張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。
今回の傷寒論は弁少陰病脈証并治 三百十九章。
この章では、少陰病で水熱が互いに結した場合の証治について
詳しく述べております。
三百十九章
少陰病、下利六七日、
欬而嘔、渇、心煩不得眠者、豬苓湯主之。方十八。
豬苓去皮 茯苓 阿髎 沢瀉 滑石去皮
右五味、以水四升、先煮四物、取二升、
去滓、内阿髎烊尽、溫服七合、日三服。
和訓:
少陰病、下利して六七日、
欬して嘔し渇し、心煩して眠るを得ざる者は、猪苓湯之を主る。方十八。
猪苓皮を去る 茯苓 阿髎 沢瀉 滑石各一両
右五味、水四升を以て、先ず四物を煮て、二升を取り、
滓を去り、阿髎を内れ烊尽し、七合を温服し、日に三服す。
・少陰病、下利六七日、
欬而嘔、渇、心煩不得眠者、豬苓湯主之
少陰腎は水臟であり、腎は水液の代謝と排泄に対して
重要な作用をおこなっている。
腎には腎陰、腎陽があり、
陽虚になると水を化せなくなり、陰虚もまた水停をおこさせる。
少陰病で腎水の気化作用が失調し、
脾陽の津を全身に巡らせる作用が失われ、
陽虚が進んで中気下陥となった下痢をみる。
そして下痢が数日も続いて真陰が虚し、
津液が滲み出て水穀を分けることができないので、
小便不利となっている。
少陰病で6〜7日経過し、
病が陰より陽に伝わっても、下痢がまだ治まらないのは、
陰虚火旺になったからである。
さらに心煩不得眠も同じ病因より起こる。
小便不利は水を気に化すことができないためであり、
口渇は津が上方に達しないことにより生じる。
咳と嘔吐は、心火の熱と裏水が互いに結し、
三焦に氾濫して肺と胃に迫ったからである。
一般的に、
久しく下痢をして止まらない場合は、利尿法を行っていく。
それが陰虚有熱によるものであれば、
猪苓湯を用いて清熱・育陰して利尿を行えば、
諸症状は治っていく。
猪苓湯
こちらを参照→【古医書】傷寒論: 弁陽明病脈証并治 二百二十二章・二百二十三章
提要:
少陰病で水熱が互いに結した場合の証治について。
『現代語訳 宋本傷寒論』訳を使用:
少陰病に罹り、下痢して六七日が経ち、咳嗽、嘔吐、口渇があり、
イライラして安眠できない場合は、猪苓湯で治療する。
処方を記載。第十八法。
猪苓皮を除く 茯苓 阿髎 沢瀉 滑石各一両
右の五味は、四升の水で、まず四味を、二升になるまで煮て、
滓を除き、阿髎を入れて溶解し、七合を温服し、日に三回服用する。
参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』 績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社
生薬イメージ画像:為沢 画
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是非参考文献を読んでみて下さい。
為沢