寒飲がある場合の証治について。
『現代語訳 宋本傷寒論』訳を使用:
少陰病に罹り、飲食物を口にしたとたんに吐き出し、
胸苦しく悪心して吐こうとするが、吐出できない。
病初期に、もし手足が冷たく、脈象が弦遅で有力ならば、胸中に実邪が存在する。
これに攻下法を用いてはならず、吐法を用いなければならない。
もし陽虚に起因して膈上に寒飲の邪を生じ、
それで乾嘔する場合は、吐法は用いられず、
温法で治療すべきで、四逆湯が適当である。第二十三法。
参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』 績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社
生薬イメージ画像:為沢 画
※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。
為沢