こんにちは、本多です。
下の写真は11月中旬の日の出、
寒さが増すにつれて、
良い表情を見せてくれるように感じます。
冬の寒さは苦手ですが、
その中での楽しみとしておきます(^_^)
今回は腹證奇覧に掲載しております、
大建中湯についてです。
大建中湯
図の如き塊物、腹中より上衝して、心下にせまり、
腹皮の上にあらわれ、起って頭足あるが如く動き、
大いに急痛して、死せんと欲す。
其の塊物手を以て按せんとすれども、痛み甚だしくして触れ近づくべからず。
乾嘔して、身体冷汗流るるが如くなるもの、
大建中湯の證とす。
較軽のものは、時々心下に攻り上るものあるを覚えて、
乾嘔を発し、心腹急痛、身冷ゆるものを此の方の證とす。
此の方・応に桴の響に応ずるごとく、咽を下れば忽ち愈ゆ。
證に曰く、
「心胸痛、大寒痛ありて、飲食能わず、
腹中の寒・上衝し皮に起り出で、頭足有るを見る。
上下痛み、而して触れ近づくべからず」
此の證、下焦の寒気上衝して、痛みを発するなり。
故に寒痛といい、寒上衝というもの、見るべし。
皮起り出てて、頭足有るをみるとは、
むくむくと、動き起るを以ていうなり。
甚だしきものは、塊物、瓜の如きの大きさを覚う。
然れども、上下ともに痛み甚だしきを以て、
其の塊、的に按すべからず。
痛みの愈るときは、塊なきもあり、存するもあり。
婦人、積冷滞下のものに多し。
委しくは、奇覧後編にあり、併せみるべし。
【大建中湯:組成】
蜀椒(しょくしょう)
ミカン科のサンショウ属植物、イヌザンショウなどの成熟した果実の果皮。
性味:辛・熱・小毒
帰経:脾 ・胃・腎
主な薬効と応用:
①散寒止痛:中寒による激しい腹痛・冷え・嘔吐、
摂食障害などの症候時に用いる。
方剤例→大建中湯
②解毒駆虫:回虫など腸内寄生虫による腹痛、
嘔吐などの症候時に用いる。
方剤例→椒榧丸
備考:陰虚陽亢には使用してはならない。
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乾姜(かんきょう)
ショウガ科のショウガの根茎を乾燥したもの。
性味:大辛・大熱
帰経:心・肺・脾・胃
主な薬効と応用:解熱・鎮痛・鎮咳・抗炎症
①温中散寒:脾胃虚寒で腹が冷えて痛む・腹鳴・
不消化下痢・嘔吐などの症候時に用いる。
方剤例→理中湯
②回陽通脈:陽気衰微・陰寒内生による亡陽虚脱で、
四肢の冷え・脈が微弱などの症状時に用いる。
方剤例→四逆湯
③温肺化痰:肺の寒陰による咳嗽・呼吸困難・
希薄な多量な痰・背部の冷感などの症候時に用いる。
方剤例→小青竜湯
備考:辛熱燥烈のため、陰虚内熱・妊婦には禁忌とする。
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人参(にんじん)
ウコギ科のオタネニンジンの根。
性味:甘・微温・微苦
帰経:肺・脾
主な薬効と応用
①補気固脱:大病・久病・大出血、
激しい嘔吐などで元気が虚衰して生じるショック状態時に用いる。
方剤例⇒独参湯
②補脾気:脾気虚による元気がない・疲れやすい・食欲不振、
四肢無力・泥状~水様便などの症候時に用いる。
方剤例⇒四君子湯
③益肺気:肺気虚による呼吸困難・咳嗽、
息切れ(動くと増悪する)・自汗などの症候時に用いる。
方剤例⇒人参胡桃湯
④生津止渇:熱盛の気津両傷で高熱・口渇、
多汗・元気がない・脈が大で無力などの症候時に用いる。
方剤例⇒白虎加人参湯
⑤安神益智:気血不足による心身不安の不眠、
動悸・健忘・不安感などの症候時に用いる。
方剤例⇒帰脾湯
備考:生化の源である脾気と一身の気を主る肺気を充盈することにより
一身の気を旺盛にし、大補元気の効能をもつ。
すべての大病・久病・大出血・大吐瀉による元気虚衰の
虚極欲脱・脈微欲脱に対して最も主要な薬物。
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膠飴(こうい)
糯米粉・粳米粉・小麦粉などに麦芽を加えて加工製精した飴糖。
性味:甘・微温
帰経:脾・胃・肺
主な薬効と応用:
①補虚建中・緩急止痛:中気不足の虚寒腹痛の症状などに用いる。
方剤例→小建中湯
②潤肺止咳:肺虚の慢性乾咳・呼吸困難・無痰などの症候時に用いる。
方剤例→大建中湯
備考:助湿生熱してしまうので、湿熱内鬱には用いてはならない。
【大建中湯:効能】
中焦陽虚・陰寒上逆に対して
温中補虚・降逆止痛の効能がある。
参考文献:
『生薬単』 NTS
『漢方概論』 創元社
『腹證奇覧 全』 医道の日本社
『傷寒雑病論』
『傷寒論を読もう』 東洋学術出版
『中医臨床のための方剤学』
『中医臨床のための中薬学』 神戸中医学研究会
画像:
『腹証奇覧 正編2巻・後編2巻』
京都大学貴重資料デジタルアーカイブより
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00004914
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本多