下野です。
高い建物が増えると
間を縫うように強い風が通っていき、
非常に寒さを感じさせられます。
特に夜遅くは冷え込みもありますので、
カゼを引かないように要注意ですね。
では「薬性の歌」の記事に参ります。
【原文】
鼠粘子辛、能消瘡毒、隱疹風熱、咽疼可逐。
茵陳味苦、退疸除黃、瀉湿利水、清熱為涼。
蔓荊味苦、頭痛能医、拘攣湿痺、涙眼堪除。
兜苓苦寒、能薫痔漏、定喘消痰、肺熱久嗽。
百合味甘、安心定胆、止嗽消浮、癰疽可啖。
<第二十九に続く>
【解説】
鼠粘子は辛。
瘡毒を治す効能があり、
蕁麻疹や風熱の疾患に用いる。
咽の痛みを追い払う。
茵陳は味苦。
黄疸を治す為に、
湿を瀉して、水を流し、
熱を抜かして体をスッと(清涼)させる。
蔓荊は味苦。
頭痛を治療に効果があり、
湿痺の拘縮、攣縮にも用いる。
涙流を除く。
兜苓は苦寒。
痔漏に効能があり、
喘を鎮めて、痰を消す。
肺熱の長引く咳嗽に。
百合は味甘。
心を安じ、胆を定め(しずめ)て
咳嗽、浮腫を治す。
癰疽(悪性の腫物)を取る。
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◉牛蒡子(鼠粘子)
キク科ゴボウの成熟した果実。
性味:辛・苦・寒
帰経:肺・胃
効能:
①疎散風熱
・風熱表証の発熱や悪風、咽の痛みに。
方剤例 → 銀翹散。
②利咽散結
・風熱による咽喉の痛み、腫れ、発赤や化膿に。
方剤例 → 牛蒡湯・銀翹馬勃散・普済消毒散。
③祛痰止咳
・風熱、肺熱の咳嗽や痰等の症状に。
④宣肺透疹
・麻疹の治りが悪い時や蕁麻疹に。
⑤解毒消腫
風熱や熱毒の皮膚化膿症に。
◉茵陳
キク科カワラヨモギの幼苗。
性味:苦・微寒
帰経:脾・胃・肝・胆
※為沢先生の解説はこちら
→【古医書】傷寒論: 弁陽明病脈証并治 二百三十六章
カワラヨモギ(河原蓬)の名前の由来は、
字の如く河原に生えているという理由だそうです。
◉蔓荊子
クマツヅラ科のハマゴウ、
ミツバハマゴウの成熟した果実。
性味:辛・苦・微寒
帰経:膀胱・肝・胃
効能:
①疏散風熱・清頭目・止痛
・風邪・風熱の頭痛や眩暈に。
方剤例 → 羗活防風湯・菊芎飲。
・風熱による目の充血に。
・風火の歯痛や歯茎の腫れや痛みに。
②祛風除湿
・風湿痺の関節痛や筋肉の引き攣りに。
方剤例 → 羗活勝湿湯。
◉馬兜鈴(兜苓)
ウマノスズクサ科のマルバウマノスズクサ、
ウマノスズクサの成熟した果実。
性味:苦・微辛・寒
帰経:肺・大腸
効能:
①清肺降気・止咳平喘
・肺熱の咳嗽や呼吸困難に。
方剤例 → 馬兜鈴湯。
・肺陰虚の慢性的な咳嗽、呼吸促迫、血痰などに。
方剤例 → 補肺阿膠湯。
②清腸消腫
・腸熱による痔や下血、肛門痛などに。
◉百合
ユリ科のユリ属の植物か、
同属植物の鱗茎の鱗片。
性味:甘・微寒
帰経:心・肺
効能:
①潤肺止咳
・肺陰虚の乾いた咳や痰、血痰などに。
方剤例 → 百合固金湯・百花膏
②清心安神
・熱病の後期で、未だ未清での
焦燥感や動悸、不眠、多夢などの症状に用いる。
方剤例 → 百合知母湯・百合地黄湯。
<参考文献>
『万病回春解説』 創元社
『万病回春.巻之1-8』 早稲田大学 古典籍総合データベース
『中医臨床のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
『中医病因病機学』 東洋学術出版社
※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。
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