こんにちは、本多です。

曼珠沙華
曼珠沙華

早朝に撮影した曼珠沙華(マンジュシャゲ・彼岸花のこと)。
撮影した後に気付いたのですが、
白い曼珠沙華は珍しいようです♪

この白い曼珠沙華から、
少し離れた場所に
驚く程の量の赤い曼珠沙華が咲いていたのですが
この白だけがポツリと寂しそうに咲いていました。

それでは、
今回は腹證奇覧に掲載しております、
黄連湯についてです。

 

黄連湯

黄連湯
黄連湯

図の如く、
胸中に熱ありて、モヤモヤとして苦しく、
心下より臍上に至りて痛み、
之れを按すに、硬くして乾嘔する者。黄連湯の證となす。
茶談に云う
「舌胎の模様、置くほど厚くかかり少し黄色を帯びて、
舌上潤滑なるもの、乾嘔の證あるときは、
腹痛なしといえども、此の方を用いて効あり」と云々。
論に曰く、
「傷寒、胸中熱有り、胃中邪気有り、
腹中痛み、嘔吐せんと欲する者、黄連湯之を主る」
傷寒の邪、胸腹の間にせまりて、胸中に熱あり、
胃中の邪気にて、腹中痛み、嘔吐せんと欲して実に嘔吐せず、
但、乾嘔の気味あるなり。
案ずるに、胸中の熱は、心煩の状を得て知るべし。
胃中の邪気は、腹中痛むを以て之を知るなり。
然る則は、此れ、腹痛、中脘臍上の間に於て、之を得べし。
嘔吐を欲するものは、痰あり・邪気あるを以てなり。
方中、黄連を主として心胸の熱を解し、
半夏・乾姜は結滞の水を解し、人参は胃口を開き気逆を降し、
甘草・大棗は急をゆるめ引痛を和し、
其の桂枝あるものは、邪気を逐い正気を発して、衝逆を治するなり。
此の證、黄連あって黄芩なし。
心下の痞なきゆえんなり。
或は曰く、
「火を見て発る癲癇を治す」
或は曰く、
「歯の痛みを治す」
愚謂う、歯の痛み、寒熱あり一定すべからず。
まさに證に随うべし。
或は曰う、
「腹證、心下の処すいて、上・中脘に塊あり、食を嗅ぎて嘔を催す」


【黄連湯:組成】

黄連(おうれん)

黄連
黄連

キンポウゲ科のオウレン属の根茎。
性味:苦・寒
帰経:心・脾・肝・胆・胃・大腸

主な薬効と応用:健胃・利胆・鎮痙
①清熱燥湿:大腸湿熱の下痢・裏急後重などに用いる。
方剤例⇒芍薬湯

②清熱瀉火:熱入心包の高熱・意識障害・うわごと、
煩燥などの症候時に用いる。
方剤例⇒牛黄清心丸

③清熱解毒:熱毒による高熱・煩燥・目の充血・腫痛、
咽喉腫痛・皮下出血・嘔吐などの症候に用いる。
方剤例⇒黄蓮解毒湯

備考:苦寒のため、多量を用いると胃を損傷する。
湿熱や実火でないものや脾胃虚寒には禁忌である。



炙甘草(しゃかんぞう)

甘草
甘草

マメ科のウラル甘草の根。
性味:平・甘
帰経:脾・肺・胃

主な薬効と応用:去痰・鎮咳・抗炎症
①補中益気:脾胃虚弱で元気がない、
無力感・食欲不振・泥状便などの症候に用いる。
方剤例⇒四君子湯

②潤肺・祛痰止咳:風寒の咳嗽時に用いる。
方剤例⇒三拗湯

③緩急止痛:腹痛・四肢の痙攣時などに用いる。
方剤例⇒芍薬甘草湯

④清熱解毒:咽喉の腫脹や疼痛などに用いる。
方剤例⇒甘草湯

⑤調和薬性:性質の異なる薬物を調和させたり、偏性や毒性を軽減させる。

備考:生用すると涼性で清熱解毒に、密炙すると温性で補中益気に働く。



乾姜(かんきょう)

生薑
乾薑

ショウガ科のショウガの根茎を乾燥したもの。
性味:大辛・大熱
帰経:心・肺・脾・胃

主な薬効と応用:解熱・鎮痛・鎮咳・抗炎症
①温中散寒:脾胃虚寒で腹が冷えて痛む・腹鳴、
不消化下痢・嘔吐などの症候時に用いる。
方剤例→理中湯

②回陽通脈:陽気衰微・陰寒内生による亡陽虚脱で、
四肢の冷え・脈が微弱などの症状時に用いる。
方剤例→四逆湯

③温肺化痰:肺の寒陰による咳嗽・呼吸困難、
希薄な多量な痰・背部の冷感などの症候時に用いる。
方剤例→小青竜湯

備考:辛熱燥烈のため、陰虚内熱・妊婦には禁忌とする。



桂枝(けいし)

