緑地公園駅前の公園にて
緑地公園駅前の公園にて(12月13日撮影)
(クリスマス用のライトが飾られてました。サンタさんも喜んでいますね。)

大原です。
前回の続きで、脾経の絡穴は
なぜ二つあるのか?についてです。

霊枢の記述の順番からすると、
脾経の大包穴が15番目に書かれていることから、
「公孫」は普通の絡穴、
「大包」は特別な絡穴である
ということが推察されます。

十五絡穴のうち、体幹部にあるのが
鳩尾、長強、大包の三つであることからも
そのように言えると思います。

<霊枢経脈篇より、「大包」穴について>

脾之大絡、名曰大包。
(脾の大絡は、名付けて大包という。)

出淵腋下三寸、布胸脇。
(淵腋の下三寸に出て、胸脇部に散布する。)

→これも、現在の教科書の記述とニュアンスが異なります。
(教科書では「部位:側胸部、第6肋間、中腋窩線上」とあります。
また、参考までに、「淵腋(えんえき)」穴は
胆経上の経穴として定められ、
教科書では「部位:側胸部、第4肋間、中腋窩線上」とあります。

実則身尽痛。
(邪実が集まれば身痛み、)

虚則百節尽皆縦。
(正気が虚すれば全身の骨節が弛緩する。)

→「縦」という字には、
「はなつ、ゆるす、ほしいまま」
という意味があるようです。
そこから、「固まっているはずものもが緩む=弛緩する」
という解釈になっていると思われます。

此脈若羅絡之血者、皆取之脾之大絡脈也。
(この脈はあらゆる絡の血を網羅しているから、治療は皆、脾の大絡を取る。)

参考までに、「公孫」穴については
以下のように記されています。
(途中まで訳は省略します)

<霊枢経脈篇より、「公孫」穴について>

足太陰之別、名曰公孫。
去本節之後一寸、分走陽明。
其別者、入絡腸胃。

厥気上逆則霍乱。
(厥気が上に逆流すると急性の腹痛となる。)
→霍乱(かくらん):激しい吐き気や下痢を伴う急性の病をいうようです。

実則腸中切痛。
(邪気が集まると腸の中が切られるように痛み、)

虚則鼓脹。
(正気が虚すと腹が脹る。)

取之所別也。
(治療は、公孫穴を取る。)

上記のように、
「公孫」穴は、腸など腹部に関係があると記され、
「大包」穴は、全身に関わるものであると
記されていることが分ります。

大包穴とは、「全身の絡脈の血を網羅している
という記述がありましたが、
血を統括しているのは五臓六腑の中の
脾であることから、昔の人は
「大包」と脾は関連が深いと
考えたのではないでしょうか?

すなわち、
先に「脾の絡穴を二つにしておこう」と
考えたのではなく、
大包穴の性質から、
「大包穴は脾に関連が深いことから
脾の絡穴は二つになるけれども
特別に脾の絡穴としておこう。
全身に関わるから『大絡』としておこう」と
いう感じで決めたのではないでしょうか?

さらに、五臓六腑の中で
脾は後天の本であり、とても重要です。
脾が重要視されていたことからも
脾経の絡穴は二つで良いのでは、
と古人は考えたのかも知れません。


参考文献:

『黄帝内経 霊枢』 東洋学術出版社
『新版 経絡経穴概論』 医道の日本社

*画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
ぜひ参考文献を読んでみて下さい。

大原

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