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張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。

今回の傷寒論は
弁少陰病脈証并治 二百九十八章・二百九十九章・三百章。
各章それぞれ、少陰病の危候について詳しく述べております。


二百九十八章

少陰病、四逆、惡寒而身踡、脉不至、不煩而燥者、死。

和訓:
少陰病、四逆し、悪寒して身踡り、脉至らず、煩せずして燥するものは死す。


少陰病、四逆、惡寒而身踡
少陰病で真陽が虚微になり、
しかも中焦で陽が生じないので四肢厥冷となっている。
陰盛無陽で全身に行き渡らないから身踡となる。

脉不至、不煩而燥者、死
陽虚がここまで極まれば、心火が衰微して
気が充分に満ちないので脉力が至らなくなるのである。
これは陽絶の悪候である。
また煩証は出現せず燥証が現れるのは、
純粋な陰証であり、陽気はすでに失われている。
これは死証である。

提要:
少陰病で陰盛陽脱の危候について。

『現代語訳 宋本傷寒論』訳を使用:
少陰病に罹り、四肢は逆冷し、
悪寒があって身体を丸めて横たわり、
脈拍は触知不能で、いらいらしていないが
せわしなく手足を動かしているのは死証である。


二百九十九章

少陰病、六七日、息高者死。

和訓:
少陰病、六七日にして、息高きものは死す。


少陰病、六七日、息高者死
呼吸は腎と肺の協同作業により行われるが、
呼吸困難は吸気の困難であり、
呼気が多く吸気が少ないために生じる症状である。
つまり真気は出るが入らない状態をいう。

少陰病で6〜7日経過してこの症状をみるのは、
真陽が渙散して根気がすでになくなっているために
腎に納められず、肺気の粛降がなされなくなって
独り上焦に浮遊しているからである。
この場合は陽を生じる気機がすでにないので死証である。

提要:
少陰病で腎気下絶の危候について。

『現代語訳 宋本傷寒論』訳を使用:
少陰病に罹り、第六七病日の頃、
浅表性で促迫した呼吸が出現すると死に至る。


三百章

少陰病、脉微細沈、但欲臥、汗出不煩、自欲吐、
至五六日自利、復燥不得臥寐者、死。

和訓:
少陰病、脉微細沈、但だ臥せんと欲し、
汗出でて煩せず、自ら吐せんと欲し、五六日に至りて自利し、
復た煩燥して臥寐するを得ざるものは死す。


少陰病、脉微細沈、但欲臥、汗出不煩、自欲吐
「脉微細沈、但欲臥」は少陰病提綱証で陰虚有寒を示す。
また脉微細沈は裏の陰寒が盛んであることを示す。
陽虚で気化して表を衛らず、逆に外に洩れているので冷汗となる。
さらに真陽不足で君火の勢いが衰えているので
煩は生じないが、陰寒が上逆して胃を犯すので欲吐となるのである。
このような場合は、ただちに応急処置として
回陽温中の法を行われなければならない。
それにより陽の回復がみられれば、まだ助かる可能性はある。

至五六日自利、復燥不得臥寐者、死
回陽温中の法を行わず、さらに5〜6日経過すれば
陰経の主る時期になるので、さらに陰盛で、
しかも陽気が脱する亡陽となる。
「自利」は陰寒が内逼して真気が外に現れたもの
「燥不得臥寐」は虚火暴脹によるものである。
この場合も不治である。

提要:
少陰病で陰盛陽脱の危候について。

『現代語訳 宋本傷寒論』訳を使用:
少陰病に罹り、脉は微細沈で、ひたすら横になって眠たがったり、
汗は出るが心煩せず、嘔吐したがり、第五六病日になると下痢がおこって、
その上しきりに煩燥して静かに眠れないものは死証である。


参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』   東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』  績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社

生薬イメージ画像:為沢 画

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

為沢

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