こんにちは、大原です。
傷寒論の146条から150条にかけては、
太陽病と少陽病の併病について
述べられています。
条文146条
柴胡桂枝湯証について
(参考リンク:【古医書】傷寒論: 弁太陽病脈証并治(下)百四十六章)
太陽病が治癒しないうちに少陽病も患い、
太陽病も少陽病も比較的軽症の状態について
述べられています。
この場合、桂枝湯と小柴胡湯を半量ずつ合わせた
柴胡桂枝湯が主治するとされています。
参考:桂枝湯と小柴胡湯の組成(「中医臨床のための方剤学」より)
<桂枝湯>
組成:桂枝9g、白芍9g、炙甘草6g、生姜9g、大棗6g。
<小柴胡湯>
組成:柴胡15g、黄芩9g、人参6g、半夏9g、炙甘草6g、生姜9g、大棗4g。
条文147条
太陽病に対して一度発汗法を用いたが、
解除しきれないまま攻下法を用いてしまったことで
太陽病が残り、また、病邪が少陽に入り、さらに
太陰脾の陽気まで損傷してしまった場合
(参考リンク:【古医書】傷寒論: 弁太陽病脈証并治(下)百四十七章)
太陽、少陽、太陰の3証
(太陽:頭汗出デ(残存する表証を表しているとされる)
少陽:胸脇満シテ微カニ結シ、小便利セズ、渇シテ嘔セズ・往来寒熱シテ心煩スル
太陰:条文に記述は無いが、太陰脾の虚寒がみられるとされている)
に対して、小柴胡湯の加減法の一つと考えられている
柴胡桂枝乾姜湯が主治します。
<柴胡桂枝乾姜湯>
別名:柴胡桂姜湯、柴胡姜桂湯、姜桂湯
組成:柴胡15g、桂枝9g、乾姜6g、天花粉12g、黄芩9g、牡蛎6g、炙甘草6g。
太陽、太陰 ← 桂枝(表証を解する)、乾姜(脾の虚寒をとる)
少陽 ← 柴胡(少陽枢機を疎通させる)、黄芩(邪熱と胆火を清泄する)
天花粉は清熱生津し、牡蛎とともに散結逐飲に働く。
炙甘草は諸薬を調和する。
条文148条
陽微結と陰結について
(参考リンク:【古医書】傷寒論: 弁太陽病脈証并治(下)百四十八章)
陽結とは、胃に邪熱が入り大便が乾燥して便秘になる
陽明腑実証のことをいいます。
陽微結とは、邪熱は胃に伝わっているが、
その一部がいまだ太陽に残存している状態のことです。
これらに対して陰結とは、脾や腎の陽虚があり、
虚寒によって便秘することをいいます。
陽微結と陰結は、どちらも沈脈を呈しますが、
陽微結では発汗がみられ、
陰結では発汗がみられません。
陽微結は病邪が半表半裏にあり、
少陽の枢機が失調していることから
小柴胡湯が主治するとされています。
条文149条
少陽病に対して、和法ではなく
瀉下薬を用いてしまった場合の
3通りの予後について
(参考リンク:【古医書】傷寒論: 弁太陽病脈証并治(下)百四十九章)
①病人の正気が強い場合には、邪気が内陥せず、
邪は少陽の位置に留まったままですので
小柴胡湯を用いるとされています。
②邪が内陥したことで大結胸証を形成した場合、
大陥胸湯を用い、結びついた邪熱と痰飲を
除くとされています。(131条〜137条)
(大陥胸湯について参考記事:太陽病 その13)
③脾胃の気を損傷して心下痞を形成した場合、
半夏瀉心湯を用いるとされています。
<半夏瀉心湯>
組成:半夏9g、黄芩9g、乾姜6g、人参6g、炙甘草6g、黄連3g、大棗4g。
方意:辛散の半夏・乾姜と苦降の黄芩・黄連により、
辛開苦降して心下痞を開竅する。
乾姜で下寒を温め、苦寒の黄芩・黄連で上熱を清する。
降逆の半夏で胃気上逆をしずめ、
益気健脾の人参・炙甘草・大棗で脾昇を強める。
条文150条
太陽病と少陽病の併病に対して、
誤って瀉下剤を用いた場合について
(参考リンク:【古医書】傷寒論: 弁太陽病脈証并治(下)百五十章)
誤って下した場合、結胸を形成して
心下が硬満し、下痢が止まらず
水分を摂取しようと水を飲んでも
吐いてしまうということが述べられています。
ここで、結胸証では下痢ではなく
便秘になることから、
本条文の状態と結胸証とを
鑑別することができます。
(参考リンク:太陽病 その14)
参考文献:
『基礎中医学』 燎原
『傷寒論を読もう』 東洋学術出版社
『中医弁証学』 東洋学術出版社
『中医臨床のための方剤学』 神戸中医学研究会
*画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
ぜひ参考文献を読んでみて下さい。
大原