桂枝
桂枝

クスノキ科のケイの若枝またはその樹皮。
性味:辛・温・甘
帰経:肝・心・脾・肺・腎・膀胱

主な薬効と応用
①発汗解肌:風寒表証の頭痛・発熱・悪寒・悪風などの症候時に用いる。
方剤例⇒桂枝湯

②温通経脈:風寒湿痺の関節痛時に用いる。
方剤例⇒桂枝附子湯

③通陽化気:脾胃虚寒の腹痛時などに用いる。
方剤例⇒小建中湯

④平衡降逆:心気陰両虚で脈の結代・動悸がみられるときなどに用いる。
方剤例⇒炙甘草湯

備考:麻黄の発汗作用には劣るものの温経散寒の作用の効力は強く、
解肌発汗して寒邪を散じることができる。



人参(にんじん)

人参
人参

ウコギ科のオタネニンジンの根。
性味:甘・微温・微苦
帰経:肺・脾

主な薬効と応用
①補気固脱:大病・久病・大出血・激しい嘔吐などで、
元気が虚衰して生じるショック状態時に用いる。
方剤例⇒独参湯

②補脾気:脾気虚による元気がない・疲れやすい・食欲不振、
四肢無力・泥状~水様便などの症候時に用いる。
方剤例⇒四君子湯

③益肺気:肺気虚による呼吸困難・咳嗽、
息切れ(動くと増悪する)・自汗などの症候時に用いる。
方剤例⇒人参胡桃湯

④生津止渇:熱盛の気津両傷で高熱・口渇、
多汗・元気がない・脈が大で無力などの症候時に用いる。
方剤例⇒白虎加人参湯

⑤安神益智:気血不足による心身不安の不眠、
動悸・健忘・不安感などの症候時に用いる。
方剤例⇒帰脾湯

備考:生化の源である脾気と
一身の気を主る肺気を充盈することにより一身の気を旺盛にし、
大補元気の効能をもつ。すべての大病・久病・大出血・大吐瀉による元気虚衰の
虚極欲脱・脈微欲脱に対して最も主要な薬物。



半夏(はんげ)

半夏
半夏

サトイモ科のカラスビシャクの塊茎。
性味:辛・温・有毒
帰経:脾・胃

主な薬効と応用:鎮静・鎮咳・去痰
①燥湿化痰:湿痰の咳嗽・多痰・胸苦しさ、
或いは痰濁上擾による眩暈・不眠・悪心などの症候時に用いる。
方剤例⇒二陳湯

②降逆止嘔:胃寒・胃熱・胃虚による嘔吐時に用いる。
方剤例⇒胃寒による嘔吐→小半夏湯
胃熱による嘔吐→黄連橘皮竹筎半夏湯
胃虚による嘔吐→大半夏湯

③消痞散結:痰熱による心窩部の痞えなどに用いる。
方剤例⇒半夏瀉心湯

備考:辛散温燥のため、陰虚の燥咳・傷津の口渇・出血には用いてはならない。



大棗(たいそう)

大棗
大棗

クロウメモドキ科の棗(なつめ)の果実。
性味:温・甘
帰経:脾

主な薬効と応用:鎮静・抗アレルギー
①補脾和胃:脾胃虚弱の倦怠無力・食欲不振・泥状便などの症状に用いる。
方剤例⇒六君子湯

②養営安神:営血不足による不眠・不安感などに用いる。
方剤例⇒甘麦大棗湯

③緩和薬性:薬力が強力な薬物に配合し、性質を緩和し脾胃の損傷を防止する。
方剤例⇒十棗湯

備考:湿盛の脘腹脹満・食積・虫積・齲歯・痰熱咳嗽などには禁忌となる。


【黄連湯:効能】
傷寒論による記載は以下になります。

【条文173】
「傷寒胸中有熱、胃中有邪氣、
 腹中痛、欲嘔吐者、黄連湯主之。」

「傷寒胸中あり、胃中邪気あり
 腹中痛、嘔吐せんとするものは、黄連湯之。」

傷寒とは諸外感病を指している。
胸中(上焦)に熱、胃中(中焦)に邪気があると
脾胃の気の昇降失調の病態となる。

胃気が下降できないために悪心嘔吐が生じ、
脾気が寒邪などに凝滞させら上昇できない結果、
腹痛や下痢を生じる。

このような上熱下寒や脾胃不和に対して、
清上温下・和胃降逆の作用がある。


参考文献:
『生薬単』 NTS
『漢方概論』 創元社
『腹證奇覧 全』 医道の日本社
『傷寒雑病論』
『傷寒論を読もう』 東洋学術出版
『中医臨床のための方剤学』
『中医臨床のための中薬学』 神戸中医学研究会

画像:
『腹証奇覧 正編2巻・後編2巻』
京都大学貴重資料デジタルアーカイブより
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00004914

画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。


本多

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